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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第七章 経験者大歓迎!

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第100話 武器を!

「あれに直接触れると死にます!

遠距離攻撃か、武器を!

剣より槍とか!」


 トシ・オーはそう叫んで走り出した。

あれ、とは宙に浮いてるヒトガタの魔物のことだ。

 トシ・オーの動きを察したのか、

ヒトガタが動き出した。

トシ・オーの方を向いたヒトガタ。


「わかった!」


 『雷光の聖女』はどこかから持ってきたらしい槍を携えて、

ヒトガタの真上に現れた。

光の速さで振り下ろされる槍。


「は?!」


 ヒトガタはそれを易々と受け止めた。

周囲に爆音と衝撃波だけが広がる。


「ほいさ!」


 ゼンフが落ちていた石をヒトガタに投げた。

ヒトガタの腕が鞭のようにしなって、石を木っ端微塵に砕く。

その隙に聖女がヒトガタから離れ、

地面を踏みしめて全力で槍を投てきする。

ソニックブームが広がって、

聖女の近くの掘っ建て小屋が吹き飛ぶ。

 しかし、ヒトガタはそれをなんなく回避した。


「あれ、反則だわ。

何体の魔物が同時に動いてる?

万? 億?

 それより何より、

それを統括してるのは『何』だ?

人格的な、OS的な何かがそれらを全部理解して、

その上でコントロールできてないと、

あんな風に戦えない。

 次の角を左に曲がれ」


 スオラの言うことがいまいち理解できないが、

トシ・オーはとにかく走る。


「ヤロウども!

かかれぇ!」


 街のあちこちから一斉に矢が放たれた。

回避不能の面の攻撃。

しかし、ヒトガタは背中からドラゴンのような翼を生やして、

身体から熱波を放つ。

ヒトガタの身体に触れる前に燃え尽きる矢の雨。


「シェイプシフターが、

いろんな魔物を生きたまま『つぎはぎ』してます!

あれは、一匹の魔物じゃありません!

数万、数億の魔物群れです!」


 トシ・オーは叫ぶ。

それを聞いた周囲の人は口々にそれを回りに伝え、

全部が戦術を変えた。


「魔物の氾濫が凝縮された魔物だ!」

「やるぞ!」


 街の冒険者たちの雰囲気が一変する。

そして、皆お互いに距離を取って叫んだ。


「『アタッチ』!」


 冒険者の半数がそう叫ぶ。

すると、彼らの周囲にシールドが展開。

そして、瞬間移動してきたテクノマギの鎧が彼らを包み、

『変身』する。

 その中に、タードもいて。

間近で見ているゼンフは目を白黒させている。


「『白の教会』に出資してるのは、

オスマンサスだけじゃない。

商業ギルドも、薬師ギルドも出資してるの」

「えぇ。

三年前の魔物の氾濫もありましたから。

最新の武器は、大歓迎です」


 マリーとアニスは自慢げに笑う。


「やっちまぇ!」


 いつもの鎧で剣を携えたバニレの一声で、

冒険者たちは全力を発揮する。

大地が揺れるほどの鬨の声。

 そして、テクノマギを着た冒険者たちは、

白の教会のメンバーより、はるかに戦いが上手い。

目配せも号令もないのに、

攻撃や防御、誘導がスイッチする。

 皆が皆、一つのパーティではない。

しかし、お互いにお互いを知っている動きをする。

さながら、テクノマギを着たスターリングの群れ。

 マーマレーション。

リーダーのいない、巨大な鳥の群れ。

それは本来、外敵から身を守るための行動だ。

それが、外敵を屠るための行動になっている。

集まって防御や回避し、散って波状攻撃を与える。

陸上で群れ、海中で散るペンギンのようだ。

 しかも、個々が弱いために集まるのではない。

個々の能力もあるのに集まり戦う。

それは、軍団とも言えない。

群れでありながら『個』。

冒険者たちは、『生きること』に特化した人々だ。

だからこそ、その場その場の『最適解』を見つけだして、

そこへ全力で賭け込む。

その結果がこの連携になる。

 そこに、テクノマギを着ていない冒険者たちも加勢している。

地上から魔法や弓矢、スリングによる投石。

中には、トシ・オーの使っていたスリングショットを見よう見まねで再現してしまった猛者もいて。

全員がもれなく、戦いに参加している。

 さすがのヒトガタも押され始めるが、

負けていない。

身体のあちこちから、翼や手や口を生やして応戦する。


「火ぃ吹いてるぞ!」

「ドラゴン混ざってるわ!

水! 水!」

「ありゃ、マーマンもだ!

銃持ってこい!」


 本物の冒険者にこだわりなんてない。

生きるためなら、何でも使うのが彼らだ。

そして、銃でも剣でも、

何でも使えるくらい巧みな者たちだ。


「まず落ちてこねぇ!」

「でも、ずっと何か見てる!」


 さすがの観察眼だ。

冒険者たちはヒトガタがトシ・オーを目で追い続けてるのに気付き出した。


「追われてるヤツがいる!」

「止めろ!

畳み掛けて止めろ!」

「なんか懐かしいぞ、おい!」


 冒険者たちは笑ってその視線の先を目指す。

そこには、もちろん。


「マジでか!?」

「うわっ!

先生じゃん!?」

「わぁ!

センセがいる!」


 その言葉で、街の士気が最高を越えた。

必死に走るトシ・オーは、

フードが脱げて顔が露出していることに気がついてない。

しかし、冒険者たちは大笑いして。


「先生を守れ!

あの人、きっと、なんかやるぞ!

つーか、なんかやったんだろ!?」

「飛べ!

回り込んで飛べ!

センセーの前に出るんだ!」

「仕留めろ!

ドラゴンだのフェンリルだのまで混ざってやがる!

ありゃ、きっと死体が良い金になる!」


 冒険者たちの目に、勝ち目が見えた。

祭りが始まってしまった。

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