閑話 刺客
●とあるダンジョン管理室●
男はダンジョンマスターだ。
鍛えた身体、整えられた身なり。
しかし、その顔は醜悪の部類になる。
男自身、心底自分の容姿に嫌気がさしている。
だが、生まれもったものから逃げる手はない。
管理室は理路整然とボタンが並ぶ、
さながらロボットアニメの操縦席のような部屋だ。
大きなダンジョンを管理する上で、
自動化できる作業は自動化し。
知恵のあるモンスターに適切な指示をして配置。
ダンジョンマスターとして行う作業をボタンでまとめて、
さらにダンジョンを大きくする。
そのお陰で、彼のダンジョンは広大な敷地を有する。
四十階層からなるダンジョンは、罠も魔物もきちんと管理され。
補充される宝箱を目当てに冒険者たちが日々入ってくる。
「調子はどう?」
そこへ現れたのは、
黒をメインにしたドレス姿の女。
『闇の神』だ。
なにもない空間からにじみ出てきて、
男の後ろに立っている。
男はすぐさま席から立ち上がり、
彼女の前にひれ伏す。
「敬虔で素晴らしい。
でも、頭を上げてちょうだい。
今日は私からお願いがあってきたの」
「神様のお望みならば、どんな手を使ってでも」
男はそう言ってさらに頭を下げた。
「さすが、
最大のダンジョンを誇るマスターね。
頼りにしてる、ショウ」
闇の神は男をショウと呼んだ。
「ある男を捕らえて、
この契約書にサインさせて。
一番確実なのはダンジョンバトルで勝って、
署名するよう強制することです」
闇の神は契約書と人相書と資料をショウの前に置いた。
ショウはそれを受け取り、読み始める。
ショウは闇の神に確認した。
「……ダンジョンマスターなのに、
ダンジョンをもたない。
新人ダンジョンマスターをダンジョンバトルで滅ぼした。
この男、殺してもいいのですか?」
「殺すのはダメ。
契約書にサインさせてから、殺すの。
順番は変えられません。
先に殺しちゃったら、この世界が終わるからね」
ショウは少し思案した。
「先日公示された、聖女の予言は」
「えぇ、私からのものよ」
闇の神はそう言って笑う。
「かしこまりました。
この男を急いで探しましょう」
「いいえ。
場所は分かったの。
『死の荒野』のダンジョンを管理してるマスターが、
偶然見つけたって連絡があったの。
貴方も知ってるマスターのはずだけど」
そう言って闇の神は名刺を一枚ショウに渡した。
「その名刺で一時的にそのマスターと連絡できるようにしたから。
後は二人で相談してちょうだい」
「承知しました。
お任せを」
ショウはそう言ってまた頭を下げた。
闇の神は満足そうに笑って消えていった。




