第14話 お前ら、最高だぜ!
受付にいくらかの冒険者たちが戻ってきた。
ポータルから溢れだしたモンスターは、
既に討伐済み。
一部の冒険者たちは、
そのままポータルの向こうへ向かっていった。
情報やモンスターを持って戻ってきた冒険者たちは、
現金を受け取り、大喜びしている。
「怪我人は、こっちに!」
「情報なら左の列!
モンスターの買い取りは右の列!」
「消耗品、売るよ!
矢束! 投げナイフ! 砥石!」
「モンスターの解体受付はこっち!」
商業ギルドの職員と、
このために集まってくれた商人たちが笑顔で声を張り上げている。
「大儲け!
大儲けよ!
トシ・オー!
ありがとう!」
マリーはそう言って大笑いする。
俺には彼女の目が金貨に見えた。
「ポーションはこっちで渡します!」
「解毒薬、こっち!」
「医者はここだ!」
薬師ギルドも大忙しだ。
アニスは苦笑いする。
「いくら大儲けでも、
これを二回も三回もしたくないですよ」
始まったばかりなのに、
既にアニスはグロッキーだ。
掲示板には情報がどんどん書き込まれていく。
文字や絵で書かれたそれは、
昔見ていたゲームの攻略サイトに似ている。
「トシ・オー!
コボルトの倒し方で、いいのある?」
「なぁ、先生!
フライ・モノアイが出たぜ!
どうすりゃ良い?」
「センセ!
サラマンダーだ!
弱点教えて!」
俺も大忙しだ。
集まる情報を元に知恵を絞って、知識を開示する。
俺の周りはインクと紙の匂いと、
汗の臭いが混ざって最悪だ。
「忙しそうだな、学者先生」
そこに飛び込んできた声。
高いところから落ちてきたその声は、
カーフェイの声だった。
改めて見るとカーフェイは大きい。
身長二メートルありそうだ。
「カーフェイさん!
皆さんも、来てくれたんですか!?」
「ダンジョンが出てきたんだ!
町で待機してた冒険者たちも、もうすぐ来るぞ!」
カーフェイはそう言って俺の肩を叩く。
痛い。
痛いが、頼りになる。
「あのでかい掲示板が、攻略情報か?
まだ入ってすぐか。
ただでさえ出遅れたんだ!
急がないとな!」
カーフェイがそう言って笑う。
後ろにいる彼の仲間たちも笑う。
俺はカーフェイを見上げて言う。
「頼りにしています、カーフェイさん!」
「任せろ!
酔いざましの薬代は稼ぐつもりだぜ」
あぁ、忘れてた。
俺はカーフェイのすぐ脇にいた男を見た。
二日酔いの薬を渡した、確かにタードって名前の男。
タードは俺を見て言う。
「俺は一人でもここに来るつもりだった」
「そりゃ、ありがたい!
頼りにしてるぞ」
俺は心底そう思って、まっすぐタードに伝える。
タードは苦笑いして。
「胸ぐら掴んで、悪かった」
「気にすんな!
行ってこい!」
カーフェイ率いる『ミルヒィ』が、出陣した。
カーフェイは自分の武器である巨大なハルバードを片手で持ち、
掲げる。
ミルヒィのメンバーたちは、
それを合図に雄叫びをあげ、ダンジョンへ向かった。
それを見ていた冒険者たちも沸き上がる。
「俺たちも行くぞ!」
「稼ぎ時だ!」
「ミルヒィに先を越されるな!」
冒険者たちは体勢を立て直し、
何度もポータルに向かって駆けていく。
俺はそれを見送って、また俺の仕事に戻る。
「一階層目、マップ埋まります!」
商業ギルド職員がそう叫ぶ。
俺が思っていたより早いぞ。
今は始まって二時間くらいか。
夜はとっぷりふけて、丸い月が落ちていく。
この世界に時計がないのが悔やまれる。
「何層あるか、わからんが。
このペースなら、
五階層まで八時間もありゃ行けそうだな」
俺は手は止めずに呟く。
ダンジョンの階層数はトップシークレットらしく、
どのダンジョンも国家機密として明かさない。
でも、ダンジョン自体が巨大なものである。
俺はそんなにたくさん階層を作れそうにない、
と予想している。
「多くても五階層。
予想なら三階層くらいか」
ダンジョンマスターがダンジョンの管理を、
どうやっているのかわからない。
だが、モンスターの分布や罠、
侵入した冒険者たちを監視することまでダンジョンマスターの仕事だと仮定しよう。
それなら、十も二十も階層を管理できないと思っている。
なんと言っても、
ダンジョンマスターはワンオペレーションだ。
人間が一人でできることなんて、たかが知れている。
「ボス発見!
一階層のボス発見!
ミノタウロスだ!」
「ミノタウロスは、
牛と同じで角が頭から直接生えてる!
角の生え際を狙え!
うまく行けば、気を失う!
後、足だ!
足と腰を打撃武器で打て!
太ももの骨が折れたら、
自重で足腰の筋肉が潰れて、
二度と動けなくなる!
ただし!
ミノタウロスは視野がすごく広い!
死角は後頭部の真ん中だけだ!
囲んで攻めても対応される!
気を付けろ!」
俺は声を張り上げて、
ミノタウロスの弱点を伝える。
「カーフェイたちが、
まっすぐミノタウロスのところへ向かったそうだ!」
「やべぇ!
見に行こう!」
冒険者たちはダンジョンを出たり入ったり、
ひっきりなしだ。
その上、町に待機していた冒険者たちも続々とここへ来てくれる。
カーフェイが呼んでくれた上位ランクたちも、
ダンジョンへ向かった。
「お前ら!
攻略情報をダンジョンの中に残ってるやつらにも教えろ!
そうすりゃ、早く奥に行ける!
ダンジョンは奥ほど良いものがあるぞ!
宝箱だ!」
そう、ダンジョン資源の最たるもの。
宝箱。
その中には金銀財宝や、
人の手では作れない魔法道具などが入っている。
まさに、一攫千金のトレジャーだ。
冒険者たちは盛り上がり、
我先にとダンジョンへ向かった。
俺はその背中に向かって叫ぶ。
「ありがとよ!
お前ら、最高だぜ!」
心底、最高だと思う。
俺は感謝の言葉を叫びながら働く。




