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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第七章 経験者大歓迎!

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第110話 首を洗って待っていろ!

 ビトメはとにかくトシ・オーへ駆け寄る。

ゼンフは突如現れた女性を警戒しつつ、

すり足でトシ・オーの近くへゆっくり向かう。

 女性が辺りを見回して、自分の手を見つめる。

まだ現状が理解できずに困惑しているようだ。

そこに、宙に浮くモニタが現れて女性の顔の前まできた。


「メグさん!

帰還石です!」


 『天空のダンジョン』のマスター、

コウジがモニタ越しに女性へそう叫ぶ。

女性の目の前には帰還石が現れて、

女性は戸惑いながらそれを受け取った。


「メグさん!

急いで!」


 別のモニタが現れて、そこからパティスも叫んだ。

女性が慌てて帰還石を割る。

女性が姿を消したのを確認して、

二枚のモニタが三人の方を向いた。


「予定外もあったが。

なんとか成功したな」

「予定外も!?

まだ、俺のダンジョンコアが!」

「何度も言わせるな。

お前らの勝手まで付き合えないし、

ケツをふく気にもならない」


 パティスはピシャリと言いきった。

コウジはバツの悪い顔で黙る。


「さて、もうお前らに用はない。

帰還石でも、なんでも使って消えろ」


 パティスはそう言いきって、画面が消える。

コウジの画面はトシ・オーへ近寄り、

睨み付けて言う。


「ダンジョンコアを返せ」


 トシ・オーは思わず胸元に手を当てた。

しかし、そこにはもう何もない。


「あぁ?

『返せ』、だぁ?

お前は何様のつもりだ?

……糞がぁ……!」


 トシ・オーの口から、

本人も意図せぬ言葉が飛び出した。

トシ・オーの顔が誰よりも驚いている。


 そして、それを聞いたコウジは青ざめた。


 トシ・オーの顔が笑った。

気の弱い好青年の控えめなものじゃない。

破顔、と言って差し支えない程の笑顔で笑うトシ・オー。


「ば……バカな……っ!

『火の神の加護』でも……、

『命の神の加護』は溶けないはず……!」


 恐れおののき、怯え震えるコウジ。

トシ・オーは足の痛みが吹き飛ぶほど、

驚き恐怖している。

しかし、彼の口は止まらない。


「……『これ』は一時的なもんだろう。

俺はまたすぐ消える。

でも、俺は出口を見つけたぞ。

『俺』はここからでる!

 帰るんだ!

俺の世界に! 俺の家に!」


 コウジは今にも倒れそうな顔で震えている。

トシ・オーも恐怖に震えてビトメを見た。

ビトメも何が起きているのか分からず、

困惑した顔をしている。


「見てんだろ?!

糞ども!

糞神ごとまとめて、てめぇら六柱も殺す!

必ず! 必ずだ!

首を洗って待っていろ!

 『神殺し』は!

人間の! 特権だ!」


 トシ・オーは大笑いし、

しばらくしてその口はやっと笑い終えた。

 トシ・オーは震える手で自分の口を押さえた。

足の傷なんてもうどうでもいい。

さっきスオラと話していたことが、

もう一度鎌首をもたげた。


 記憶を思い出した『お前』は、

今の『お前』かどうか分からねぇんだからよ。


 さっきの口から飛び出した言葉は。

正確に言えば、

あの言葉を紡いでトシ・オーの口から発した『もの』が。

失われたトシ・オーの記憶。

本来の『トシ・オー』。

 英雄、トシ・オー。

その人だと理解した。

 コウジが映し出されていた宙に浮くモニタも、

いつの間にか消えている。

ダンジョン自体が、ただの洞穴のような雰囲気になっていた。

 しかし、誰も言葉を発しない。

三人とも、これを勝利と呼べる気がしないからだ。

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