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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第七章 経験者大歓迎!

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第102話 帰還石を!

 冒険者たちが自然に二手に分かれていく。

テクノマギを装着しているものたちは、

ヒトガタの魔物に飛んで向かっていく。

テクノマギのないものたちは、

地上に隠れているゴーレムを探し始める。


「ヒトガタの魔物が空から降りなかったのは、

視線誘導だな。

地上のゴーレムを隠すためだ。

 シェイプシフターなら、

無機物に化けてると移動できない。

移動のために人に化けることもできるが、

そこを冒険者に見られてヤられる。

 ゴーレムに『ステルス迷彩』か。

それなら簡単に気付かれない。

移動もできるし。

簡単に破壊されない。

 ただ、トシ・オーがくるくる回ってたから、

ゴーレムが撮影に最高率の位置に移動して待ってた。

だから、さっきのスコップはゴーレムに当たった」


 スオラが解説するが、

ヒトガタに追われて走り続けるトシ・オーにはいまいち聞き取れてない。


「そんでもって、

コントローラーは『人』が持ってるな。

ダンジョンマスターだ。

ダンジョンコアを取り返しに来た。

 それなら、

次は何するか分かりやすい。

トシ・オー、次右だ」

「は、初めて違う道……!」


 トシ・オーはふらつきながらも動き続ける。

スオラには、策がある。

それは分かるので、

トシ・オーはスオラに従うしかない。

トシ・オーは錆びたスコップを持って走り続ける。


 その目的地に気付いたヒトガタが、

目に見えて慌てだす。


 ヒトガタは冒険者たちを振り切り中へ浮き上がる。

『雷光の聖女』とゼンフをいなして、

バニレとタードから距離を取り、

トシ・オーへ向かって行く。

ものすごい速さだ。

テクノマギが追い付けてない。

 『武人のダンジョン』のマスターの『成れの果て』。

ダンジョンマスターたちの『トラウマ』。

そこに到着される前に、

ヒトガタはトシ・オーの行く手を遮るように降下した。


「そこまでだ!

こちらには人質がいる!」


 ヒトガタから、そんな声が聞こえた。

ヒトガタが話している感じではない。

ヒトガタを通して誰かが話している感じがする。


「ビトメがどうなってもいいのか!?」


 周囲の冒険者たちも、

聖女もゼンフもピタリと動きを止めた。

トシ・オーも立ち止まり、

息も絶え絶えでそれを聞いている。


「ダンジョンコアを二つ、返せ!」


 トシ・オーは、何とかかんとか声をだした。


「びと……ビトメさん……っ!

っは!

……無事っ!

ですかっ!?」


 ヒトガタの向こうの人が少しためらうのが分かる。

しかし、ヒトガタの脇の空中に映像が写し出される。

そこには、檻に入れられ横たわるビトメの姿が見えた。

ビトメの鼻息で檻の脇に咲いた青い花が揺れている。

彼女は生きているようだ。


「無事だが、

ダンジョンコアを返さなければ殺す……っ!?」


 ヒトガタだけじゃなく、周囲の皆が異常に気付く。

トシ・オーの顔が急に脱力し、目の焦点があわなくなった。

死人のような顔で口をパクパク動かしている。

さっきまでの必死な顔から、突然の変化に誰しもが戸惑う。

 そして、トシ・オーは口の中で転がすように言う。


「……幻視露草。

多年生の球根植物……。

冷涼な高山帯の谷間や洞窟など、

日照の乏しい場所に自生する。

 ……草丈二〇~三〇センチ。

茎は太く直立し、上部に五~六花を総状につける……。

……花は青色で、葉は根生し、

地表を這うように長く伸びる。

 ……極めて弱い光の下でも光合成を行う性質をもち、

月光程度の光量でも光合成活性を示す。

……一方、強光への耐性をほとんどもたず、

長時間直射日光にさらされると葉が傷み、

やがて株全体が枯死する。

 生育には低温環境を必要とし、

とくに花芽の形成には一定期間の低温と『弱光環境』が不可欠である……。

 このため『開花個体が確認される地域は、

高緯度の寒冷地や高山の深い谷、

洞窟の開口部付近などに限られる』。

『生育条件が極めて限定される』ため、

自生地は少なく、開花個体はさらに稀である……」


 唐突に図鑑の一ページのような説明をしたトシ・オー。

そして、『それ』に気付いた途端、彼の顔に生気が戻り、

あらんかぎりの大声で叫んだ。


「帰還石を!

オスマンサス行きの帰還石をください!」


 それを聞いたヒトガタが、

とっさにトシ・オーを攻撃した。


「ダメ!」


 『雷光の聖女』がヒトガタの一撃を受け止めた。


「はい!」


 ゼンフが帰還石をトシ・オーに投げ渡した。

トシ・オーはそれを受け取って叫ぶ。


「ジョージ様に、

オスマンサスへ戻るよう伝えてください!」


 そう言い残して、

トシ・オーは帰還石を割って消える。

ヒトガタが慌てて映像を消して飛び上がった。

 冒険者たちはそれを許さない。

壁のように蜂のように、

テクノマギを着た者がヒトガタに向かって行く。


「邪魔だぁ!」


 ヒトガタが身体中から、

いろんな魔物のパーツを出して暴れだした。


「行かせねぇよ!」


 バニレと冒険者たちは、笑う。

あの男と同じ顔で笑う。

それを見たヒトガタの向こう側が怯んだ。

 あの男はここにいない。

あの男はいないが、

あの男の影響力はまだここにある。


「なん!

なんなんだよ、お前らぁ!」


 形勢逆転。

ヒトガタが押され始めた。

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