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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第二章 年休120日以上!

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第29話 ちょっとだけ納得したわ

「我らは信者にして、

同時に背教者でもあるのです」


 俺がここに連れてこられて、

目が覚めてから三日経った。

白づくめたちは自分達をそう説明する。


「『光の神』は日光、都市、文明を司る神です。

その教えは、

『人の神からの独立』に帰結します」

「はぁ?」


 理解しづらい教えだ。

神であるのに、人の独立を求めるとか。

ダイエットしてると言いながら、

ショートケーキをホールで食べてるみたいなものだろう。


「矛盾している、

とおっしゃりたいのですね。

えぇ、えぇ。

確かにそうです。

 ですが、我らの神は、

人が築いた文明を司る神故に、

人が神に頼っている現状を是としていません」


 ここの食事は思っていたより豊かだ。

固いパンと野菜のスープ、何かの肉を焼いた物。

それに麦酒、エールが付く。

俺だけ特別なのかと思ったが、

大食堂に行ったときに他の人も同じメニューだった。


「『光の神』は、

子が親から離れて一人立ちするように、

世に言う『神の御力』に頼らず、

人が『人の力』で生きる事を望まれているのです。

 我らはその教えにしたがい、

神からの独立を目標に日々鍛練を積み。

身体を鍛え、知識を蓄え、知恵を編み、

心を清く、意思は強くあらんとしています」


 俺の中で彼らはダンジョンと魔物を目の敵にした狂喜の集団、

と言うイメージだったが。

これは、改めた方が良さそうだ。


「だから、我々は知りたい。

己の知力で生きてきた貴方の事を。

 貴方は確実に神からの独立を果たしている。

完全ではないかもしれませんが、

我々よりはるかに神から独立できています」


 なんとなく、見えてきた。

白づくめたちは、

理性的に俺を取り込みたい。

白服たちは、

手段を選ばず何がなんでも俺を取り込みたい。

結果は同じでも、過程が全く違うらしい。


「特に知りたいのは、

貴方が解いた謎かけについて」


 謎かけ。

この世界の人には答えられない。

俺の元の世界の『科学』と言う概念と思想に基づいた謎かけ。


「あの謎を『神の御力』ではないと、

言いきられたことについて、

我らは是が非でも教えていただきたい。

皆、そう思い、浮き足立っている状態です」


 確かに俺は地球の日本で義務教育を受けたが、

科学者ではない。

確かに、俺はコイツらよりは知ってるが。

 コイツらが望むのはおそらく、

有識者レベル。

それは、無理だ。

化学、得意じゃなかったしな。


 もしかして、コイツらは、

『科学』を使って『神の御力』を解明し、

『人の独立』を成そうとしてるのか?


 理屈は分からないことはないが、

元の世界でも神は信仰されている。

『科学』は『宗教』を廃する事ができるものか、

と言われるとNoだ。

 それに、あの海を割る聖女とやらを、

科学的にどうにか分析できると思えない。

『魔法』が実在してる時点で、

この世界での『科学』には疑問符が付く。

 『誰が何度やっても、

材料と手順を守れば同じ結果になる』のが科学だ。

魔法なんて不可思議なものがある世界じゃ、

聖女みたいな人がいるから『誰がやっても』の部分が揺らぐし。

『材料』も同じものを揃えることが困難だ。

物理法則も元の世界と似てはいるものの、

全く同じか分からないし。


「我々の中でも過激な者たちは、

貴方を拘束して知識を奪おうと言うものも居てですね」

「聞き捨てならん内容だな、おい」


 あの大講堂でのヤジは過激派ってやつか?

俺の知識を奪いたいってか。


「『光の神』の教えには、次の三つを揃えろとあります。

『心』・『技』・『体』です。

神像はそれを表しているもので、

『光の神』のお姿ではありません」

「……ちょっとだけ納得したわ」


 服を着ず、髪もなく、身体を鍛え上げ、

己の力だけで天へ羽ばたこうとしてる人の像。

それは確かに、

極端な心技体を表現しているともとれる。

見た目に囚われず天へ羽ばたこうとする姿勢が『心』。

ムキムキマッチョな身体を『技』と『体』。

 総合すると、『白の教会』は僧侶の思想に似ている。

ただ、仏教の中でも、サドゥー。

神に近づくために苦行を行う僧侶に近い思想だ。

 白服の中にも身体を鍛えまくってムキムキな集団もいた。

逆にガリガリに痩せ細ったのもいた。

そんな中に知識を、

知力を鍛えることを修行とするヤツらには、

俺は喉からてを出してでも欲しいと言うことになる。


「トシ・オー様はまさに、

『心・技・体』を揃え、

『知力』で道を切り開き、

神より独立されている。

よって、貴方を『聖人』としてお迎えしたい、

と言うのが我々の総意でございます」


 買い被りすぎだ。

だが、俺は黙って続きを聞く。


「しばらくはここで、

是非我らのことを知っていただきたい。

 私を含めた仮面を付けた者、

『聖女の右』が貴方を護衛いたします」

「……あの海を割る女の右?

アンタらが?」

「あの方は『踏破の聖女様』です。

あの方の足は、

どんな道をも切り開く加護があります。

あの方の足が着いた先に道ができて、

我らを引き連れ突き進みます。

それが海であろうと、山であろうとです」


 あれはそう言うことか。

海が割れたのは彼女の脚力ではない。

魔法と言うか、『加護』とか言う力によるものらしい。

だから、衝撃波もなく海が割れたのか。


「そして、

我々はダンジョンの破壊を目標に日々鍛練する者です。

貴方がダンジョンを破壊したことに、

最大の敬意と尊敬をしております」


 そう言って話していた白づくめが頭を下げると、

他の白づくめも頭を下げた。

俺はため息をついて頭をかいた。


「お前ら、やっぱり素手でも俺を制圧可能な戦力だろ?」

「可能ではございますが、

いつかお伝えしたとおり貴方を傷つけるつもりはありません」


 白づくめたちの立ち姿で実力者であることは察していた。

だが、ダンジョンの破壊を目指してるのか。

俺は思わず聞いてしまう。


「冒険者ギルドの基準で行けば、

お前ら全員Aランク。

下手すると個人でAランクくらいあるだろ?」

「あのランクは戦力以外も含めた力の優劣ですので。

同じとは言いがたいのですが、

イメージならその通りです」


 俺はEランクだ。

この前のダンジョンバトルの前に勝手にCランクにされたが。

戦力的にはEだ。

勝ち目は微塵もないようだ。


「追加で質問だ。

アンタらが身体を鍛え、知識を求め、

知恵を編み出すのはわかった。

でも、なんでダンジョンの破壊と魔物の撲滅を目指す?」

「ダンジョンと魔物は、

『闇の神』が司る破滅の使徒です。

闇の神は人を堕落させ、わざと貧富の差を作り、

『神の御力』に依存させて、その魂を食らう。

忌むべき悪神です。

 更に、人の独立を願う我らの神、

『光の神』は『闇の神』に殺されました」


 仮面の奥から怒りがにじみ出ている。

だが、俺は聞き捨てならなかった。


「待て。

『光の神』は死んでいるのに、

加護があってお告げもあるのか?」

「正確に言えば、

そもそも『創世の神』が力を分けた神が『原始の神』です。

『光の神』も同じ、力をもらい受けていました。

 なので、我らの神は死しても御力は『創世の神』の元に戻って、

その役割を果たされているのです。

 自我も何もかも失って、

それでもなお我々のために御力を裂いてくださっているのです」


 理屈は通るか。

俺は引っ掛かりを忘れぬよう頭に刻み付けておく。

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