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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第一章 未経験者歓迎!

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第17話 ……もうちょい

 ダンジョンから、

冒険者たちの死体が続々と運び出される。

全員キメラの蛇の毒で亡くなったらしい。

 しかし、死者は合計十七名。

少ない。

かなり少ない犠牲だ。

怪我人も増えた。

だが、既に彼らの手当てはすんでおり、

重傷者でも命には別状ない。

 そして、キメラの死体も解体台に乗った。

これはカーフェイとミルヒィたちが仕止めたらしい。


「他の冒険者たちも協力して倒したんだ!

すげぇよ、Sランクパーティー!」

「カーフェイのハルバード!

ありゃ、もう大砲だ!

一振でキメラの巨体が吹き飛ぶんだ!」


 冒険者たちも興奮気味だ。

しかし、夜が明けてきて、

事務方は疲れが出てきた。

マリーの声が響く。


「受付、交代して休みを取りな!

筆記係!

手が震えてるから!

休みな!」


 マリーが限界まで働く人を見つけて、

端からベッドへ送る。


「アニス!

アンタも寝なさい!」

「も、もう少し……」

「ダメダメ!

ほら、ベッドへ!」


 アニスがマリーに連行された。

周囲が苦笑いする。

良いタイミングで、

町に控えていた商業ギルドと薬師ギルドの職員たちがやってきた。

マリーがその内の一人を捕まえてたずねる。


「ねぇ、アンタ、町の衛兵はどうしてた?」

「いつもどおり、町の見回りしかしてないです。

住人は、先日殆どとなり町に逃がしましたし。

誰もいない、何もない町を暇そうに歩いてましたよ」

「最低なやつだね」


 本当に最低なやつだ。

俺は書類から顔を上げずに、心の中で同意した。


「トシ・オー。

アンタも寝なさい」

「……もうちょい」

「膝枕するよ?」

「……寝ます」


 マリーは人気者だ。

そんな人の膝枕で寝たら、

確実に恨まれる。


「朝番が到着したよ!

昨日から働いたやつは寝なさい!」


 マリーの一喝で、手早く引き継ぎがなされる。

薬師ギルドの用意した怪我人用ベッドだが、

予定より余っていたので夜番は皆そこで寝る。

 俺は掲示板の近くで寝そべった。


「先生もベッド使いな」


 俺はマリーに引きずられて、ベッドに運ばれた。

俺は仕方なくベッドによじ登り、目をつぶる。

しかし、そこに怒号が飛び込んだ。


「敵襲ぅ!」


 俺は飛び起きてポータルを見た。

すると、押し返していた防衛線がどんどん押し返されていく。


「モンスターが固まってる!」

「破城槌だ!」


 俺が目を凝らすと、

モンスターがこれでもかと互いの体をくっつけて、

ひしめき合い一つの塊になっていた。

二人三脚も真っ青な連携で、

ここへ向かって走って来る。

まるで列車だ。

モンスタートレインだ。

 冒険者たちはモンスターへの攻撃を絶やさないが、

モンスターの密度が高く、

外側のモンスターを倒しただけで終わる。

モンスタートレインが、止まらない。


「っ!」


 俺はモンスターの塊に向かって駆け出した。

走りながら魔法鞄からスリングショットと鳥もち弾をだし、

モンスターの足元へ撃ち込む。

鳥もちでモンスターの先頭が派手に転ぶ。

 後ろのモンスターも連鎖的に転んだところへ、

俺は爆裂弾を何発も撃ち込む。

ドミノ倒しに倒れたモンスターたちは逃げることもできず、

爆発される。

しかし、トレインの後ろの辺りにいたモンスターが起き上がり、

爆発から逃げた。

 逃げ延びたモンスターたちは、

また固まってこちらを向いた。

俺は投げる方の鳥もちを、そいつらの足元へ投げる。

モンスターはさすがに学習したのか、

鳥もちを避けようとしたが。


「させねぇ!」


 バニレと彼のパーティーがどこからともなく現れ、

そのモンスターたちを倒してしまう。

俺はスリングショットをおろして、例を言う。


「ありがとう、皆、

 助かった、バニレ。

ってか、いつダンジョンから戻ってた?」

「一階層が踏破された辺り。

ずっと皆で寝てたから、元気だぜ!」

「いや、何寝てんだよ。

稼ぎ時だろ?」

「そりゃ、寝るよ!

トシ・オー。

お前を守るやつがいねぇんだからよ」


 俺がバニレの言うことを理解できず、

レートの方を向く。

レートは苦笑いして解説してくれる。


「つまり、俺たちはトシ・オーの護衛だ」

「給料だせないぞ?

俺はこれで一文無しの借金まみれだからな」


 リーンテが俺を見て笑う。


「何言ってんの?

トシ・オーに何かあったら、

この作戦が終っちゃうんだから」

「そうそう。

センセのオツムは、宝より貴重」


 ロベリーがそう言って俺の頭をこづく。


 そんなに信用されてんのか、俺。


 俺のこの世界での三年間が、

意図しなかった方に実っていた。

 嬉しい。

望んだ形ではないが、嬉しい。

俺は自分が泣いていることに気づいた。

それを見たバニレが心配そうにしている。


「大丈夫か?

トシ・オー」

「いや、お前ら、最高……。

信じてくれて、ありがとう」


 俺は泣きながらも、精一杯笑ってそう言った。

バニレたちは、大笑いして。


「ここからだ!

まだ終わってないぜ、トシ・オー」


 そうだ、そうとも。

ここからだ。

俺は涙をぬぐってうなずいた。

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