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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第一章 未経験者歓迎!

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閑話 窮地

●ダンジョン管理室●


 一階層が、突破された。

残るのはボスのミノタウロスのみ。

クミは、焦りに焦る。


「なんで!

なんで冒険者が増えてるの!?」


 冒険者たちはその数を増やし、

さらに攻略が効率化されて行く。

軍師はさらに情報を得て、知識を繰り出す。

その知識は攻略情報として開示され、

冒険者たちは知を得る。

 冒険者たちは得た知を、

歴戦の経験でさらに現実的な策に作り替える。

動きはより簡略になり、

効率的にモンスターを駆逐していく。


「無法者の集まりで、

協調性なんてあるはずないって!

嘘じゃない……」


 クミは自分が追い詰められている現実に、

やっと気づいた。

 敵を、相手がどうなっているか見なければ。

クミの思考がやっとそこに到達した。

彼女はカメラの代わりになる空を飛ぶモンスターをたくさん召還し、

ポータルへ向かわせる。

 しかし。


「おっしゃ!

来た!」

「やれ!」

「先生謹製の鳥もちだ!」


 冒険者たちは、さらに上手だった。

トシオが薬師ギルドに頼んで作った鳥もちが、

飛行するモンスターたちを襲う。

この鳥もちは、

いつもトシオがスリングショットで撃ち出すものを改良している。

改良版は素手で投てきし、

ぶつかったところで弾けて餅が広がる仕組みだ。

 鳥もちがついたモンスターは羽が開けず、

落ちる。

さらに近くのモンスターにぶつかり、

鳥もちが絡み合って落ちる。

 連鎖的に飛行するモンスターたちは、

気持ちいいくらい落ちていく。


「一匹でも良いから、ポータルを抜けて!

外を見せて!」


 クミの悲痛な願いは、

冒険者たちへは届かない。

飛行するモンスターはポータルの手前で呆気なく狩り尽くされる。

 『無法者の集まり』。

ここにクミとトシオで認識の違いがある。

クミの認識は、

チンピラのような人が集まっているもの。

トシオの認識は、

ギャングのような人が集まっているもの。

似ているが、全く違う。

 そして、トシオはよく知っている。

日本の『侍』は、特に平安時代の頃は、

『武士団』と呼ばれて今で言うギャングに近い存在だったらしい。

住む土地を守るために武器をとり蜂起した、

荒くれ者たち。

彼らが政に関わるようになって、

近代の『侍』になる。


 『武士』は、『軍師』と『旗』の存在で化ける。


 これは日本の歴史が証明してきた。

代表的なのは、源氏。

梶原景時と源頼朝。

他にも、黒田官兵衛と豊臣秀吉が有名だ。

 トシオはそれを知っている。

そして、彼はそれをイメージして戦っている。

軍師はトシオ、旗はカーフェイ。

二つが揃う前なら、クミにも勝ち目はあった。

 さらに、荒くれ者のために薬を揃え、

武器や道具を揃え。

役割を振り分け、勝ちへの道筋を示せば、

彼らはその道を旗に続いてまっすぐ走ってくれる。

 名を上げるため、金のため、町を守るため。

それらは、忠義とは違うかもしれないが、

全員で同じ方向を向いているのは間違いない。

団結であることに、変わりはない。

トシオはそれで良い、と公言している。


 そう、大義がなくても人は動く。


 動いたのは一人二人じゃない。

百を越える大人数だ。

そうなれば、もう雪崩と変わらない。

坂を転がり落ちるそれは、簡単に止まらない。

止まるわけがない。


「止まってぇ!」


 声を裏返し、絶叫するクミ。

しかし、冒険者たちはミノタウロスを討伐した。

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