第26話 出口はどこだ?
俺は魔法鞄から、スコップを取り出して握る。
扉を少し開けて、廊下の様子をうかがう。
白衣の人がたくさん行き来している。
俺を探してるのか?
俺は部屋から出て、適当に廊下を進む。
正面の曲がり角の先から足音が聞こえた。
俺は角の壁に背を付けて待ち伏せる。
俺は曲がり角から飛び出してきた男の足を払って転ばせる。
顔から床へ派手に転んだ男が、
起き上がろうとして床に付いた手のそばにスコップを振り下ろす。
甲高い金属音が響き、男の動きが止まる。
「……出口はどこだ?」
俺は床に倒れたままの男に訪ねる。
「で、出口は、
一旦下へ降りて魔道具の昇降機に乗って地上へ上がらなければ……」
こいつに案内させるか悩んだが、
俺は魔法鞄から薬包紙を一つ取り出して男の頭に粉薬を振りかけた。
「な!
何……を……」
男は動かなくなる。
男を確認したが、やはり眠っている。
「ポーションも粉薬も、
眠り薬にすり替えてるな。
この感じだと、水筒にも仕込まれてるだろう」
俺はため息を付いて、
また廊下を走る。
さっきの男の話だと、
出口に行くには一旦下へ降りると言う。
「……そこで待ち伏せされてんだろうな」
俺なら、そうするだろう。
ここはある種の収容所で、
脱獄させないために出入り口を一つにしていると考える。
なら、一旦下階へ降りてから目的の階へ上がる造りでも不自然じゃない。
さらに言えば、
ここは地下らしいので、
窓がいらないからその方法で閉じ込めると看守の管理コストが減る。
「洞窟を掘る時間はなさそうだし。
下に降りてみよう」
俺はまた廊下を駆け出す。
階段を見つけた。
上下階へ繋がっているようだが、
注意書の看板があり、
この階段で地上へは上がれないと記載されている。
仕方がないので階段を降りることにした。
降りた先には、一本の廊下。
そして、廊下の先に広そうな広間が見える。
廊下に遮蔽物がないので、
俺は階段に身を隠して様子をうかがう。
「……広間の真ん中にある変なのが昇降機か?
周りに鎧着てるヤツが見えるし。
門番なのか警備なのか。
どっちにせよ、通してくれそうにない。
昇降機の操作法もわからない。
見張りを潜り抜けても、
上がれないから意味がない」
俺は足音を殺して階段を上がり出した。
上がれるところまで上がろう。
各フロアを覗いたが、やはり窓はない。
そして、俺がいた部屋と同じ扉が等間隔で並んでいる。
俺には感染症の隔離病棟のように思える。
この階段で上がれる一番上の階に到着した。
地下二階、と階段の踊り場に書いてある。
俺がいたのは地下五階。
昇降機が地下六階。
ここからなら、
後二フロア上がれば地上にでる。
「スコップで掘るにせよ、
時間がかかる。
どうにかできないか」
俺は思案しつつも、地下二階のフロアへ出た。
誰にも見つからないよう慎重に移動して、
偶然扉が開いている部屋を見つけた。
中には誰もいない。
俺は迷わずその部屋に入り、扉を閉めた。
俺がいた部屋ににている。
白い壁と白い床、白い天井。
そして、ベッドが一つ。
「壁は板に壁紙か」
俺はスコップで壁を殴る。
内装の壁紙が破れて板が見えた。
その板も殴って砕くと、敷き詰めた石が露出した。
「切り出した石をレンガみたいに積んでるな」
俺は石と石の継ぎ目にスコップを刺してみる。
この世界にはコンクリートはない。
しかし、建材はある。
藁と蜜蝋と泥を使った繋ぎだ。
固まれば防水性もあり、相応の硬度は出せるが、
コンクリート等には遠く及ばない。
研ぎ澄まされたスコップは、
石の繋ぎ目を貫いた。
石を一つ外してみると、すぐに土が露出した。
「ここから上へ掘っていけば、
地下一階へはすぐ行けそうだ。
ただ、どんな部屋にでるか賭けだな」
俺はそのまま壁を崩して、
崩した建材を扉の前に敷き詰めてバリケードにして行く。
そして、露出した土にスコップを突き立てて、
慣れた手付きで掘っていく。
真上へではなく、斜め上へ向けて掘る。
スロープ的に足場を確保しつつ掘る。
誰もここに来るなと祈りつつ、
どんどん掘り進め、
とうとう上階の床らしき石材を掘り当てた。
俺は石材に耳を近づけて上の様子を探る。
「……何も聞こえない。
行ってみようか」
俺は石材の隙間に慎重にスコップを突き立て、
一つずつ石材を取り外して行く。
そして、俺の頭が出せるだけの穴が開いた。
穴から頭を出してみる。
「……なるほど、まぁ。
さっきの『白の教会』ってのは、
やっぱり何かの神の教団だったか」
掘り当てたのは、大きく広い『聖堂』だった。
等間隔に並んだ石のベンチ。
集会の時に司祭か何かが立つ祭壇。
そして、祭壇の後ろに大きな十字架と神像。
つい先日まで宗教について調べていた俺でもみたことがない神像の姿。
「マリーが言ってた『日光神』を奉る教団か?」
俺はとりあえず穴を広げて聖堂に上がった。




