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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第七章 経験者大歓迎!

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第105話 行くに決まってます

 先に『静ひつのダンジョン』に入っていたオスマンサスの調査団は、

まだ戻ってきていない。

トシ・オーたちは彼らを探して、情報を集めることにした。

しかし。


「魔物もだが、生き物の気配すらない」


 ゼンフは警戒を強めながらそう呟いた。

彼の言う通り、静ひつを保つダンジョン。

自らの足音すらろくに響かない。

 深い深い闇をたたえ、

先もろくに見えない洞窟。

テクノマギでできたライトを照らしても、

道の先まで見えない。

死角が多いため、

先を急ぎたいが歩を進めるのを躊躇ってしまう。

 今、魔物に教われたらひとたまりもない。

しかし、魔物すら見付からない。


「先に入っていた調査団は、

この辺りを通っていないかもしれません」


 オスマンサス兵の一人が手を上げてそう発言した。


「なんで?」

「『雷光の聖女様』、

ここを見てください」


 彼の指差す先は踏み均された獣道。

その土はうっすら霜が立ち、凍っている。


「先に誰かが同じ道を通ったら、このような霜はないはずです」

「……確かに。

先の調査団が入ったのは、

二つのダンジョン襲撃とほぼ同じ時刻なら、

三時間くらい前だろ。

寒いとはいえ、

三時間でここまで立派な霜柱は立たんぞ」


 スオラがトシ・オーにそうささやいた。

ゼンフは戦慄しながら呟いた。


「……ここまで一本道だった。

違う道なんてなかったぞ?」


 トシ・オーは呟く。


「ダンジョンの道をを作り替えてる……?」


 それを聞いた周囲の者たちは警戒をより強める。


「魔物がいないのは、

洞窟を作り替えてるからで。

それが終わったら、

魔物たちを戻すのかもしれません」

「獣の檻の掃除、みたいな感じだね。

じゃぁ、時間が経つと魔物たち、戻ってくるの?」


 聖女がトシ・オーへ質問した。

トシ・オーは胸元に手を当てて話し出す。


「それより恐ろしいのは、

今、ここが、『この道』が作り替えられたら、です。

絶対にはぐれてしまう」


 トシ・オーがそう言いきる前に、

地面が揺れ出した。


「集まれ!

固まれ!」


 ゼンフが叫ぶ。

しかし、地面から天井まで物差しで線を引くように光が走り、

そこが割れる。

その光で区切られた区画が、がしゃん、

とまるごと九十度回転した。

 正立方体に区切られて回転した側の道にいた人たちは、

いきなり立っていた地面が壁になって闇へ落ちていく。

それを見た聖女は宙に浮いて、

トシ・オーの身体を抱えた。

ゼンフは残った異端審問官立ちに号令をだし、

各々土の魔法で腰くらいの高さの壁をたくさん作る。

いろんな向きで壁を作って互いの足場を確保した。

オスマンサス兵たちは、近くの地面にアンカーを打って、

カラビナとロープで身体をアンカーに繋いだ。

それと同時に近くの仲間の身体にもカラビナとロープを繋ぐ。

 また、地面に光が走った。

さっきよりトシ・オー寄りの位置に切れ目が現れた。


「捕まれ!」


 九十度回転し、また九十度回る。

地面だったものは天井に変わり、

何本かアンカーが抜けた。

オスマンサス兵たちは、

互いを繋いだロープを持って落ちた仲間を助けるが。

また別の位置に光が走り、

がしゃり、と回転した。

 今度は回転する面と面の間、

切れ目に彼らのロープが挟まった。


「ロープを切れぇ!」


 ロッククライミングの様に壁にしがみついていたゼンフが叫んだ。

オスマンサス兵はとっさにロープを切ったが、

時既に遅く。

回転と同時にロープが隙間に巻き込まれ、

巻き取られる。

兵士の一人の身体が引き寄せられ、

隙間に挟まって一瞬ですり潰された。

彼が悲鳴を上げる暇もなかった。


「トシ・オー様から離れるな!」


 ゼンフはそう叫んで、

必死に壁に掴まりトシ・オーの方へ移動する。

異端審問官たちは、その腕力をフルに活かしてそれに続く。

落ちてきたオスマンサス兵を、

片手で壁にしがみついたま受け取る剛の者もいる。

異端審問官たちがたくましく、頼りになる。

 同様の現象が続けて数度起き、

床が止まって落ち着いた頃には、

トシ・オーの周囲に残ったメンバーはかなり少なくなっていた。


「点呼!」


 ゼンフがそう叫んだ。

トシ・オーを下ろして、聖女もゼンフの近くへ飛んでいく。


「十六人しかいないよ!」

「聖女様!

ご自身を数に入れてください!

十七名です!」


 点呼を取ったが、やはり十七名しかいない。

後の仲間たちとははぐれたようだ。

スオラは冷静に考察する。


「オスマンサス兵は四名。

異端審問官は十名。

 異端審問官は生きてそうだが、

オスマンサス兵の一人は確実に死亡だった。

後の奴らも、無事とは思えんな」

「当初の予定では、

何かあったら帰還石で戻ることになってます。

彼らも生きていれば、オスマンサスに戻ってるはずです」


 トシ・オーはスオラの言葉を払拭するように言う。


「私らはどーする?」


 聖女はトシ・オーにたずねた。

トシ・オーはスオラに手を当てる。


「行くに決まってんだろ?」

「行くに決まってます」

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