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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第一章 未経験者歓迎!

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第19話 俺は俺の仕事をする!

 俺は何もない部屋の真ん中に立たされ、

必死に考える。

そのすぐそばでは、カーフェイとバニレが先頭に立って、

冒険者たちがキメラと死闘を繰り広げている。


「糞っ、くそっ、クソがっ!」


 俺は問題がない謎かけに必死に食らいつく。

動けば死ぬ。

間違えても死ぬ。

キメラに襲われても、

応戦できないから多分死ぬ。


「すまん!

キメラは任せる!

俺は俺の仕事をする!」


 俺はそれを叫ぶと、

思考の海に飛び込んだ。

 三つの謎かけ。

一つ目、二つ目はまだ簡単だった。

だが、三つ目はかなりギリギリだった。

一つ目と三つ目は、差がありすぎた。

なら、この問題は超難問だろう。


「そう言えば、

なんでカーフェイたちも誰も一つ目の問題が分からなかったんだ?」


 一問目を聞いたときに思った疑問に、

もう一度つまずく。

一つ目の問題は、

元の世界ではポピュラーな謎かけだ。

『時間』は待っていると遅く感じ。

そのとき、その瞬間は速く感じ。

過ぎ去ると、動かすことも変えることもできない。

それを、羊、鷹、山に例えた問題だ。

 ちょうど、俺の視界にリーンテが見えた。

俺は声を張る。


「リーンテ!

ちょっと聞かせてくれ!」

「え!? 何?」


 リーンテはキメラを気にしつつ応えてくれる。


「一つ目の問題、

君には答えがわかったか?」

「あれ?

あれは分からないよ!

だって、あれ、『神の御力』でしょ?」


 は?


「朝が来て、昼になって、夜が来る!

それは、『創世の神』神の御力によるもの!

むしろ、『時間』って何?!」

「待て、待て、待て!

二つ目は?」

「それも、『神の御力』!

夜空を照らすのは、『創世の神』の御力!」

「み、三つ目は?」

「それこそ!

『神の御力』じゃない!

火を燃やすのは『火の神』!

水を流すのは『水の神』!

命を萌やすのは『命の神』!」


 なんだ、それは。

神の、御力?

そんな、まさか、この世界に概念からないのか?

『時間』も、『星』も、『エネルギー』も?!


「神が身近な世界なら!

全て『神の御力』で説明でき、

そこから先は思考停止!

 なるほど、この問題が難問になるわけだ!

なら、最後の問いも『地球の科学的なもの』か!」


 それでも、

選択肢は無数にある。

もっとよく考えなければ。


「リーンテ、ありがとう!」


 俺はお礼を言ってまた考え出す。

血の臭いと肉の燃える臭いがする。

しかし、今は考えるのが先だ。

 だから、だけども、糞が!

せっかく思考の道筋がついたんだ!

考えるのを止めるな、俺!


「……ダンジョンか」


 そうだ、ここはダンジョンだ。

もし、答えがない、答えられない問題が設置されていたら、

ここから先に『道がないのと同じ』じゃないか?

道がここで途切れている、

としたら、どうだ?


「ダンジョンは、

実はここで終わり?」


 それはさすがに楽観的すぎるか。

しかし、だとすれば、

『ダンジョンコア』はどこにある?

『ダンジョンコア』がダンジョンの『心臓』なら。

なら、ダンジョン内にコアがないと、

力と言うか、血を通わせることができない。

もし、この部屋の奥があるとしたら、

答えられない、道がない部屋は『血管が途切れてる』のと同じでは?

 それに、ダンジョンコアなんて大切なもののそばで戦闘させるか?

パーカー女には、

キメラをここに呼び出した意図があるはずなんだ。

俺を殺すためだとしても、ここでやる理由が。


「いや、むしろ『今と同じこと』を、

なんで二問目、三問目でしなかった!?

なんでだ!?」


 問題が書いてある台の破壊と奇襲。

一問目は油断させるために解かせたとして、

二問目、三問目でやっても効果的なはずだ。

 もしかして、それをすると、

俺が問題を読めなくなって、

『答えられない』からやらなかった?

俺が答えられなくなると、

この先の『道が繋がらなくなって』、

ダンジョンコアから送られる力が、血が途切れる?


「まさか、もしかして、そもそも!?

そもそも、

ここの問題が『これは、何?』だけ?!

それだけで成立していた、可能性がある!?」


 あり得る。

だから、キメラが台を破壊しても問題は成立する。

問題が成立した以上、回答者は『答えられる』。

答えられるなら、『道は繋がる』。

 だが、だとしても、答えは?

問題はどうなる!?

壊された台には、

問題がなくても『ヒント』が書いてた筈なんだ。

今俺の手元にある情報は。


「……問題は、前の三問か!?」


 『時間』、『星』、『エネルギー』。

そして、『地球の科学的な』答え。

問題は、揃ってた?

この隙間に何かがハマれば、答えが出る?

それでも、答えはなんだ?

 かなり絞り混んだぞ。

樹海から、

街道に出たくらい見通しが違う。

 『宇宙』が共通点だ。

だから、『宇宙』と答えたいが、

どうなんだろうか。


「……姿?

……変わらない、変わる?」


 三問の答えだけでなく、

問題文にも気になる点がある。

『姿』についての言及が、三問ともにある。

見た目に関するものか?

それなら、『変化』についての言及もある。

変わるとか、変わらないとか。

 突然、悲鳴が俺の耳に飛び込んだ。

戦っている皆の方を見ると、

バニレがちょうどキメラのパンチで吹き飛ばされていた。

床には既に数名倒れている。

 倒れた冒険者たちの中に、タードが見えた。

彼が動く気配はない。

息はあるのか?

分からない。


「こっちは任せろって!

お前はお前の仕事をしろ、

トシ・オー!」


 カーフェイがそう叫ぶ。

しかし、カーフェイも満身創痍だ。


 クソ、が!


 死ぬのは嫌だが、この死に方は一番嫌だ!

誰かにしてやられて死ぬのは、断固お断りだ!

このままキメラを倒したとしても、

俺はここから動けない。

このままだとしても、いつかは死ぬ。


 いつかは、死ぬ?


 一問目は『時間経過』、二問目は『宇宙』、

三問目は『根幹』を指しているとする。

また、三問とも『等しい』、『変化』と言うニュアンスを含む。

そして、三つの答えが『時間』、『星』、『エネルギー』。

思考の道筋は、『宇宙科学』だとしたら。


 星は時間経過で、燃え尽きる。

 エネルギーも均一に広がり尽くし、

 温度差がなくなる。


 壊された台に『闇すら消える』とか、

『全てが止まる』とか書いてたと仮定すると。

もしかして。


「答えは、『宇宙の熱的死』……!」


 俺がそう答えると、目の前のドアが開いた。

俺は渾身のガッツポーズを決める。

 最後の問題文が何か分からない。

だから、かなりこじつけだったが、成った。


「正解してやったぞ、糞がぁ!」

「トシ・オー!」


 振り返ると、

キメラがダメージを受けながらも一直線に俺に向かって駆け出していた。

 俺はスコップを背中から下ろして握る。

俺は恐怖を振り払うために叫んだ。


「お前も必死だなぁ!」


 俺はキメラの蛇頭を回避し、

振り下ろされた拳をくぐり抜け。

キメラの胸に突き刺さったたくさんの剣の柄を、

スコップで思いきり殴り付けた。

 キメラが雄叫びのような、悲鳴のような声を挙げた。

俺が叩いた剣は、

柄が体内にめり込んで見えないくらい深く突き刺さっている。


「おらぁ!」


 カーフェイのハルバードが唸る。

その一振は蛇の尾を切り落とした。


「このやろう!」


 バニレが飛び起き、その隙を見逃さない。

彼はキメラの背中から胸へ剣を突き立てた。


「糞がぁ!」


 俺はがむしゃらに、

スコップの剣先をキメラのみぞおちへ突き立てた。

 キメラが派手に血を吐いた。

俺は急いで巨体から離れる。

キメラが膝から崩れ落ちて、

床に倒れ伏すのを見送った。


「しゃぁ!」


 バニレが喜び叫ぶ。

冒険者たちは雄叫びをあげた。


「まだだぁ!」


 俺はそれを制止した。

水を打ったように静まり返る。


「次が、次こそが、最後だ」


 俺がそう言って、

スコップで開いたドアを指し示した。

冒険者たちはそれを見て笑う。

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