表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第二章 年休120日以上!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/67

第23話 極刑と言われたしな

 とにかく、一に脱出と荷物の奪取、

次に安地の確保と睡眠の順に行動指針を決める。

俺は立ち上がり、扉を見上げた。


「今の俺にあの高さまで登れるか?」


 万全な状態なら、余裕だ。

だが、今の体調ではかなりハードルの高い高さだ。


「後、あの扉にも鍵はあるよな」


 あの高さで足場なしで鍵あけは、

難度が高い。

スカウトではない俺には多分無理だ。


「……よく見ると、

ただの鉄扉か?

覗き窓がないな」


 頭上の扉には、牢獄でよくある覗き窓がない。


「看守が中を覗く必要がない?

んなこと、あるのか?

囚人を看守が確認するのに、

逐一ドアを開けるのか?」


 よくわからんが、

違和感がぬぐえない。


「極刑と言われたしな。

急いで逃げなきゃ」


 そうだ。

『極刑』とは言われたが、

『死刑』とは言われてない。

でも、一般的に極刑イコール死刑だと思うのだが。

『その国で一番重い刑罰』が極刑だったと思うので、

元の世界の死刑を撤廃した国だと何百年の懲役、とかになる。


「この牢獄、頑丈だな。

多分、井戸と同じで地下に垂直に掘ってる。

壁が苔むしてるし、

俺のいる位置は地上ではないと思う。

 天井は蓋もなく開いてるみたいだけど、

四、五十メートルはありそうな垂直の壁。

道具があっても、

天井まで登るのは現実的に無理だ」


 あり得るのは、

あの鉄扉の位置から上が地上で、

それ以下は地下。

いざとなれば、

建物を崩して囚人を生き埋めにすることもできるし。

とても理にかなった牢獄だ。


「ここが海辺に位置してるとすると、

雨季は雨がすごいはずだし。

扉の辺りが地上でほぼ決まりかな。

 そう言えば、そろそろ雨季だ。

俺は雨ざらしかよ。

糞が」


 元の世界のような『人権』なんてもの、

ここでは概念からない。

囚人、罪人となれば、

野犬より扱いが酷くて当然。


「手枷、足枷は金属製。

口枷もだな。

 俺にはこれを加工する技術も道具もないし。

ここに置いとくのが吉だな」


 俺は自分の身体を確認して、

壁の石を一つ触る。

ヌメヌメしていて、掴みづらい。

これでは登るのは危険だな。

滑り落ちた先は石だし。

何よりこのクタクタの身体で怪我なんてしたら、

命に関わる。


「魔法鞄に入ってた薬がありゃな」


 いつも持ち歩くあの鞄には、

ポーションを始めとした薬がつまっている。

それがあれば、少なくとも身体をなんとかできたんだが。

瞬間移動した時、いの一番で取り上げられた。

スコップもない。

あれ、気に入ってたんだがな。


「……なんだ?」


 足に冷たい何かが触れた。

俺は足を持ち上げてよく見る。

潮の香りが強まった。


 これ、海水だ。


 どこかから海水が染みだしてるのか?

俺はかがんで床の石に触れる。

よく見ると、

この石に付いてる緑色のは苔じゃなくて藻か?

藻が生えてて、湿ってる。


「待て待て待て。

満ち潮の時、ここはどうなる?」


 何となく、イメージが浮かんだ。

満ち潮で、ここが水没したら。

扉まで身体が浮かぶか?

あんな鉄の枷を付けてて?

 ましてやもうすぐ雨季だ。

もし大雨が降ってここが水没しても、

あの枷が重石になって溺死する。


「満ち潮、引き潮、雨を利用して、

囚人を沈めて殺す。

ここは執行人要らずの処刑台か?」


 普通の囚人は俺みたいに枷を外せない。

だから、溺れ死ぬ。

だから、扉の覗き窓も不要だ。

待ってれば、囚人は死んでるはずだから。

扉を開けて覗き込んで、死体を確認すれば良い。


「マジかよ、糞だな」


 俺は床と壁をくまなく調べる。

案の定、所々石の間に隙間があった。

ここから水が時々染みて出てくる。

海水だ。


「……ここの穴は少し大きいな」


 壁と床の間に目に見えるほどの大きな穴がある。

俺は枷を拾って、

モーニングスターの要領でくるくる回してその穴へ叩き付けた。

派手な音がして、石が砕ける。

海水で石がやられてたみたいで、一撃で砕けた。


「……この穴、マジででかい」


 砕いた石をどかして出てきた穴は、

俺が通れるくらいの穴だった。


「ここから海に出られるか?」


 穴に手をかざすと、

わずかに風の流れが感じられる。


「可能性はあるが、

あまりにも賭けだ。

出口まで穴の大きさがこの大きさじゃなかったら。

途中で穴が狭まって、

進むも戻るもできなくなる可能性がある。

 穴に入ってるときに、

海水が入ってきても溺れ死ぬだろうし。

最後の手段として取っとこう」


 一応穴に割れた石を置いて、

穴を隠した。


「いや、このまま看守が俺に気付かなかったら。

水が満ちて、扉まで浮かび上がれるか?」


 満ち潮はいつなのかわからないが、

抜け出すのには良い。

良いが、

その間ずっと看守がここに来ないかどうかわからない。

 途中で看守に枷を外していることがバレたら、

きっとつけ直される。

針金を歯に隠してるのも探されて、

取り上げられるだろう。


「待つって言うスタンスも、良くない。

スタートから体力が残ってないから、

これ以上時間をかけるのはただ体力を浪費するだけだ」


 この案も保留だ。

俺は五感を研ぎ澄ませて、

もっと情報を求める。


「……何の音だ?」


 外からか波の音に紛れて、

変な音がする。

天井の穴から音が降ってくる感じだ。


 次の瞬間、天井付近で大爆発が起きた。


 俺はさっき開けた穴の前の石をどかして、

とっさに穴へ飛び込んだ。

お陰で落ちてきた瓦礫は回避できた。


「掴まって!」


 上からそう聞こえた。

俺の目の前にロープが降りてきた。

俺は穴から飛び出して、

ロープにしがみついた。

 ロープは勢いよく引き上げられ、

俺の身体を引き上げた。


「釣れた!

ダンジョン学者さんゲット!」


 引き上げられた先にいたのは、

白い修道服を着たシスターさんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ