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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第六章 副業・兼業OK

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第91話 地下に逃げても

 鳳は小鳥の群れとはうってかわって、

凄まじい飛行能力を見せつける。

急旋回、急停止、低空飛行も何のそのだ。

一般人の避難はほぼ完了だが、

ゼンフは二人を避難所へ連れていけてない。

 理由は単純。


「大きい鳥の中には、

蜂の巣を土の中から鍵づめとクチバシで掘り出して食べるものがいます。

 密集した羽毛が鎧になってて、

蜂の毒針を一切通さず。

鋭い鍵づめで地面を砕いて、

クチバシで蜂の巣を地面からほじくり出します。

 地下に逃げても、『そう』なります」


 トシ・オーの言うことは、

的を得ていた。

鳳は地面に降り立ち、

鍵づめで避難口を掘り返し出す。


「ヤバい!

フェニックスを止めろ!」


 弾丸の雨が鳳に降り注ぐが、

超高温で発熱し、隙間なく密集している羽毛が鉛玉を全て防いでしまう。

それを見たゼンフは、

地下も逃げ場としてはまずいと二人を抱えて走り続ける。

 トシ・オーは鳳を見て、

目の焦点の定まらないぼんやりした顔のまま呟く。


「寒さには弱い……?

発熱は防具じゃない、生態です。

あれは意識的にコントロールできてない。

 寒いと発熱分カロリーや魔力を多く消費する?

直接フェニックスを凍らせるんじゃなく、

周囲を冷やせば?」


 トシ・オーのボヤキを聞いたゼンフはすかさず大声を出す。


「冷やせ!

周りを冷やすんだ!

フェニックス自体は凍らなくてもいい!

あの鳥の周囲を冷やせ!」


 それを聞き付けたのは、

近衛兵団とは違う軍団だった。


「承知した!

総員、水魔法用意!」


 ゼンフと同じ、

上半身は裸かさらし。

その上に鎖を巻き付けた軽装な集団が現れて、

魔法を詠唱し出した。


「遅参になり、申し訳ない!

『教会』所属、異端審問官、

総員五百六十七名!

参る!」


 異端審問官たちは、僧兵。

鍛え上げた肉体もさることながら、

その魔力、魔法技術は後衛としても威力を発揮できるほど。

そんな本来は各地に散っている彼らが、

この日は全員このプニャードにいた。

ゼンフの援護のために、集結していた。

 地面を掘るフェニックスの周囲が凍りついた。

すると、フェニックスは翼を広げて飛び上がる。

周囲の氷を嫌がっているように見える。

 ダンジョンの扉から、

またスターリングの群れが飛び出してきた。


「地上を冷やせ!

フェニックスを地上に下ろすな!」

「地下の避難民を護れ!」

「煙幕も使え!」

「閃光弾もだ!」


 テクノマギの兵団、黒ずくめの近衛兵団。

そこに半裸の異端審問官たちが合流した。

見た目はともかく、

この組み合わせは最恐と言える。

 歴戦の兵士が、最新鋭の兵器で武装し。

テクノマギが破城槌の様に切り込み、道をつくって。

異端審問官が並び、道を塞がせず。

そこをまっすぐ進行する近衛兵団。

 魔物からしても、人からしても、恐ろしい軍団だった。

しかし、魔物は、ダンジョンマスターは負けていない。


「なんだ、ありゃ!?」


 誰かのそんな声が響く。

ダンジョンの扉から現れたのは、

一羽のニワトリ。

 ただのニワトリではない。

大きさこそ地球世界のものと同じだが、

鋭い鍵づめを携えた脚は剛脚。

飛べそうにないが、万物を殴り砕けそうな太い羽。

鳥胸、なんて呼べないほど隆起した大胸筋。


「……筋肉の化け物か?」


 ニワトリは一足飛びで異端審問官に詰めより、

その豪腕を振り下ろす。

異端審問官たちがとっさに飛び退き受け身を取るが、

ニワトリの翼は石畳を木っ端微塵に砕いて、

大きなクレーターを作った。


「なんだとぉ!?」


 筋肉こそあれ、体重差は人間の方が多いはずだが。

ニワトリの一撃は異端審問官の巨躯を木の葉のように吹き飛ばした。


「気を付けろ!

新手だ!」


 ニワトリは、

固いはずのクチバシを歪めてニヤリと笑う。


「笑ってんじゃねぇ!」


 オスマンサス近衛兵団、将軍。

反省文で鍛え上げた綺麗な文字を書くその太腕に構えられた、

バスターソードが閃く。

ニワトリは紙一重で剣をかわし、太い脚で蹴りを放つ。

 将軍も、伊達じゃない。

剣を全力で振っている途中の右手を放して、

ニワトリの蹴りを受け流した。

そして、左手の剣の勢いと重みに身を任せ。

フル装備のおかげで身軽になり、

可動域も広がったその身体と間接を回し。

腕力に遠心力を加えて、ニワトリへ追撃として振り下ろす。

 さすがに片足ではニワトリも回避することができない。

それでも、

ニワトリは二本の羽でバスターソードを白羽取りした。

そして、その剣の振り下ろしの勢いにのって、

小さな身体を縦に回して遠くへ飛び退いた。


「逃がすものかよ!」


 その後をすかさず将軍が追いかける。

将軍とニワトリの一騎討ちだ。


「あばばばばばば!」


 空の上では、『雷光の聖女』が身体に雷を纏い、

フェニックスと殴り合いを繰り広げている。


「助太刀いたす!」


 異端審問官たちが、

一斉に魔法を唱えてフェニックスに向かって放った。

しかし、フェニックスはそれを華麗に回避し、

『雷光の聖女』に襲いかかる。


「風魔法を頂戴!」


 『雷光の聖女』のその声で、

テクノマギたちが、魔法を詠唱し始めた。


「異端審問官殿!

我らに続いて!」


 テクノマギ隊の呪文構成に疑問を抱きつつも、

異端審問官たちもそれを真似て風魔法を唱え出した。

その間もフェニックスと聖女の殴り合いは続く。

 魔法使いたちの頭上に、

圧縮された空気が加速し、磁場が生まれた。

そこに、魔法使いたちの役割分担が生きる。

磁界を維持するもの、圧力を調節するもの、

流量を調節するもの、温度を安定させるもの。


 そして、魔法使いたちの頭上に生まれたものは、

『小さな太陽』。


 プラズマ・キュボラ。

直径五十センチ程度でも、

数千度の高温でたゆたうプラズマの塊。

百歩の距離があっても生き物が焼けて死ぬほど高温の炉心に、

『雷光の聖女』は笑顔で飛び込んだ。


「キター!」


 雷を越え、プラズマのエネルギーを得た『聖女』。

プラズマの球体がみるみるうちに形を変えた。


 そこにいたのは、光の巨人。


 プラズマを纏った二メートルの巨大な女性体。

彼女は自らの身体を見回して、笑う。


「くーそーがぁっ!」


 プラズマの身体がフェニックスを襲う。

高温なはずのフェニックスの羽毛が焼けた。

生まれて初めて感じる熱さに、

戸惑い驚きの声を上げるフェニックス。

 フェニックスと『雷光の聖女』の空中戦は、

気温と共に加熱していく。

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