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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第一章 未経験者歓迎!

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第20話 ダメだ

 俺はスコップを片手に、

ふらつく足を手で殴って叱咤した。

そして、魔法鞄からコルク栓に封蝋した試験管型の薬瓶を十本出す。


「誰か、特級の解毒薬だ。

息がまだあって飲み込めたら、

さっきの蛇の毒も解毒できるはずだ」


 ロベリーが俺に駆け寄り、

薬瓶を受け取って倒れた人たちの方へ駆けていく。


「それも、先生の謹製かい?」


 ボロボロのカーフェイが俺に歩み寄ってたずねる。


「えぇ。

ポーションは足りますか?」

「あんたの奢りで、たくさん持ってきた。

まだあるから、

解毒できれば助かるだろう。

ただ、怪我人と一緒に撤退させる」

「帰還石は?」

「持たせた。

死んだヤツから回収すりゃ、

数は足りるだろ」


 俺は次の部屋をにらむ。

カーフェイは俺の肩をつかんで止めた。


「先生、ちょい待ってくれ。

俺らも行くからよ」

「えぇ。

でも、悠長にしてたら、

またキメラが沸きます」

「そうだな。

てめぇら!

急げ!」


 カーフェイの号令を皮切りに、

手早く死者を弔い、

怪我人を帰還石で帰した。

動けそうな人たちはポーションをあおる。

 何やかんや合流して、

あの部屋には六十人くらいいた。

今は四十人いるかどうか。


「半分以上残った。

行けるぞ、先生」

「ありがとうございます。

行きましょう」


 俺はスコップを持ったまま、

次の部屋に歩き出す。

カーフェイとバニレたちは、

その後をついてきてくれる。

 次の部屋に足を踏み入れた。

隣の部屋とは違い、

大理石か何か白い石でできた部屋だ。

広さもさっきよりはるかに広い。

小学校の体育館くらいありそうだ。


「……あれが、『ダンジョンコア』?」


 俺は部屋の中央で祭壇の上に神像のように奉られた、

巨大なクリスタルを見つめる。


「さすが、先生。

そうよ、あれが『ダンジョンコア』だ。

いつか、俺が壊しちまったヤツだ」


 そう言えば、

カーフェイたちミルヒィはダンジョンを破壊した張本人だ。


「あの時は、

ダンジョンコアなんて知らなくてな。

でけぇ宝石だ!

って、皆で大喜びして。

 大きすぎて持てないから、

俺がハルバードで砕いたんだよ。

そしたら、ダンジョンが壊れちまって。

このざま、さ」


 何と言うか、

冒険者らしいっちゃらしい理由だな。

たしかに、ああいう風に奉られてると、

金目のものに見える。

見つけた冒険者たちが壊して持って帰ろうとしても、

さもありなん、か。


「はっはっはっ!

ダンジョンコアなんて重要情報、

ただの冒険が知るわけねぇっての!」

「たしかに、そうですけどね。

 そう言えば、

ダンジョンが壊れるときのことを聞いても良いですか?

コアを破壊したらダンジョンが崩れ出す、とかなら、

帰還石を用意しておかないと。

まだアタックしてる冒険者たちへも、

声をかけないとですし」


 俺がそう言うと、カーフェイは笑う。


「俺ぁ、あんたが気に入った!

良いぜ、話してやる!

 そうだな。

道ががらがら崩れ落ちたりはしなかった。

ランタンの火を消したみたいに、

突然、モンスターが全部消えて。

罠も動かなくなって。

宝箱もでなくなって。

 何と言うか、

ただの洞窟みたいになったな」


 なら、大丈夫か?

俺は一抹の不安を残しつつ、

周りに声をかける。


「皆、念のため帰還石はいつでも砕けるようにしててください。

 後……、後?

いや、なんだ?

違う。

違う、違う、違うぞ」


 俺は猛烈な違和感に襲われた。

俺はその違和感を逃がさず、声に出す。


「ダメだ。

皆動くな」


 俺の一言でその場の全員が動きを止める。


「……糞が。

これ、罠だ」


 直感だ。

モンスターが出ないのは、

戦闘の余波や流れ弾でダンジョンコアを壊したくないからだとして。

だとしても、

あの位置はあまりにも無防備だ。

そして、あまりにも部屋の奥にある。

 俺には食虫植物のウツボカズラか、

チョウチンアンコウの疑似餌にしか見えない。

カーフェイが恐る恐ると言う感じで声を出した。


「……先生。

俺の時はあれと似たのを壊せば終わったぜ?」

「あんな凝った謎かけと奇襲を用意したヤツが、

こんな容易く自分の急所をさらすと思えません。

あれは、罠です」


 俺は魔法鞄から魔力を測定する魔法道具を取り出した。

スピードガンのような形で、

金属探知機のように低い音が出ている。

魔力が強い方にこれを向けると、

音が大きく高くなる。

 俺はゆっくり探知機を振る。

ダンジョンコアの方は強く反応し、

部屋の壁にも強く反応した。

 次に俺は魔法鞄から神聖力の探知機を取り出す。

此は鎖の先に青い宝石が繋がっていて、

神聖力が強い方に宝石が引き寄せられる。

 俺が鎖の先を持った瞬間、

宝石が俺の眉間を指し示す。


「違う。

俺の後ろか?」


 俺は手はそのまま身体をズラす。

すると、宝石はさっき入ってきた扉の付近を指し示した。


「ダンジョンコアは魔力と神聖力の二つを備えてます。

目の前のダンジョンコアからは、

魔力しか探知できません。

神聖力の反応があるのは、

あっちです」


 俺がそう言うと、

カーフェイが口笛を吹く。


「この先生、すげぇな。

 スカウト!

扉の方を調べろ!

ただし、慎重にだ!」


 ロベリーたちがすり足で扉の方へ戻る。

そして、扉の周りの壁や床を念入りに調べる。

ミルヒィのメンバーらしきスカウトが、

静かに手を上げた。


「なんかある。

よくわかんないけど、空間がある」

「マジかよ。

先生、大当たりだ」


 バニレが感嘆の声を上げた。

カーフェイはハルバードを握って、

号令をかける。


「全員、武器を構えとけ。

スカウト、罠がまだあるかもしれん。

慎重に調べろ」

「後、目の前のダンジョンコアには近寄らないでください。

何が仕掛けられてるのかも分かりませんから」


 俺はそう補足して、

ゆっくり扉の方へ近寄りつつ神聖力の探知機をスカウトたちの方へ向ける。


「スカウトの皆。

神聖力の探知機を見てくれ。

俺の頭より少し上の辺りを指してる。

空間は長方形に空いてないか?」


 俺のその指示を聞いて、

スカウトたちは調べ方を変えた。

チラチラ神聖力の探知機を見つつ壁を手でまさぐる。

 俺もスカウトたちの近くまでいって、

探知機をよく見る。

すると、ロベリーが声を上げた。


「あった。

罠もある。

先生は離れて」


 俺は小走りでスカウトたちから離れた。


「……即死罠のオンパレードだ」

「殺意高い。

ここが当たりで間違いないね」

「慎重にいくぞ。

絶対解除してやる」


 スカウトたちから、そう聞こえた。

皆笑って壁に色んな道具を刺していく。


「……解除!」


 スカウトたちは壁に数十本刺さった道具に紐を結んで、

紐の先を握り俺たちのところまで戻ってきた。

そして、ロベリーが叫ぶ。


「引っ張るよ!

いっ、せぇ、のぉ、でっ!」


 スカウトたちが声をあわせて、

一斉に紐を引っ張る。

すると、扉の隣の壁の板がドアのように外開きに開いた。


「皆、最高」


 俺はそう言って笑う。

開いた壁の板の中には、

クッションのようなもので壁に埋め込まれた、

握り拳大のクリスタルがあった。


 俺が持っているダンジョンコアそっくりのクリスタルだ。


 俺は神聖力の探知機をそれに向ける。

探知機は間違いなくクリスタルを指し示した。


「あっちが本物のダンジョンコアだ!」


 俺はスコップで壁の中のダンジョンコアを指した。


「止めて!!」


 そこに、女の声が飛び込んだ。

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