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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第二章 年休120日以上!

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閑話 偶像

●とある豪奢な部屋●


 白を基調にした、絢爛豪華な部屋の真ん中。

ベッドと言っても遜色ないほど大きく、

ふかふかのソファーに寝そべり、

わきに用意された良く冷えた甘い果実をつまんで。


 タブレット端末のようなものを見つめる少女。


 彼女は『聖女』。

『教会』にいる未来を予知する神の御使い。

華奢な手足、白い肌、長く美しい金髪。

非の打ち所のない、美しさ。


「やっと落ち着いた」


 気だるげにそう呟く仕草すら、

絵になる。


 そこに現れたのは、『闇の神』。


 何もない空間からにじみ出てきた彼女は、

聖女に歩み寄る。

それに気付いた聖女は。


「神様さぁ、突然なんなの?

あんな変な予知」

「本当にごめんね、メグ」


 メグと呼ばれた聖女は、

闇の神の口に果物を押し付けてむくれる。


「本当に忙しかったんだから」

「ごめんって。

埋め合わせはするからさ」


 仲が良い。

『創世の神』の聖女のはずの彼女は、

トシオの口から出任せの嘘のように。


 本当は、『ダンジョンマスター』だった。


 美少女なのは、見た目だけ。

中身は百年を越えるほど長生きをしている。

 聖女として選ばれるのは、

メグの審美眼にかなった美少女。

美少女たちは聖女に選ばれると、

彼女に身体を奪われて殺される。


「アタシと神様の仲だけどさ。

ちょっとこれは異常だよ。

 何があったの?

詳しく教えてよ。

アタシも力になるからさ」

「ありがとー。

ホント、持つべきものは友達よね」


 メグの別名は、『最古のマスター』。

一番始めに闇の神が異世界から連れてきた、

この世界のダンジョンマスターの始祖。

 闇の神はこの前のトシオのダンジョンバトルの話をした。

そして、自分がトシオと契約をせずにいたことも話す。


「神様さぁ……」

「ごめん。

本当にごめんね」

「てかさ、

そのダンジョンバトルの映像見せてよ」

「死んだ娘の映像しかないけど、見る?」


 二人でソファーに寝そべって、

まるでサブスクでアニメでも見るようにダンジョンバトルを見始めた。


「止めて」


 メグがそう言って止めたのは、

トシオの掲示板が写るシーンだ。


「うわぁ。

上手いわ」

「そうなの?」


 闇の神が理解できないと言わんばかりに首をかしげた。

メグは小さくため息をついて、解説する。


「ねぇ、神様。

『強い人』って、どんな人だと思う?」

「え?

それは、

『剣の達人』とか、『魔法の達人』とか?」


 メグは闇の神を鼻で笑う。


「予想通りな回答ありがとう。

でも、ブー。間違いです」

「えー。

じゃぁ、どんな人?」

「答えは『相手を生き物だと思わない人』」


 メグは笑ってそう言う。

闇の神は首をかしげた。


「なにそれ?」

「相手が生きていて、家族がいて、

帰りを待ってる人がいる。

そんなことを考えちゃうと、

どんな剣の達人でも、魔法の達人でも、

止めを指しきれずに隙ができる」


 地球の日本と比べて倫理観が低いこの世界といえど、

やはり人を殺すことを忌避するのは当たり前。

それでも人を殺すのは、『必要』だからだ。

それが原因で心を病む人も少なくはない。

 当然、殺した相手の家族に恨まれることだってある。

報復合戦になるケースも少なくない。


「でも、相手を生き物じゃない。

もっと言うと、

『自他の命に実感がない』、

『この世がゲームだと心底思ってる人』は、

どんな残忍なことも、卑怯なことも、

ためらいなくできる。

 そんな人なら、

力量がチンピラ程度だったとしても、

まれに達人に勝てちゃうの」


 メグはそう言いきった。

そして、掲示板を指差した。


「この掲示板、

まさに『現実味を薄れさせる装置』なんだ。

冒険者たちは、思ってるよりリアリスト。

金も名誉も自分の命あっての物種、と心底思ってる人たち。

そんな人が、ダンジョンなんて危険地帯に入るか、

と言うとNo。

 でも、この掲示板。

これがあれば、

危険地帯が『安全な狩り場』に思えてくる。

でも、現実は危険地帯のまま。

だから、彼らはボロ儲けするの。

そして、夢見心地でまたダンジョンに再突入する。

もっと金を、もっと名誉を、

もっと、ってな具合でね」

「……だから、冒険者が群れて襲ってきた」


 闇の神も少しずつトシオの策を理解していく。


「もう後半は、

冒険者たちはゲーム感覚でダンジョンを出入りしたでしょうね。

そうなると、

その場の全員が一騎当千の猛者より恐ろしいモノになる。

 この、サトウ トシオって人は、

かなりキレるし。

冒険者たちにすごく信頼されてる」


 メグは冷めた目で画面のトシオを見つめる。


「神様。

今、『大海』の人にサトウさんの相手をするよう指示したでしょ?」

「えぇ。

彼ならさすがに負けることはないでしょ?」

「んー、どうかな。

良い意味でも、悪い意味でもあの人、

真面目だからね。

 こういう手合いでも、

がっぷり四つで向かってくから。

猫だましからの、いなしで、

あっけなく負けちゃう可能性もあるよ」

「う、嘘でしょ?」


 メグは懐から名刺を取り出した。

『大海のダンジョン』のマスター、

ショウが闇の神から受け取った名刺と同じものだ。


「アタシも関係ある話だし。

居場所を教えるだけじゃなくて、

もっと手伝いましょうか」


 メグはそう言って嗤う。

その顔は美しい。

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