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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第七章 経験者大歓迎!

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第98話 次が最後です

●庭園のダンジョン● 


 『雷光の聖女』が天空のダンジョンを襲っていたのと、

同時刻。


 大陸の中央辺りにあるダンジョン。

『庭園のダンジョン』と呼ばれるここは、

草花が生い茂る緑のダンジョンだ。

 魔物も昆虫系、節足動物系、植物系ばかりが現れ。

それらから取れる素材は、良質な薬の原材料になる。

さらに、ダンジョンの奥には大きな花畑があり、

そとでは手に入らない希少な草花が採取できる。

 別名が『薬のダンジョン』。

薬師ギルドの本部がこのダンジョンの真横にあるほどだ。

構造は階層別に分かれていて、

一階層は森、二階層は熱帯雨林、三階層は高山地帯。

どの階層も最奥には魔物がおらず、花畑がある。

 冒険者たちは依頼人から指示された薬草を探して、

その草花の生息に適した気候の階層まで降りて採取する。

三年前のことがあったが、

このダンジョンは薬と言う重要な物の原材料が採れるため、

入る人数などを管理、制限して現在も国が管理している。


 そして、その入り口に立つ、巨漢。


 ゼンフは元々ここに来たことがあるので、

自身の瞬間移動でここまで来られた。

ただ、最奥どころか一階層の奥までも行ったことはない。

 彼は背負っている大きなタンクと、

それに繋がったホースを両手に構えた。


「参る!」


 ゼンフがホースを開栓し放水が始まる。

これは、『白の教会』で火災の消火に使われる消火器だ。

タンクの中は消火の為の薬剤ではなく、

海水と魔石を混ぜたものだ。


 生い茂る緑に、ゼンフは放水を始めた。


 タンクの水を浴びた草木はどんどん萎れていく。

同じようにタンクの水を浴びてしまった木々に擬態していた植物系の魔物は悶え苦しみ、

息絶える。

 昆虫系や節足動物系の魔物もゼンフに襲いかかるが、

ゼンフはなんなく回避して魔物にも放水する。

すると、魔物たちも悶えて苦しみ、死んでいく。

 海水に混ぜられた魔石は、炎系の魔物の魔石だ。

サラマンダーや火ネズミなど、

弱いがたくさん手に入る炎系の魔物の魔石は、

植物系や虫系の魔物には猛毒だった。

 しかも、ホースは消火のための物なので、

放水口が細くされている。

さらに、

風魔法が仕込まれていて、

水は加圧されて放水されている。

そのため、水は最長数十メートル飛ぶ。

 ゼンフは歩きながら両手を軽く振るだけで、

海水と魔石を広範囲に撒き散らすことができる。

庭園はどんどん塩害で、萎れて崩れていく。

魔物たちは必死にゼンフを止めようとするが、

ゼンフは簡単にそれらを回避して水を浴びせ掛ける。

魔物たちはそれだけで苦しみ、動けなくなる。


「こうなると、魔物が哀れだな」


 ゼンフはそう言いながらも、

放水を止めない。

どんどん魔物も数を増やし、

本来この階層にいないような強力な魔物も現れるが、

ゼンフには傷一つつけられず。

タンクの水を浴びて死んでいく。

 一階層の三分の一ほど歩いた辺りで、

タンクが空になった。

ゼンフは瞬間移動の魔法を唱え、姿を消す。

魔物たちはあわてて海水を浴びている地域の土と浴びてない土を分けるように掘り始めた。


 しかし、ダンジョンの入り口にまたゼンフが現れた。


 そして、さっき行った方向と逆の方へ歩きだして放水を始める。

魔物たちは慌ててゼンフの方へ飛んでいくが、

やはりゼンフは手強い。


 すると、ダンジョンの入り口に屈強な男たちが現れた。


 全員、ゼンフと同じような上半身裸に鎖を巻いただけの装備だ。

そして、彼らは横にならんで互いの肩を軽く叩いて、

中腰になる。

それはまるで、アメフトのラインマンのような陣営だ。

 そして、彼らは掛け声もないのに一斉にまっすく走りだした。

二十人あまりが、息ぴったりで前に進む。

彼らは、

そびえ立つ木々を魔法や腕力でなぎ倒して進む。

さながら、人間ブルドーザーのように。

木々や草木をなぎ倒して破壊していく。

 魔物の一部はゼンフから離れて、

その一団を襲う。


 しかし、彼らは止まらない。


 魔物の攻撃を回避し、

無視して木々をなぎ倒していく。


「もう止めて!

お願い! 止めて!」


 ダンジョンの空中に映像が浮かんだ。

そこに写し出されたのは女性の顔だ。

ゼンフはそれを見上げて口を開く。


「うむ、ダンジョンマスターか?

止めてほしくば、ビトメ様の居場所を吐け。

今なら、止められるぞ?」


 今なら。

その一言で、

ダンジョンマスターは顔をぐしゃぐしゃにした。

悩んでいる、しかし、これ以上は看過できない。

それでも、やはり。


「……い、言えない……!」

「なら、終わりだ」


 次の瞬間、ラインを組んでいた一団が瞬間移動で消えた。

しかし、数秒後にはその一団がゼンフと同じタンクとホースを構えて現れる。

タンクの中身もゼンフと同じ海水と魔石を混ぜたものだ。


「止めてぇ!」


 ダンジョンマスターは声を裏返して叫ぶ。

ゼンフはまたタンクの水が無くなったので、

瞬間移動でスコップの街に一時帰還した。

 ゼンフはそこで『雷光の聖女』の果報を聞き、

またタンクの水を補給して庭園のダンジョンに戻る。

同志たちが水を撒きながら、木々をなぎ倒して行く。

 ゼンフは周囲を見回した。

一階層の半分以上が散水により枯れ始めている。

土で繋がっているので、

直接水を浴びてない草木も元気がなくなっていく。


「さて、次だ」


 ゼンフは水を撒きながら目的のものを探した。

少し歩くだけで見つけた。

水源だ。

ゼンフは放水を止めて、

タンクを下ろして水源にタンクの水を撒こうと抱える。


「それは止めて!

本当に止めてぇ!」


 魔物が一斉にゼンフに襲いかかる。

しかし、魔物は一斉に爆ぜとんだ。


「あははは!

お手伝いに来たよ!」


 『雷光の聖女』だ。

魔物の群れを一掃して駆け回る。

 ゼンフは礼を言って

タンクの水を水源へぶちまけた。

それを見ながら、

聖女は要所要所で何かを投げている。


 それは、爆弾。


 爆発したそれらは、

何かを吹き飛ばすわけでも燃えるわけでもなかった。

まるで、クラッカーを鳴らしたような音ともに、

その爆発した周囲にキラキラ何かが舞い散っている。

それを見たダンジョンマスターが絶叫した。


「いやぁぁぁ!

チャフはダメぇ!」


 聖女が投げているのは、魔石のチャフグレネードだ。

炎系の魔物の魔石の粉が爆発と共に撒き散らされて、

魔物たちはどんどん息絶える。

 飛び回る昆虫系の魔物は、

見えないデスゾーンに突っ込んでしまって苦しみ暴れ。

さらに、チャフを広域に広げてしまう。


「あったぞ!」


 ゼンフが大きな声を上げた。

その手には、ダンジョンコアが握られている。

どうやら水源の中にダンジョンコアが隠されていたようだ。

だが、タンクの水で水草や水に隠れていた魔物が死に絶え、

水草で隠れていた罠がむき出しになっている。

どうやら、ゼンフはなんの苦もなくコアを取り出せたらしい。


「ダメ!」


 ダンジョンマスターの絶叫を聞き流して、

ゼンフは帰還石を割りスコップの街に帰った。

『雷光の聖女』は走ってスコップの街に戻った。


「ただいま!」

「無事に帰還いたしました!」


 ゼンフの手にはダンジョンコアが握られていた。

聖女は大笑いしている。

 トシ・オーはそれを見てうなづき、

詰まっていた息を吐き出した。


「おかえりなさい。

次が最後です。

皆さん、少し休んでください」


 トシ・オーの懐にある宝石が嗤った。

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