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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第一章 未経験者歓迎!

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閑話 敵陣

●ダンジョン管理室●


 ダンジョンバトルが始まり、

入り口に配置していたモンスターたちが飛び出した。

サイクロプス十体、ゴブリンが三十体、

ジャイアントバット十体の五十体のモンスターたち。

モンスターの群れが相手なら、

ダンジョンなしのダンジョンマスターが対応できるはずがない。


 はずだった。


 ダンジョン管理室の機能で、

モンスターの視界をカメラのように閲覧できる。

飛び出したジャイアントバットが見たのは、

武装した軍団だった。


「なっ!

何? 何? 何?」


 クミは慌てて他のジャイアントバットの視界も確認する。

冒険者たちだ。

闇の神が、取るに足らない無法者の集まり、

と説明した者たちだ。


「……嘘でしょ」


 冒険者たちは、無駄なく、被害もなく、

効率的にモンスターたちを屠る。

 当然だった。

サイクロプスの倒し方を、

トシオから事前にレクチャーされているからだ。

 最大の弱点、サイクロプスの視界の狭さ。

素早く足元に潜り込めば気付かれず脚の筋を切れる。

もしくは、正面と左右の三方向から同時に攻撃されると、

サイクロプスは対応できなくなる。

 それを聞いた冒険者たちは、

さらに巧妙だった。

弓矢や魔法で正面から攻撃して引き付け、

左右から剣士たちが足を切付け倒し、

うなじや首を貫いてとどめをさす。


「サイクロプスって、

強いんじゃないの?」


 クミは思わず呟く。

サイクロプスはBランク冒険者が、

パーティーを組んで倒すくらい強敵だ。

しかし、それは正面からやり合う形の討伐方法。

 トシオの策略ならば、

下位ランク冒険者でも数さえ揃えばサイクロプスを討伐できる。

 冒険者は無法者の集まり。

確かにそう言う側面はある。

だが、『武力集団』だ。

それに、『軍師』がついた。

異世界、地球の日本に産まれ。

義務教育を受けた知力のある軍師だ。

 武力集団に軍師がつけば、

それは立派な『軍隊』だ。

策も連携もない、

本能だけで暴れるモンスター相手なら、

討伐ではなく駆除作業で済ませる。


「も、もう全滅する?

ヤバい!

もっと召還しなきゃ」


 クミはモンスターを追加して召還し、

ポータルへ向かわせた。

 闇の神は昨日、

クミに『これが最終試験』と言って今この場にいない。

このダンジョンバトルに勝てば、

クミはダンジョンマスターとして一人立ちする。

 出来損ないのダンジョンマスターを相手にして、

ゲームのチュートリアルのような『勝利が約束された戦い』。

闇の神はクミにそう説明して、帰っていった。


 そのはずだった。


 ダンジョンを持たず、

ただの生身のダンジョンマスターなんて敵ではない。

何の縁もゆかりもない異世界人が、

一週間で用意できるものなんてたかだか知れている。

闇の神からそう聞いていた。

クミもそう思っていた。

 しかし、冒険者たちはモンスターをあっさり退け、

クミのダンジョンになだれ込んだ。


「ダメ!

もっとモンスターを増やさないと!」


 クミは慌ててダンジョンに配置していたモンスターも、

新たに召還したモンスターもダンジョンの入り口に集める。

 しかし、ポータルの外にクミのモンスターはもういない。

そのため、ポータルの向こう側がどうなってるか、

彼女は確認できない。

その迂闊さに、クミは気付いていない。

 モンスターを敵のところへ集めることは悪くない手だ。

だが、間が悪い。

バトルが始まって一時間も経ってない。

冒険者たちも元気いっぱい。

装備も綺麗な状態なら、

モンスターは壁になり得ない。

集めたモンスターたちも、あっさり討伐される。

 モンスターをけしかけるなら、

もっとダンジョンの奥まで誘い込み、

冒険者たちを疲れさせてからが良かった。

分かれ道で冒険者たちを分断してからで良かった。

罠やなんかで装備が磨耗してからで良かった。

 クミもまだ挽回の余地はある。

しかし、自分の劣勢に気付けてなければ、

挽回の余地すらなくなる。

 一手目は、サトウ トシオの勝ちだった。

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