第21話 そうだろ?
「ヤメて! お願い!」
俺は声のする方に振り返る。
偽物のダンジョンコアの方に、
スクリーンのような大きな四角い何かが浮かび上がり。
そこには、あのパーカー女が映し出されていた。
アイツ、この前と着ているパーカーが違う。
毎日風呂入ってんのか?
俺はこの一週間、着替えすらしてないぞ?
一瞬で怒りが俺の頭に昇る。
「お願い!
お願いします!」
必死の形相で叫ぶパーカー女。
それを見て、カーフェイたちが驚いている。
「なんだ、ありゃ?
俺の時には、あんなのなかったぞ?」
「たぶん、あれがダンジョン自身。
いわゆる、『ダンジョンマスター』です」
俺はそう言ってスコップを握り直す。
それを見たパーカー女の顔が蒼白になった。
「待って! 待って!
お願いします!
助けて!
死にたくない!」
命乞いが下手なヤツだ。
俺は鼻で笑い飛ばす。
「さんざん殺しまくって、
食いまくって。
今さら命乞い、か?
ちゃんちゃらおかしいな」
俺がそう言うと、
周囲の冒険者たちはうなずく。
「なぁ、殺した冒険者たちはどうなった?
お前が食って、
エネルギーだか、ポイントだかに変換したんだろ?
だから、死んだアイツらの魂は、
『命の神』の元へも、どの神の元へもいかない。
そうだろ?
ダンジョンマスター」
俺はここで、かます。
冒険者たちは突然のことで言葉を失う。
パーカー女が何かを察して、
反論しようとしたがうまく言葉になってない。
俺は全力で畳み掛ける。
「俺は神を信じない。
それは、俺がお前たちのことを知ってることのせいだ。
お前らダンジョンは、
悪神『闇の神』の使いだ!
お前らが食った人の魂は悪神『闇の神』に捧げられて、
どの神の元へもいかない!
いけない!
そして、『教会』は『創世の神』を奉ってない!
悪神『闇の神』を奉ってて、
ダンジョンを確保した国を優遇してる!
悪神『闇の神』に都合が悪い神を片っ端から『異端』にして、
善神の教団を根絶やしにしてる!」
パーカー女がどもりながら否定しようとするが、
俺はさらに声を大きくして書き消す。
俺にはこの話が嘘かホントかなんて、
どうでもいいんだ。
お前らと敵対する大義名分をでっち上げればいい!
俺は元の世界の色んな創作物でよくある設定を、
さもそうであるように叫び続ける。
「ダンジョン保有国は!
ダンジョンに定期的に捧げ物として、
雇った冒険者たちを送り込み殺す!
資源採取と称して、
食い積めた労働者たちをダンジョンへ送り込み殺す!
そうやって悪神『闇の神』へ定期的に魂を捧げて、
王族貴族どもだけ、見逃してもらっている!
さらに、見返りとして資源ももらっている!
モンスターの氾濫も!
わざと町をいくつか見捨てて、
捧げ物としている!
全部、貴族どもと悪神『闇の神』の自作自演だ!」
冒険者たちは、
困惑気味だが何となく納得している。
「悪神『闇の神』の目的は!
人を根絶やしにして!
自分の眷属のモンスターだけの世界を!
自分が全て支配する世界を作ろうとしてる!
『創世の神』が寝ているのをいいことに!
何もかも好き勝手にして!
しかも、
『七柱の神』とその教団はこの事を知ってて黙ってる!
全部グルだ!
神どもは人間をどうとも思ってない!
教団の偉いヤツらも!
貴族どもも!
人を勝手に沸いて増えるハエと同じだと思っている!
『七柱の神』どもも、
自分が『創世の神』に任された仕事ができれば、
権能が機能していれば他はどうでもいいんだろ!?
そこに住む人間は無関係なんだろ!?」
冒険者たちは言葉をなくしている。
俺はスコップを強く握って、
本物のダンジョンコアへ歩み寄る。
パーカー女が焦り、
顔から出せる液体を全て流して叫ぶ。
「待って! 待って!
死にたくない!
死にたくない!
お願いします!
助けて!」
俺はダンジョンコアの前に立ち止まる。
スコップを持ち上げて大きく振りかぶる。
「助けて!
なんでも言うこと聞きます!
ダンジョンのこと!
教えます!
作り方とか!
マニュアルもあげます!」
俺は動きを止める。
コイツ、
やっとまともな命乞いができたか。
「助け、助けくれたら!
なんでもします!
どんなこともできます!
ダンジョンもあげます!
ダンジョンの使い方を教えますから!」
滝のようなの涙を流して、
パーカー女が命乞いをする。
「……お願いします……!
助けて!」
俺は思い切り笑う。
声を上げて、大笑いして。
そして、スコップを振り切った。
スコップに触れた所から、
ダンジョンコアは木っ端微塵に砕け散り。
パーカー女が映し出されていた何かが、
パーカー女の悲鳴の残響を残して消える。




