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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第一章 未経験者歓迎!

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第11話 『すごい儲け話』を教えよう

 俺は一人、樹海を歩く。

昨日の罠を見に行くために。

 視界の角のタイマーは相変わらず止まらない。

残り六日と十時間。

木の影の感じからすると、今は昼前くらい。

この世界に時計がないので確定はできないが、

バトル開始は夜遅くらしい。


「さすがにまだアイツらがあの場にいるとは思えないが。

何か残ってねぇかな。

サイクロプスの死体とか」


 念入りに警戒し、俺は昨日の罠まで来た。

案の定、罠は空だ。

パーカーの女か闇の神か、

どちらかがサイクロプスの死体を回収したか?


「……落とし穴は踏み抜かれたまま。

穴の周りまで飛び散るくらいの大量出血、

底の杭が何本も折れてる。

 人が落ちたとしても、こうならないのは確実。

さてさて、どうしたものか?」


 サイクロプスの亡骸がまだあれば、

身体のどこかを切り取って持って帰ればよかった。

 しかし、どこにも何もない。

亡骸が引きずられた跡もない。

獣が亡骸を食い散らかした形跡もない。


「はぁ……。

マズいなぁ」


 俺は思わず呟いた。

そこに、誰かが近づいてくる音がする。

鎧の擦れる音なので、冒険者だろう。

人数は四人か五人。


「トシ・オー!

どこだ!?

トシ・オー!」


 バニレの声だ。

他にもバニレのパーティーメンバーの声もする。

俺を探してるようだ。


「ここだー!」


 俺は無視するのも不自然なので、

呼び声に応える。


「あっちか!」


 バニレを先頭に四人が駆け寄ってきた。

片手剣とシールドを携えたバニレ。

タワーシールドを背負った巨漢、レート。

この二人が前衛。

 ショートボウを手にし、

腰にマチェットナイフを下げている女性が、

スカウトのロベリー。

魔法を使うための触媒として長杖を持っている女性が、

魔法使いのリーンテ。

この二人は中、後衛だ。


「おい!

トシ・オー!

冒険者ギルドでの話聞いたぞ!

 ……お前、それ!」


 バニレはそう言って落とし穴を見た。

ロベリーが落とし穴のそばまで来て、

しゃがんで穴を覗き込む。


「……人より大きい獲物が落ちた。

血溜まりからして、失血死。

でも、何も残ってない。

肉片も、ない」

「あぁ。

俺が昨日仕掛けた罠だ。

サイクロプスの可能性が高いな」


 ロベリーに俺がそう言う。

ロベリーは苦笑いして俺を褒める。


「学者センセは、罠の作りがうまい」

「バニレよりは上手いと自負してる」

「やめて。

俺は手先が不器用なの」


 バニレが苦い顔で言った。

リーンテが心配そうに俺に聞く。


「ねぇ、トシ・オー。

モンスターの氾濫って、

本当に起きるの?」

「高確率で氾濫する。

しかも、ダンジョンが発生源だ。

そして、ダンジョンは町に近づいてる」

「移動型のダンジョン、か」


 バニレは頭を抱えた。

俺はバニレたちに向き直る。


「トシ・オー。

どうすんだ?

町を守るには、どうすりゃいい?」


 心底不安そうな顔でバニレが俺に問いかける。

俺は俺自身が思っているより、

周りから信用されてるのか?


「バニレ、お前、

俺に聞いてくれるのか?」

「当たり前だ!

この町でお前ほどダンジョンに精通してるやつは他にいねぇって!」


 俺は思わず笑う。

いや、待て。

精通してる?


「……なるほど。

そうか」


 俺の頭の中に、

足りなかったピースが埋まった。

突然考え込む俺を見て、

バニレたちが心配そうにしている。

 しかし、俺は笑ってバニレに言った。


「……バニレ、お前、最高」

「え!?

トシ・オーが俺を褒めた!?

槍でも降るのか!?」

「言い過ぎだ、ぶきっちょ」


 俺はバニレを小突く。

バニレは笑って俺に謝る。


「バニレ、皆。

ちょっと協力してくれ。

 報酬は金で渡せないが。

代わりに『すごい儲け話』を教えよう」

「わぁ。

突然胡散臭い」


 バニレはおちゃらけて見せる。

しかし、俺は大マジだ。


「マジでだ。

何たって、

楽にダンジョンアタックする方法だ!」


 バニレたちは俺を見て目を見開いた。

俺は追い打ちをかける。


「しかも、参加する冒険者が増えるほど、

分け前が増える」

「いーやいやいや!

そりゃさすがに……。

な、い、よな?」


 バニレは仲間たちと顔を見合わせた。


「どうしたらいいって?

任せろ!

俺が今までのダンジョン攻略をぶち壊してやる!」


 俺は笑う。

いくらか賭けだが、

やるだけやってやろう。

 バニレたちは自信満々の俺を見て苦笑いした。


「ぐ、具体的に、どうするんだ?」


 耐えかねたレートが俺に訪ねてきた。


「必要なのは、

マリーとアニスの全面的な協力だ。

 後、忘れちゃいけない冒険者。

それも、数はいくらいても良い。

人数が増えたら増えるだけ安全になって、

稼ぎが増える」

「俺たちが呼べるだけ呼ぼうか?」

「是非!」


 俺は笑ってバニレの肩を叩く。


「俺の予想だと、

猶予は一週間から十日だ。

近くの町の冒険者も呼びたいが、

冒険者ギルドのバスコが協力してくれんしな」

「そこは、俺たちに任せてくれよ。

冒険者同士のコミュニティで、

人を集められるだけ集めてやる」


 バニレは自分の胸を叩いて笑う。


「アタシも」

「わ、私も!」


 ロベリーとリーンテが手を上げた。


「俺は、一回カーフェイに話してみる」


 レートがそう言ったので、思わず聞いてしまった。


「レート、お前知り合いだったのか?」

「……実は昔、

カーフェイと一時的なパーティーを組んだことがある。

カーフェイがダンジョンを壊す前だが」


 レートは口数の少ない男だ。

特に自分のことは語らない。

なので、驚きの人脈に俺は内心大喜びだ。


「だったら、伝言を頼んでいいか?」

「あ、あぁ。

なんだ?」

「『直接行けなくて申し訳ない』って言って、

これ渡してくれ」


 俺は魔法鞄から、

この前突き返された銀貨の袋を出してレートに渡した。

レートが突然震え出す。


「こっ!

こんな大金、

ポイポイ渡すんじゃねぇ!」

「レートは中身をちょろまかしたりしねぇ、

って信じてるからポイポイ渡せるんだよ」


 俺の言葉に反論できず、

レートは震える手で銀貨の袋を持つ。


「ふ、普通に怖いわ!

俺ぁ、こんな大金持ったことねぇ!」

「俺の話を聞いてくれりゃ、

その袋がちんけに思えるくらい稼げるぜ?」


 そう言って俺は笑う。

レートとバニレは声を揃えた。


「それでもこれは無理!」

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