第108話 ば、爆発します!
トシ・オーは叫ぶ。
「ビトメさん!
加護を使わないでください!
ダンジョンマスターたちの狙いはそれです!」
その声を掻き消すように轟音が鳴り響く。
なにか大きく重いものが地面に落ちたような音だ。
そして、何もない空中から無数ゴーレムたちがわきあがり、
地面に落ちてきた。
さっきと同じ轟音だ。
スオラが気付いて叫ぶ。
「ステルスゴーレムがいる!」
見えないゴーレムたちは空中に現れて、
地面に落ちた音だけが聞こえていたらしい。
「皆さん、見えないゴーレムもいます!
この数は危険です!
帰還石を割ってください!
聖女さん!
私をおろして、
帰還石をビトメさんに渡しに行ってください!」
『雷光の聖女』は、
地面にいたゼンフをみた。
「おとーと!
トッシーを任せた!」
「うむ!
聖女殿の方が年下ですけど!?」
そうツッコミつつ、
上から聖女に投げられたトシ・オーをゼンフはキャッチした。
そして、聖女が飛び出そうとした瞬間、
『洞窟内に雨が降りだした』。
「なっ!?」
ゼンフはとっさに手を伸ばしてトシ・オーをかばう。
雨粒が触れた手が赤く晴れ上がる。
「っ!?
熱湯だ!」
ゼンフは魔法で壁を立てて、
その壁の側面にも壁を立ててひさしにして雨を遮る。
他のなかまたちは、もう帰還石で帰還してしまった。
残っているのは、三人だけ。
「っうわぁっ!?」
熱湯の雨。
しかも、猛烈な雨が降る。
全速力を出した『雷光の聖女』も、
壁のように思える雨粒の塊を避けきれない。
洞穴の入り口まで逃げた。
「ダメ!
近づけない!」
聖女すら、手を上げた。
そして、ゼンフも。
「熱気と雨で緩んだ地面がっ……」
降り落ちた雨も熱気と湯気を巻き上げて、
あっという間に洞穴がサウナに変わる。
追い詰められる。
余りにもあっけなく。
トシ・オーが胸元の宝石に手を当てた。
スオラは笑っている。
「魔石の粉を撒け」
「水が!」
「良いから!」
トシ・オーは魔法鞄から、魔石のタルを一つ取り出した。
そして、蓋を開けて辺りへ撒き散らす。
熱湯に流れていく魔石。
すると、地面に溜まっていた水溜まりが突然沸騰し始める。
スオラは続けて指示する。
「ゼンフに障壁みたいなの魔法で張れないか聞け!」
「ゼンフさん、テクノマギを装着するときの、
障壁みたいなの、張れますか!?」
「うむ!」
ゼンフはトシ・オーと自分を包むバリアを張る。
「耳をふさいで、口を開けろ」
「……!
ば、爆発します!」
トシ・オーとゼンフが耳をふさいだ途端、
洞窟内にぼっ、と言う爆音が響いて衝撃が走る。
洞穴が大きくても、
出口が一つしかない構造上貯まった水蒸気が逃げられない。
そこに、撒き散らされた『火の魔物の魔石』。
熱湯に触れて反応してさらに熱を発した粉が、
水蒸気をさらに発生させる。
そして、一気に貯まった水蒸気が出口に殺到して、
爆発を起こした。
その爆発の衝撃より、
出口へ向かって吹き出る大量の水蒸気とその勢いが凄まじい。
ゴーレムたちはぶつかり合いながら出口まで吹き飛ばされていく。
さながら、
水洗便所を流したときの様にゴーレムたちは飛んでいく。
「び、ビトメさん!?」
「大丈夫だ。
ダンジョンマスターどもが助けてる」
衝撃と突風が収まり、
洞穴ないが見えるようになってきた。
すると、ビトメのいた檻は中のビトメと共に無事だった。
「今だ、走れ!」
トシ・オーはビトメへ向かって走り出した。
雨雲も吹き飛んでいたので、
洞穴内は熱いが雨は止んだ。
ゼンフはトシ・オーを追って走る。
所々踏みとどまったゴーレムが残っていて、
トシ・オーたちを襲うがゼンフが蹴散らしていく。
「んんっ!
トシ・オー様、ビトメ様をお任せした!」
ゼンフがゴーレムを数台引き付け、
道を作った。
トシ・オーは走り続ける。
もう少しだ。
トシ・オーが帰還石を取り出し、
立ち止まらずビトメへ向かって投げるモーションに入った。
その瞬間。
パァン。
銃声。
走りながら前のめりに倒れるトシ・オー。
そして、ビトメの絶叫。




