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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第七章 経験者大歓迎!

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第101話 同じところ回ってるだけでは?!

 冒険者たちの猛攻と、『雷光の聖女』とゼンフの攻撃。

それらを受けつつも、ヒトガタの魔物はトシ・オーを追う。

ヒトガタはとうとう視線だけでなく、

その身体を動かしてトシ・オーに迫る。

ヒトガタはドラゴンのような翼を羽ばたかせ、

トシ・オーへ向かっていく。


「来たぞー。

次、左に曲がれ」

「さっきから、同じところ回ってるだけでは?!」


 文句は言いつつ、スオラのいうとおりトシ・オーは走る。


「走れー」

「やる気のない応援してる間にっ!

……プランを!

……くださいよっ!」


 息も絶え絶えで走り続けるトシ・オー。


「……おー。分かった。

アイツ、同じ行動パターンしかしてねぇ。

 あれは、『スイッチ』だ。

ゲームのコントローラーみたいに特定の行動をする指示を、

事前に決めて指示が出たらそれを実行する。

 慣れないゲームで、

何もないところでジャンプするやつとか。

そこじゃないってところで攻撃するやつに、

似た動きが何回かあった。

 どっかで誰かが、

アイツを見てコントローラーで操作してやがる」


 スオラが、笑った。

トシ・オーは懐の中の宝石が笑ったのが分かった。

しかし、トシ・オーにはスオラが何を言ってるのか分からない。


「どこから見てる?

遠くから見るか?

あんな、格ゲーみたいな動きは、

近くで見てなきゃ無理だ。

 どうやって見てる?

他の魔物を使って見るにしても、

魔物の姿は見当たらねぇ。

 ここの冒険者は実力者が多い。

他のシェイプシフターが壁だのなんだのに化けて見てたとしても、

絶対気付かれて仕留められる」


 スオラがプランをたてはじめた。


「格ゲーしてて、モニタが消えたら?

ぶちギレるわな。

なら、視界は確保しなきゃ。

 あの魔物の近くで、視界を確保し、

見つからない。

 それはそうと。

アイツ、なんで降りてこない?

今もこっちに飛んできてるな。

あー、次左曲がれ」


 トシ・オーは文句が言いたいが、

息があがってもう叫べない。

必死にスオラの指示通り走る。


「お。

近くに来たら降りてきたぜ。

立ち止まって振り返れ」

「はぁ!?」


 トシ・オーは立ち止まって振り返る。

すると、ヒトガタがこちらに向かってゆっくり降りてきていた。


「スコップを魔法鞄から取り出せ」


 トシ・オーは言われた通りスコップを取り出した。


「地面へ思いきり振り下ろせ」


 トシ・オーはスオラの言う通りにする。

何もない目の前に向かって、錆びたスコップを振り下ろした。


 ごぉん!


 見えない何かにスコップが当たり、

跳ね返る。

トシ・オーは驚いた顔で見えないそれを見た。


「ここにいるぞ。

スコップで殴れ」


 ヒトガタの動きが止まった。

トシ・オーはもう一度さっきの場所をスコップで殴る。

次は手応えがちゃんと来ない。

掠ったみたいだ。


「移動してるな?

でも、もう遅い」


 スオラがそう言ったが、

トシ・オーには何のことだかさっぱり分からない。


「スオラ、ど、どういう……」

「あぶねぇ!」


 バニレが横から飛び込んでトシ・オーを押し倒した。

その後を巨大な爪が通り過ぎる。

いつの間にかヒトガタが目の前に来ていた。


「トシ・オー! 立て! 走れ!

 皆! 見えないけど地面になんかある!」

「俺も見たぜ!

先生が殴ってた!」

「捉えた!」


 周囲の冒険者たちが見えない何かを追い出す。

すると、ヒトガタはトシ・オーから離れて冒険者たちを襲いだす。


「こっちくる!?」

「こっちを狙われたくないのか?」

「皆! 見えない何かがコイツの本体らしいぞ!

探せぇー!」


 冒険者たちはヒトガタを避けて大声を張り上げた。

遠くにいた冒険者たちも『見えない何か』を探し始める。

魔法が使える者は水の魔法や風の魔法で、

何もないところを攻撃してみたり。

魔法が使えない者は地面の砂を握って撒いたりして、

的確に見えないものを探し始めた。


「いたぞ!」

「こっちもだ!」


 街のあちこちにいたようだ。


「シェイプシフターか!?」

「違う!

ゴーレムだ!

周囲の風景を身体の表面に映して、

見えないようにしてる!」

「魔石の粉を撒け!」


 さすが、魔物狩りのプロ。

手際がよい。

ヒトガタが慌ててトシ・オーを追い始めた。


「させない!」


 聖女がその前に立ちはだかる。

無数の槍を地面に突き立て、

それらを足場にしたり、

引き抜いて武器にしたりしてヒトガタに迫る。

 ヒトガタはそれらを回避しつつ、

顔はトシ・オーの方を向いている。


「私を忘れるな!」


 いつの間にかヒトガタの足元にいたゼンフが、

ヒトガタの膝に向けて拳を放った。

濡れた雑巾を壁に打ちつけるような音がして、

ヒトガタがバランスを崩し膝を地面についた。


「おらぁ!」


 すかさずバニレが剣を振り下ろす。

しかし、身体から別の魔物の腕が延びて、

バニレの剣を受け止めた。


「あは!」


 聖女が槍を突く。

光の速さで突き出された鋼が白熱し、

熱波と共にヒトガタを襲う。

ヒトガタはドラゴンの首を出して角で受け止めた。


「ぬん!」


 ゼンフがもう一撃拳を放つ。

植物の魔物の一部を出して、

拳を包むように受け止めたヒトガタ。


「はぁっ!」


 いつの間にかヒトガタ上にいたタードが剣を振り下ろした。

テクノマギで強化した身体能力で放たれた剣は、

ヒトガタから飛び出したマーマンの腕を切り裂いて、

ヒトガタの身体に切り込んだ。

 ヒトガタが悲鳴のような、

電動サンダーのような音を放って四人を吹き飛ばす。


「どうだ!?」

「傷ができた!」

「身体から飛び出した所はろくなダメージじゃないが、

人の形のどこかに攻撃を当てられれば、通るぞ!」


 バニレがそう叫んだのを皆が聞いて笑う。

勝ち目が広がった。


「見えないゴーレムをつぶすやつと、

このヒトガタの魔物を止めるやつで分かれろ!」

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