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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第二章 年休120日以上!

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第25話 ここはどこだ?

 目が覚めると、

そこは白い天井だった。

周囲に人の気配はない。

 俺はゆっくり自分の体を確認する。

怪我はないようだ。

拘束もされていない。

 どのくらい気を失っていたのか。

身体がだるいが、

少し休めたようで眠気はおさまっている。

 俺が寝かされたベッドは、

この世界でよくあるタイプのものだ。

板の上にシーツを置いているだけの、

身体がバキバキになるベッドだ。

 音を立てないようにベッドから上半身を起き上げて、

周囲を見る。

白い天井、白い壁、白い扉。

広さは十畳あるかないかくらいだ。

 枕元に尿瓶がある。

この世界の尿瓶は陶器製だ。

元の世界でよくある変な形ではなく、

洗面器のようなものに蓋が付いている感じだ。

 喉がカラカラだが、水差しはなかった。

代わりに、ありがたいことに俺の魔法鞄がある。

俺はそれを掴みそうになるが、急いでやめた。

まだ、周囲を確認しなければ。

 鞄になにか仕掛けられていて、

つかんだ瞬間音がなったり、

ひどいと爆発したり毒液が撒かれたりする可能性もある。


 扉から、ノックが聞こえた。


 今さら寝たふりはできないと割りきって、

俺は声を絞り出す。


「……はい」

「あ。

目が覚めたみたいだね」


 そう言って扉を開いたのは、

見知らぬ白衣の男だった。

俺は警戒したまま

男の背後に見えた通路を確認する。

 この部屋から出てしばらく廊下が続くようだ。

この部屋と同じ扉が並んでいる。


「問診させてもらいたい。

いいかな?」


 白衣の男はそう言って扉を閉め、

両手を自分の顔の横まで上げて見せる。

敵意、害意はないというポーズだろう。


「アンタ、医者か?」

「あぁ、そうだ。

私の名前は、リアン」


 彼はそう言って白衣の胸に付いた名札を指差した。

確かに、リアンと記載されている。


「ここはどこだ?」

「質問には答えるよ。

でも、先に君の身体を確認したい」


 白衣の男はそう言って、

俺のベッドへ一歩近寄った。

俺はため息を軽く付いて、男に言う。


「蹴りで海を割るようなのの仲間を、

どう信じろと?」

「気持ちは分かるけど、

あの方は我ら『白の教会』の『聖女様』だ。

 あんな風にされた君が、

そう言う態度になるのは仕方ないと思うけど、

私たちにとっては『神の使徒様』なんだよ。

 敬意を払わなくてもいいけど、

ぞんざいには扱わないでほしい」


 白衣の男は真剣な顔でそう言った。

『聖女』? 『神の使徒』?

俺からすれば、

信用がマイナスになる単語がずらずら並んでいる。


「俺は神は信じない」

「それも、知ってる。

君は『この世界の真実』に独学で近づいたんだね。

 分かるよ。

神を毛嫌いするのは仕方ない」


 雲行きが怪しい。

この話しは続けてはいけない。

全身が粟立ち、脳が警報を鳴らす。

俺は全力で逃げることを選択した。


「……俺の魔法鞄を、なんでここに置いた?」

「君のものだからね。

君のもとに置いておくは、自然なことだろ?」


 白衣の男はそう言うが、たぶん嘘だ。

俺は白衣の男の目が一瞬泳いだのを見逃さなかった。


「今のは嘘だ。

お前は信用できない」

「ちょ!

ちょっとま!」


 俺はベッドから飛び降りて、床に手を付いた。

そのまま、ブレイクダンスのように両手で身体を支え、

両足で白衣の男の足を蹴り抜く。

男は対応しきれず、派手に転んだ。

 俺はそのまま魔法鞄を掴んで起き上がり、

部屋を飛び出る。

恐らくここは地下だ。

部屋にも廊下にも窓がなかった。

だから、向かうべきは上。

 廊下を駆け出しながらも、

魔法鞄からポーションを取り出して確認する。


「……中身だけ取り替えられてる」


 俺は自作のポーションの瓶に細工をしている。

市販品にはない小さな模様が入っていて、

密閉後一度開けてしまうとここから小さなヒビが入る。

再度封をしても瓶の品質は変わらないが、

表面に少しだけ、意識して指で触れないと気付かない程度のヒビができる。

 どのポーションにもそのヒビがある。

俺は舌打ちして、そのうち一本を握った。

 廊下の曲がり角で、

俺は白衣の女性にぶつかった。

俺はとっさに女性を羽交い締めにして、

持っていたポーションを開けて彼女の口に突っ込んだ。

 彼女はポーションを少し飲んで、

俺を振りほどく。


「なっ!

なにすん……んお」


 そう言い残して、

彼女は床に倒れた。

 俺は白衣の女性を軽く確認する。

息はある。

どうやら眠り薬が入れられているらしい。

小賢しい。

 俺は白衣の女性を廊下の角へ移動させて、

また廊下を進む。

階段が見つからない。


「逃げたぞ!」


 遠くからそんな声が聞こえた。

さっき部屋に来た白衣の男の声ではないようだ。

俺は少しだけ開いていた扉を見つけたので、

それを開いて中へ入った。

 見渡すと綺麗に折りたたまれたシーツや服が山積みになっていた。

リネン室みたいなところか。

俺は扉の脇に立って、

魔法鞄の中身をもう一度確認する。


「スコップがある。

スリングショットと弾もある。

 ビン入りの薬は、全滅だな。

薬包紙で包んだ薬も、たぶん手を加えられてる。

後で捨てるか、ここで使おう」


 俺は意識を戦闘のものに切り替える。

人を殺すための、覚悟と諦めだ。

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