第104話 ここからのプランは?
『静ひつのダンジョン』。
防寒具で身を包んだトシ・オーとゼンフ。
自身専用のテクノマギを装着している『雷光の聖女』。
そして、オスマンサス軍二十人と異端審問官三十人。
合計五十三名が、ダンジョンの前で装備の確認をしていた。
「確認ができしだい、アタックします。
中の魔物が全力で邪魔をしにくるはずなので、
気をつけてください」
トシ・オーはそう言って自分の魔法鞄を確認しだす。
それを見た全員が自分の装備を確認する。
錆びたスコップ。オスマンサスへの帰還石が三つ。
食料が一ヶ月分。綺麗な水が大きなタルで四つ。
火の魔物の魔石の粉がタル二つ。
そして、刀身に溝が掘られた大きめのナイフが一振り。
「毒物を仕込むナイフですね」
「おぉ、分かるか?
溝が細く深く刻まれてて、
刃先は突くため尖ってる。
刃は付いてるけどあんまり切れ味はない。
ナイフと言うより、
矢じりみたいな感じだ」
ナイフを握ったトシ・オー。
それを見てスオラが解説し笑う。
「毒の代わりに、魔物の魔石の粉だ。
水でちょっと刀身を湿らせて、
粉が溝に張り付くようにしとけ。
それだけで冷寒地の魔物には猛毒だろう」
トシ・オーはスオラの指示に従い、
ナイフを少し濡らしたが、その途端に水気が凍る。
「凍りました……」
「洞窟入ってからにしようか」
『静ひつのダンジョン』は洞窟型。
中は暗いので、照明器具は手放せない。
これは『白の教会』で用意してもらったライトを皆で装備している。
頭を守るヘルメットに巻いたヘッドライトと、
両肩から下げて胸の辺りに付いたライトで身体の前を照らす、
ハーネスライトを取り付けた。
「皆ー!
エリクサー配るよー!」
そう言って、『雷光の聖女』は皆に薬の入った瓶を渡して回る。
「オスマンサスが襲われたので、
うちの仲間たちがここにこれないから。
代わりに、エリクサーを皆分だしてくれるって!」
『白の教会』の最高戦力である聖女をだしてなお、
足りないと持たせてくれたエリクサー。
これは、生きてさえいればどんなケガや病。
毒、麻痺、呪いなどの異常状態も全て回復させる薬だ。
欠損した身体の部位すら再構築するほどの回復力を持つ。
ダンジョンの宝箱からしか手に入らない希少な薬だ。
それを、五十三本も出した。
時価で取引される薬だ。
『白の教会』の蓄えていたエリクサーを、
ほとんど全部渡した状態だ。
オスマンサス兵と異端審問官たちは、
エリクサーを受け取りながらも。
皆『白の教会』の入れ込み度合いに震えている。
「皆さん、行きましょう」
五十三人は隊列を組み、洞窟へ足を踏み入れた。
外よりは少し暖かいが、極寒と言える寒さだ。
足元はむき出しの岩。
冒険者や国の調査団が踏み均した道のようなものはあるが、
そこ以外はまともに歩くことも難しいほどの荒れようだ。
「魔物に気をつけて!
トシ・オー様をお守りしつつ、
進みましょう!」
戦闘を行くゼンフはそう叫んだ。
聖女はしんがりを勤める。
トシ・オーは隊列の真ん中あたりにいた。
しばらく進むが。
「魔物……がいない?」
進めど進めど、なにもいない。
ゼンフが冷や汗を流して呟いた。
「いくらなんでも、魔物が一匹もいないなんて……」
スオラはあっけらかんと言いはなった。
「あのシェイプシフターの身体の一部にされてんだろ。
万だの億だの何て数の魔物をすぐさま用意するなんて、
ダンジョンマスターでも難しいはずだからな」
トシ・オーは小声で懐の宝石に話しかけた。
「では、スオラ。
ここからのプランは?」
スオラは鼻で笑う。
「進めるだけ進め。
ビトメがどんな状況なのかで、
プランは変わる。
映像にあったような檻の中なら、
壊して逃げりゃいいがよ。
ダンジョンマスターどもは必死なんだぜ。
そんな簡単なわけねぇだろうよ」
スオラの言葉に気を引き締めるトシ・オー。




