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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第二章 年休120日以上!

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第22話 休みたい

 この世界は、糞だ。

俺は屈強な覆面男二人に羽交い締めにされ、

台の上まで運ばれる。

いくら抵抗しても二人ともびくともしない。

 そして、俺は台の床に身体を叩き付けられ、

二人がかりで押さえつけられる。

猿ぐつわまでされていて、何も叫べない。


「……『死の神』の信徒として、

法にのっとて、平等に審議します」


 上からそう聞こえるが、

話してるヤツの顔は見えない。

俺は顔を床に押し付けられて、

目の前は台の足しか見えない。


「では、判決」


 何が平等に審議します、だ?

いきなり判決下すヤツの宣誓じゃねぇぞ。


「罪人、トシ・オー。

ダンジョンを破壊し、

国益を損ない。

モンスターをばらまき、けしかけて、

国土を侵した罪で、

極刑を言い渡す」


 ふざけるな。


「以上、閉廷」


 糞がぁ!

お前ら全員、殺してやる!


 俺はまた覆面に引きずられて、

部屋を出た。 


***


 冷たい石の感覚と、

両手足に付けられた枷。

口も開かないよう、

下顎を固定する口枷までされている。

 本当に、ふざけるな。

ダンジョンを破壊した後、

俺は突然現れた他国の軍勢にさらわれた。

 そう、俺がいた国のヤツじゃない。

国境を超えて進行してきた隣国の軍勢だ。

俺がいた国の名はクリザンテーム。

黄色い鷹の意匠があしらわれた旗を掲げる。

 攻めてきたのは、

隣国のオスマンサス。

オレンジの獅子の意匠の旗を掲げる。

ダンジョン保有国だ。

 ダンジョンから出て精も根も尽き果てていた俺は、

突然彼らに襲われた。

俺だけ囲まれ、羽交い締めにされて、

瞬間移動の魔法で連れ去られた。

それで法廷の様なところにつれてこられ、

この始末だ。

 今ここがどこかも分からない。

近くから波の音と潮の香りがするので、

海辺だろうとは思うが。

 運がいいのか、

俺のダンジョンコアはとっさに飲み込むことができた。

ダンジョンコアを飲み込むのは初めてじゃない。

何度も試したことがある。

飲み込んだとしても、何も変わらない。

数日後に大便と共に出てくるだけだ。

 なので、俺はほぼ裸な状態だがダンジョンコアだけ確保している。

まぁ、枷は付いてるけどな。

 俺はこう言う状況もある程度想定していた。

ダンジョンを調べて、

いつかダンジョン保有国に捕らえられることは大いにあり得る。

問答無用で殺される可能性すらあった。

まだ、判決ありきでも裁判されただけマシだと思う。

 ここは、井戸のような牢獄。

入り口は遥か頭上。

円柱形にぐるっと石が敷き詰められた、

筒の底に俺はいる。

 縄梯子のような物を扉から下ろして、

覆面男は俺をここまで抱えて降りていた。

扉の真下に寝転がされた俺。

扉からここまで結構な高さがある。

扉近くに見張りがいたとしても、ここは死角だろう。

 俺は舌で歯の間に仕込んでた針金を抜いて、

少し開くことができた口から出した。

一応入り口を見上げる。

 そして、俺は頭を床に付けて、

腰を持ち上げひらがなの『へ』のような姿勢になり、

口枷の隙間から針金を外に出した。

その針金を指で拾って、手枷の錠へ差し込む。

この世界の鍵は原始的でコツさえ掴めば簡単に開く。

 手枷が外れた。

寝転がった姿勢で足枷にとりかかる。

両手が自由なので足枷はすぐ外れた。

 そして、口枷にとりかかる。

鍵穴が見えないので手探りだ。

足枷より外すのに時間がかかった。

 全て外して、

俺は壁を背に座る。

ちょうど背にしている壁の上に扉がある。

振り返って見上げると、

かなりの高さがあった。

ここから二十メートル以上上にありそうだ。


「いやいや、もう、限界なんて超えてんだよ」


 ダンジョンバトルで疲弊していた俺に、

大きな隙があったことは認める。

だが、これは予想し得なかった。

なんせ、オスマンサスの国境は俺のいた町から、

馬で二週間はかかる距離にあるからだ。


「休みたい。

あー……、糞がぁ……」


 休めない。

こんな牢獄で休める訳ない。

正直、全力の三割くらいしか出ない。

 俺は昨日からろくに食べず、仮眠しか取ってないんだ。

しかも、一週間前からダンジョンバトルに向けて色々していた。

その間もろくに休むことはできなかった。

寝不足、空腹、疲労。

満身創痍。


「糞が」


 俺は悪態を付いて周囲を見渡す。

井戸のような牢獄は、

ざっと直径二十メートル。

高さは扉まで二十メートル以上。

天井はさらに上にあり、

井戸のように開いている。

 天井の穴から太陽が見えるから、

今ちょうど昼間だろう。

メシ食って、寝たい。


「なんとか、しなきゃな」


 俺は座ったまま情報を集める。

やはり、波の音が聞こえる。

多分、海が近い。

潮の香りが強いし、

肌が潮でベタつく感じもする。

 俺はオスマンサスの地図を思い描く。

俺が知ってる地図は制度の低い地図だったが、

大陸の西端辺りにオスマンサスの領海と海岸があるはずだ。

 そして、オスマンサスの西端には、

ダンジョンがある。

俺の予想だが、ここは。


「『大海のダンジョン』があるダンジョン街、か?」


 もし、そうなら。

さて、どうだろうか。

俺は自分の身体の具合と得た情報を統合して、

次の行動を思案する。

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