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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第三章 充実した福利厚生!

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第44話 西遊記かよ

 二階の秘密の通路は、

二階の天井が通路らしい。

かなり高い梯子を上りきると、

ダクトみたいな道がある。

ほふく前進で進む必要がある。

 俺はランタンを魔法鞄に戻した。

火はついたままだ。

魔法鞄の中で他の荷物に延焼しない。

その代わり、鞄の中の時間は進み続けるので、

ランタンの燃料がなくなれば勝手に火が消える。


「トシ・オー様。

見取り図的に見れば、

ここの下は謁見の間です」

「部屋への出口をさがそう」


 這って進むしかない程狭い道。

暗闇が続くが、上下左右壁なので道には迷わない。

 ただ、金髪のお尻がぼんやり見えてる。

セクハラで訴えられそうだなぁ、

と思わず思ってしまう距離だ。


「トシ・オー様、隙間から光が見えます」

「警備に気を付けて、出れそうなら出よう」


 金髪がごそごそしてる。

目の前のお尻がうごめいてる。

訴えられたら、負けるな、これ。


「トシ・オー様、開きました。

私が先に出るので、少しお待ちください」


 目の前のお尻が消える。

出口らしきところから光が見えており、まぶしい。


「……どうぞ、今は誰もいません」


 俺は金髪の後を追って外へ出た。

しかし、見て分かったがそこは謁見の間ではない。


「……王の執務室?」

「そのようですね。

どうやら、玉座の裏にある部屋に出てきました。

 しかし、これはこれで好都合。

周囲は私が確認します。

トシ・オー様は、極秘資料を当たってください」


 謁見の間の玉座は、

他でもよくある王座の壇の上にある。

なので、玉座は二階と三階の間にあり、

今俺がいるのはその玉座の裏の中二階みたいな部屋だ。

 少し天井は低いが、広さは結構ある。


「玉座の裏が執務室ってのは、

効率は良さそうだな」 


 俺は机を一瞥して、本棚の方を見やる。

色んな記録が並んでいる。


「あの王様、解放方法を気にしてたよな」


 ああいう人のことだ。

そう言う資料は仕舞い込んであっても、

今だけはすぐ出せる所に移動させるだろう。

 俺は窓辺にも本や資料が積んであるのを見つけた。

触らないように近づいて屈み、どんな本や資料があるか見る。

紙を一枚でも動かしたら、

多分ここに忍び込んだことがバレる。


「……あれか」


 窓辺の資料の一番下に、古そうな本がある。

背表紙に『氷の鏡』と書いてある。


「この積んであるのは、全部これ関係だろうな」


 目当てがあったら、バレても問題ない。

俺は窓辺の資料と本は根こそぎ魔法鞄へ入れた。


「金髪、音を立てないようにこの部屋荒らせるか?」

「可能ですが、どうして?」

「『氷の鏡』についての資料がなくなった、

ってのがすぐに分からないようにしたい」

「分かりました。

それなら、

他の資料や本も根こそぎいただきましょう。

『氷の鏡』の資料と他を分けるために、

他の資料や本は私の魔法鞄に入れておきます」


 金髪は手際よく、

部屋にある資料から何から何まで鞄にいれだした。

さすが、手慣れてるな。


「きっとその机に隠し棚があるぞ。

開けてやるから、その中も貰え」

「トシ・オー様、さすがです」


 二人で家捜しはなかなか楽しい。

執務机の隠し棚は、昔ながらの仕掛けだ。

上下三段の引き出しの一番上と一番下を開いて、

同時に閉める。

すると、中段の引き出しの脇が少し飛び出した。

摘まんで引き出すと引き出しになり、

中には巻物のように巻かれた資料が入っている。


「なかなかの収穫ですね」

「いただいたら、

秘密の通路に戻って内容を見よう。

一階の広間辺りまで戻りゃ、

スペースもあるしな」


 俺たちは盗れるだけ資料を盗って、

秘密の通路に戻った。

そのまま一階まで降りて、

ランタンを取り出し、『氷の鏡』の資料を読み出す。


「……クソがぁ。

めんどくせぇ」


 『氷の鏡』の発動条件は、

一つ『鏡を持った者が鏡に魔力を流しながら』。

二つ『鏡に映した対象の名前を呼び』。

三つ『対象が返事をしたら』、対象が凍りつく。


「西遊記かよ」


 解除手順は、

一つ『鏡を持った者が鏡に魔力を流しながら』。

二つ『凍った対象を鏡に映し』。

三つ『凍った対象の名前を呼ぶと』、対象は解消される。


「これ、俺どうなるの?」

「どういうことでしょうか?」


 金髪が不思議そうにたずねてきた。


「俺の名前、お前らは正しく発音できてねぇんだよ。

 俺の名前は正確に発音するとトシオ、だ。

トシ・オー、ってあだ名っぽく呼ばれてるけど、

それで発動するのか?」


 他の資料も確認したが、

あだ名はダメらしい。

しかし、産まれてこのかた、

名前をつけられなかった者は不明。


「これ、王弟が解放できたのに、

俺は凍らなかったら。

目も当てられないぞ?」


 俺は天を仰いで思案し直す。

なんせ、俺は魔法を使えない。

魔力を操作できないからだ。


「俺に『氷の鏡』は使えないのか?

俺は『氷の鏡』を使えないし?

何なんだよ、これ」


 『氷の鏡』を使ってゲートごと魔物を凍らせるのは、

無理そうだ。

ため息をつきつつ、タイマーを確認した。

残り時間は後、二十時間を切った。

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