第96話 プランを聞かせてください
宝石のスオラは、
トシ・オーの話を補間して統合した。
「勝利条件は、
ビトメって人を無事に助けること。
場所は樹海の向こう側、遥か北の大地。
目下の問題は、距離だ。
ここからそこまで、馬でも二年くらいかかるな。
ビトメってのがいなくなったのが、昨日の昼過ぎ。
そろそろ二十四時間経過する。
次の問題はダンジョン。
ビトメって人のいるのが、
『天空のダンジョン』の中。
魔物の巣でトラップまみれのメイズの最奥」
スオラはいかにも楽しそうに話をしている。
「こっちの手札は、お前と俺。
後、異端審問官一人、王族一人、『雷光の聖女』一人。
過剰戦力だわ!
まだ足りないものはあれど、
戦力だけ見れば余裕で勝てるぞこの戦!」
「……真剣に言ってますか?」
「この目を見ろよ?
マジの本気の、大真面目だわ」
「目、ないですよ?」
「フィーリングで来いよ?
フィーリングで。
まぁ、任せな」
声だけだが、
スオラが自信満々に笑っているのが分かる。
トシ・オーはイマイチ信じられない。
しかし、胡散臭さの中に確信が見えている。
賭け(ギャンブル)だ。
何にどれだけ、何を賭けるか。
力のない人にできることは、それだけ。
トシ・オーは、この数日でそれを体感している。
目の前で目まぐるしく起きる事件に、
翻弄されるだけの自分の無力さ。
そして、自分の代わりに戦う者に賭けるしかない、
哀しさ。
そして、この宝石には、オッズが浮いて見える。
百か零か(オール・オア・ナッシング)。
これに賭けたら、
全てうまく行くか全て失うかのどちらかしかない。
ベターな結果にはなり得ない。
トシ・オーには、何故かそうだと感じる。
「プランを聞かせてください」
「そう来なくっちゃ!」
地図を出すようにスオラがいう。
トシ・オーは普通の鞄からそれを取り出して、スオラと一緒のテーブルに広げる。
「ほら、見ろよ?
この街からそのダンジョンまで、
ほぼ一直線だ。
『樹海』を挟んでだがな。
樹海が広いから、
まっすぐ進めてもかなりの距離だ。
それでもここから一直線だ。
そんでもって、樹海は魔物の巣なんだろ?
ダンジョンに生息している以外の魔物が人を襲う理由は、
主に二つ。
食べるためと、住処に入った侵入者の排除。
ただそこを通るだけで、敵対できる」
楽しそうにスオラは話すが、
トシ・オーには何が楽しいのか分からない。
「悪いことでは?」
「普通はな。
でも、今はそれが最高に良い」
スオラは確実に笑っている。
顔もなにもないのに分かる。
「『雷光の聖女』ってのは、
速く走れる。
そうだな?
『樹海』の真ん中を、
魔物に気付かれるより速く駆け抜けられる。
そうだな?」
「本人の話でいけば、そうです」
スオラは続ける。
「異端審問官はこの街への瞬間移動ができる。
そうだな?
乱暴な話だが、
そのビトメって人の所に異端審問官が行くか、
帰還石を渡すことができれば勝ちだ」
「えぇ。
でも、ダンジョンまで『雷光の聖女』さんが一人で行けても、
迷路のようなダンジョンの中でビトメさんを探すのは難しい。
ゼンフさんが一緒に行くには、
ダンジョンの近くまで行ける帰還石が必須」
トシ・オーは苦々しい顔で言う。
「まぁ、メイズってのは、
入った獲物が出ないように作られてる。
俺の知識で言えば、
名前が『天空』って言うくらいだ。
空飛ぶ魔物ばっかりで、
空を飛べないと進めないダンジョンのはずだ」
聞けば聞くほど、
ビトメの救出が不可能な気がしてくる。
しかし、スオラの笑みは崩れない。
「だから、まずダンジョンを無力化する。
ダンジョンはダンジョンコアを破壊するか、
ダンジョンの中から外へ持ち出せばダンジョンは無力化する」
スオラはそう言って笑って言う。
「ダンジョンの部屋同士が血管みたいに繋がってて。
しかも、ダンジョンコアがダンジョンの壁や床に触れてないと、
ダンジョンとしての力は弱る。
天空っつっても、
必ずどこかが繋がってるんだ。
道として使えようが、使えまいが繋がってる」
スオラはさらに笑みを深める。
「天空の、どこが繋がってると思う?」




