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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第二章 年休120日以上!

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第24話 アンタ、何者?

 俺は隣国の軍勢に拉致され、牢獄に入れられた。

そして、

今度は真っ白な修道服のシスターに拉致されている。

今俺は牢獄から引き上げられたときのロープで簀巻きにされ、

芋虫みたいな姿だ。


「い! だ! い! な!

主よー!

我ー、は!

なーせりー!」


 彼女は一人でよくわからない歌を歌い。


「我ーらが!

主よー!

我ー、は!

なーせりー!」


 彼女は片手で芋虫のような俺を軽々と抱えて、

縦横無尽に駆け回り。


「父ーなる!

主よー!

我ー、は!

なーせりー!」


 彼女は小枝を払う様に、

巨大な十字架を振り回して武装した軍勢を凪払う。

目測だが十字架は、

カーフェイが両手を広げたより大きい。

 そして、それを振り回す彼女は俺より小柄だ。

俺を抱えている腕も細い。

しかし、今俺の感じている安定感は、

高速道路の軽自動車くらいはある。

運転手は免許取ったばっかりだけど、

それくらいの安定感はある。

 彼女はニコニコ笑顔でオスマンサスの軍隊を退け、

俺を抱えてどこかに向かって走る。

俺は意を決して声を出した。


「おーい。

アンタ、何者?」

「我ーらが! 我ーらが! 我ーらが!

父なる、主よー!」


 ゴキゲンに歌う彼女の耳に、

俺の声は届かない。

俺は大きくため息を付いた。

 町から出た彼女は、

まっすぐ海へ向かって駆けていく。

しかし、目の前に橋も船も何もない。

大海原が広がっているだけだ。

俺はシスターに声が届くよう出せるだけ声を出す。


「待て、待て、待て、待て!

この先、海だぞ!?

俺の縄をほどけ!

これじゃあ、泳げない!」


 しかし、それでもシスターは声高らかに歌う。

俺の声なんて、一切耳に届いてない。

俺が話していることに気付いた気配すらない。

 彼女は立ち止まることなく、

その足を高く上げた。

美脚を太ももの付け根まで太陽にさらし、

大海に向かって勢いよく足を振り下ろした。


 何とも形容できない破裂音を立て、

かかと落としの一撃は海を真っ二つに割った。


 俺は開いた口が塞がらない。

シスターはそのままむき出しになっている海底を駆けて行く。

 俺は首を振って左右を見た。

起立した海が、

割られたことに気付いてないようにそこにある。

魚は泳ぎ、水はたゆたい、

水族館も真っ青な光景が広がっている。

 海が割れたこともさることながら、

シスターに抱えられている俺にはなんの痛痒も感じられなかったことに驚いた。

彼女がかかと落としで海を割ったとするなら、

その威力は強大。

小惑星が衝突したくらいの威力だろう。

 それに伴い、衝撃波、ソニックブームが起きて、

俺の体が木っ端微塵になるはずだ。

だが、俺は無事。

 シスターは単純な筋力で海を割った訳じゃないのか?

単純な筋力で割ったとしても恐ろしいが、

謎の力を持ってると言うのも恐ろしい。


「……め、滅茶苦茶じゃねぇか」


 人の形をした、化け物。

失礼かもしれないが、そうとしか思えない。

周囲の壮絶な光景には一瞥もくれず、

海底をまっすぐ駆け抜けて行くシスター。

 次に俺の気になるのは純白の修道服。

服どころか靴も白い。

縫い糸も全て白い。

元の世界の白無垢でもここまで白くない。

近いのは元の世界の死装束だ。

 そして、歌の歌詞。

『我らが偉大な主』、と言う歌詞。

後、『なせり』。

『成せり』、か? 

シスターは今、何を成した?


「コイツの目的は、俺か?」


 良い予感はしない。

成したのが俺を捕らえることだとしたら、

『成せり』、と歌って良いだろう。

 あの牢獄の中よりはいいのか?

今の俺には判断材料がない。

俺は困惑しつつも情報を集める。

 いつの間にか、沖に出ている。

と、言ってもシスターは相変わらず海底を走っている。

このシスターはどこまで行く気か。


「使徒様!

使徒様! こちらです!」


 海底から見て上。

正確に何と言うのか俺にはわからないが、

海面の方から声が降ってきた。

首をなんとかして見上げると、大きな船が見える。

その甲板から大きな旗を振ってる人が、

こちらに向かって叫んでいるようだ。

 シスターはその声に気付いて海面を見上げた。

そして、彼女は大きく足を曲げ、

まっすぐ空へ打ち上がった。


「なっ!

ぐあぁ!」


 俺はスペースシャトルにでも乗ったような重圧をモロにくらい、

肺から息が押し出されて変な音が口から出た。

何の身構えもできなかった俺はその衝撃で意識を失った。

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