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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第一章 未経験者歓迎!

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第18話 やっぱ、この世界は糞だ

 バニレたちのおかげで少しだけ眠れた俺は、

起きた瞬間に目の前にいた顔に驚く。


「か、カーフェイさん?」

「おう。

起きたか。

さぁ、行こう」

「い、行くって、どこへ?」

「俺がお前を誘うのは、

ダンジョンしかねぇだろ?」


 俺は一も二もなく飛び起きて、

カーフェイさんとミルヒィのメンバー。

後、バニレのパーティーとポータルへ向かって歩き出した。

マリーが驚いて俺たちを引き留める。


「ちょ、ちょっと!

何でトシ・オーを連れてくのよ」

「三階層は、『謎かけ』だ」


 カーフェイは、端的にそう言った。


「謎かけとパズルの階層か。

罠と違って、正解すれば通れる。

不正解だと、毒が降ってきたり、

モンスターに囲まれたりする」

「そうそう。

さすが、学者先生だ。

説明が省けてありがてぇ」


 俺は苦い顔のマリーに、言伝てを頼む。


「マリー、アニスに薬を絶やすなと言ってくれ。

特にポーションだ。

マリーは、掲示板を頼む」

「……分かった、分かった!

降参!

いっといで」


 マリーが両手を上げて降参のポーズを取る。

このポーズは異世界でも同じなんだな、

と思って俺は少し笑ってしまった。

マリーはそれを見て少しムッとした顔になる。


「トシ・オー。

アンタもこの作戦の要なんだ。

死なないでね」

「いざときは、『帰還石』がある」


 そう、この前使ったので、新しいものを用意してもらった。

ただし、前と違って帰還ポイントはこの掲示板の下に設定されている。


「よし!

いっといで!」

「おう、頼んだ」


 俺はマリーにそう言って、

カーフェイとバニレを先頭にした合同パーティーと共に、

ダンジョンへ駆け出した。

防衛線にいたジャバとライムが俺を見てサムズアップする。

俺もサムズアップで返す。


 突然、ポータルからこちらに出てきていたモンスターたちが、

一斉に俺を見た。


 しまった!

モンスターたちは、

掲示板を狙うのを止めて俺に殺到する。

しかし。


「あら、よっ!」


 カーフェイの一薙ぎで、

モンスターが枯れ葉を散らすように吹き飛んだ。

カーフェイは走りながら振り返って俺に言う。


「モンスターにも、

先生が重要人物だってバレたみたいだな」

「そうですね。

急ぎましょう!」


 俺たちは防衛線からポータルまで、

モンスターを蹴散らし進む。

俺はスリングショットでの援護と鳥もちでの足止めに努めた。

 やっとポータルまでたどり着き、

俺たちはダンジョンへ侵入した。


「……『洞窟型』か」


 俺はそう言いながら、

掲示板の地図の二階層への道を思い浮かべる。

 洞窟型は、その名の通り洞窟のダンジョン。

むき出しの岩肌。

道幅や天井の高さがまちまちで、

薄暗くじめじめしており、

足元がぬるっとして滑りやすい。

重く湿気た空気に血と獣のような臭い混ざっている。

 カーフェイたちは既に道を覚えているようで、

立ち止まることなくダンジョンを駆ける。

俺はなんとかみんなについていく。

 バニレが何かに気付いて叫んだ。


「最短距離を駆け抜けろ!

さっきまでモンスターがいなかったのに、

急にそこいらから湧き出した!

やっぱ、先生が狙われてる!」

「モンスターに止めは刺すな!

動けなくして、駆け抜けろ!」


 俺はそう叫んで、

スリングショットで鳥もち弾を構えて駆ける。

案の定、曲がり角からコボルトやゴブリンの群れが現れる。

俺が放った鳥もちで先頭が転び、

モンスターのドミノ倒しが起きる。

カーフェイたちはそこをすかさず切り裂いて、

最短距離を突き進む。


「こっちです!」


 少し進むと、

階段とその周りを守る冒険者たちが見えた。

彼らは口々にこっちだ、と言って手招きしてる。


 そこに、恐ろしい咆哮が轟いた。


 俺は足を止めずに、声の方を見た。

そこには、倒されたはずのミノタウロスがいる。

横道から俺たちに向かってミノタウロスが突進してくる。


「止まるな!」


 俺はそう言って、

さっき用意したばかりの弾をスリングショットにつがえた。


「全員、鼻をつまめ!」


 そう叫んで、俺は弾を撃った。

それは見事に突進してくるミノタウロスの鼻先に命中する。

一瞬で周囲にひっくり返りそうになるほどの悪臭が噴出した。


「アンモニアとアルコールの臭いを集めた『悪臭弾』だ!」


 ミノタウロスは突然のことにパニックになり、

そのままの勢いで壁に体当たりした。

ミノタウロスは壁に何度も自分の身体を叩きつけ始める。

完全に我を失っているようだ。


「くせぇ!

でも!

すげぇ、効いてる!」


 バニレがそう言って笑う。


「このまま二階層へ行くぞ!」


 カーフェイの一声で、

階段で待機していた冒険者たちも階段を下りた。

階段はさっきとは違って、ちゃんと石段になっている。

 人数を増やして、俺たちは二階層にたどり着いた。


「今度は『遺跡型』か」


 遺跡型もその通り、

切り出された石やレンガなどの人工物でできたダンジョンだ。

ここは、切り出された石で通路側作られている。

洞窟型と違って、道幅と天井の高さは均一。

ざっと見たところ、道幅十メートル。

天井まで二十メートルくらいだな。

相変わらずじめじめしており、

カビた臭いが充満している。

足元が平坦なので走りやすいが、

その分罠を隠しやすく、

道に特徴がないので迷いやすい。


「スカウト、前に!」


 カーフェイの号令にあわせ、

ロベリーを含むスカウト達が前列に出た。

走る速度も少し落とし、

まっすぐ階段へ向かっていく。

 スカウトたちは役割分担しつつ、

素早く罠を解除していく。

その手際は見事の一言。

バニレが吠える。


「モンスターだ!

モンスターが来た!」


 今度はコウモリの様な翼が生えたガーゴイルが、

群れで飛行して向かってきた。

飛んでいればモンスターが罠にかからないからだろうが。


「鳥もちを出せ!」


 俺がそう叫ぶと、

全員が鳥もちを手に構える。


「一斉に投げるぞ!

そー、れ!」


 俺の掛け声で一斉に鳥もちがガーゴイルを襲う。

ガーゴイルたちは壁のように飛んで広がる鳥もちを避けきれない。

面白いくらいぼとぼとと落ちるガーゴイルたち。

しかも、落ちたガーゴイルをトリガーに罠が発動した。

ガーゴイルたちは罠で止めが刺されていく。


「罠がついでで解除された!

駆け抜けろ!」


 カーフェイの号令にあわせて、

全員が駆け出す。

 しばらく進むと、一階層の時と同じように、

階段そばに冒険者たちが防衛線を張っていた。


「あそこだ!」

「先生、出番だ!」


 俺たちは三階層へなだれ込んだ。


「最後は『室内型』か」


 室内型は正方形の部屋で区切られたダンジョンだ。

壁や天井はレンガのようなものでできている。

目の前にドア。

そして、何かの台。


「あの台に謎かけが書いてる。

台に触れると謎かけが見えるから、

答えを叫ぶ。

一人でしか台に触れられない。

一人ずつ答えるしかない。

 間違えると、

あの台の周りの足元から槍が飛び出して死ぬ。

答えずにここから動いても同じだ」


 よく見ると、

台の下に血溜まりができていた。

誰かが犠牲になったらしい。


「俺が行く」


 どの道、ここを抜けないと俺は死ぬ。

なら、戦う。

元の世界に帰るためなら、

俺は何でもすると決めている。


「ちょい待ち。

死んだやつが問題を読み上げてくれた。

 伝えるぞ?

『向かって来る姿は歩く羊のよう、

すれ違う姿は空飛ぶ鷹のよう、

通りすぎた姿は大きな山のよう。

これは何?』」


 俺は迷わずまっすぐ台に向かう。

後ろでカーフェイたちが、息を飲むのがわかる。

 だが、俺にとってはこんな謎かけ、

余裕も良いところだ。

この世界には無い問題なのだろうか。

そんな疑問はあれど、

台に手をついて俺は声を張り上げた。


「答えは、『時間』!」


 すると、目の前のドアが音を立てて開く。

カーフェイたちが、俺に駆け寄ってきた。

俺はそれに構わず開いたドアに駆け出す。

 しかし、ドアの向こうはもう一つの部屋だった。

その部屋にも今の部屋のような台がある。


「……二問目か」


 俺は振り返ってカーフェイとバニレたちを見た。


「ここからは、俺が先頭だ」


 俺はまっすぐ次の台に向かう。

そして、台に手をついた。

俺は問題を読み上げる。


「『昼でも夜でもそこにいる。

だけども、昼では目に見えぬ。

昼でも夜でも輝いている。

だけども、昼では目に見えぬ。

目に見えた姿は小さな点。

だけども、本当は小さくない。

これは何?』」


 少し難しい。

だが、いける。

俺は声を張り上げる。


「答えは、『星』!」


 目の前のドアが音を立てて開く。

俺は思わずため息をつく。

次の部屋にも台が見えたからだ。

 カーフェイが俺に近寄る。


「先生、マジか。

そんな戦える学者先生なんて、

俺は見たこと無いぜ」

「ありがとう。

まだ、次の部屋があります。

行きましょう」


 俺は皆を引き連れて、次の部屋へむかった。

俺は次の部屋の台へ歩み寄る。

台にふれると、次の問題が表示された。


「『火を燃やし、水を流し、命を萌やす。

その根幹にあり、しかし、その姿は見えぬ。

どこにでもいて、姿を変える。

それでも、その姿は見えぬ。

これは何?』」


 ……ヤバイ。

これは難しい。

後ろの皆が前のめりになるのを感じる。

 考えろ。

火を燃やす。

水を流す。

ここが分かりやすいか。

熱か? 水なら高低差?

それでは一致しない。

 その上、命か。

命、萌やす。

燃やす、ではなく、萌やす。

萌える……?

 その上で、姿が見えないのに、

姿を変える。

 俺は震える声を張り上げた。


「こ、答えは、『エネルギー』!」


 少し、間がありドアが開いた。

俺は大きく息を吐いて、台にもたれかかる。

バニレが駆け寄って来てくれた。


「おい!

大丈夫か?!」

「い、今のは難しかったなぁ。

……次もあるのか」


 俺は開いたドアの向こうの台を見つめる。

徐々に謎かけの難易度が上がっている。

 俺は震える自分の足を殴って立たせた。


「トシ・オー、お前……」

「行くぞ、最奥まで」


 俺は次の部屋に向かって歩く。

バニレの肩は借りない。

歩く足はあるのだから、歩いていく。

 そして、台に手をついた。

問題が表示された。


 その瞬間、

俺の目の前で台が吹き飛んで木っ端微塵になる。


 視界にはさっきまでいなかったライオン頭の巨人がいた。

ソイツが台を殴って破壊したのか。

 俺は反応が遅れてしまったことを悔やむ。

そこに蛇が大きく口を開いて襲ってきた。

これは、死んだか。


「ふん!」


 バニレが蛇頭を武器で叩き落としてくれた。

カーフェイがライオン頭の巨体を吹き飛ばして俺から遠ざける。


「キメラだ!」

「トシ・オー!

お前は動くな!

動いたら、死ぬぞ!」


 カーフェイたちが俺を囲むように陣を展開した。

俺は冷や汗が一気に吹き出した。


「……『これは何?』しか、

問題が見えなかった」


 俺は、これだけで答えを絞り出さなきゃならないようだ。


「……やっぱ、この世界は糞だ」

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