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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第六章 副業・兼業OK

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第88話 荷物は私が持ちます

 トシ・オーは、電車に揺られている。

元々プニャードは歩道と馬車道が分かれており、

大通りは東、西、南にラウンドアバウト、

環状の回転交差点と広場があった。

この三ヶ所と王城前の駅は大人気だ。

 ラウンドアバウトは、

レオが異世界から持ち込んだルールだ。

信号機と言う概念がないこの世界。

交通の安全。

仕組みだけで交差点の安全性を引き上げるこの仕組みは、

レオによる民主化の礎の一つだった。

 馬車たちは綺麗に右周りに回って、

各々行きたい道へ左折していく。

綺麗に徐行し電車と一緒に回る馬たちは、

なかなか美しい。

 歩道と馬車道が分けられて。

しかも歩道は石畳、馬車道は土でできている。

 馬車道の交通量が多すぎて、

石畳にするとメンテナンスが現実的じゃない。

土なら轍を別のところから持ってきた土で埋めて、

『タコ』と呼ばれる地突きのハンマーを使って固めるだけでいい。

しかも、馬の蹄に優しいので人にも馬にも好評だ。

 対して、歩道は石畳。

水を通して下の地面へ流す特殊なレンガでできている。

雨季に水溜まりができにくく、

街に血管のように流れる用水路水で道が濡れてもぬかるまない。

 用水路は船を通すためのものではなく、

防火と治水をかねたものだ。

首都の北から街をなぞるように東へ、南へ流れる大きな川。

この水を首都の水路に通して、

街の城壁の外の堀に流し、

最後は南の川に流す。

そうして、川の水の増水に対応して氾濫を押さえ込んでいる。

 街の地下、下水道にもこの水が通っている。

こっちは堀には行かずに、そのまま川へ流す。

下水道にはスライムを飼っている。

汚物や汚れをスライムが食べて処理するので、

川に流れる水は飲めないが綺麗だ。

最後にスライムのする糞は極上の肥料として高値で売れる。

見た目だけでなく、構造まで美しい街だ。

 トシ・オーたちが向かっているのは、

この街の東の大通り。

この先の東門は他の門より大きい。

理由は、東門を出たところにある倉庫街。

 街の東に大きな港がある。

船着き場に着いた船が下ろす荷物は、

この倉庫街に下ろされてから街に入る。

場合によっては、

そのまま馬車に積み替えて陸路でさらに遠くへも卸される。

 そして、東門の内側には宿屋街が広がっている。

大通りの両サイド、全部宿屋だ。

この街で一番の金持ちは王族だが、

その次は間違いなく宿屋だ。

プニャードの宿屋組合は商業ギルドに出資するほど大きい。

 その中で一番の老舗であり、組合長であり、

高級宿として他国にすら名前が知られている。

誇張でも誇大でもなく、本当に『国一番の宿屋』。


「……宿『キャンドル亭』」


 トシ・オーは建物を見上げてそう呟いた。

総石造りの、敷居の高そうな宿の前。

 トシ・オーとビトメはまだいいが、

それらを囲む白づくめの仮面たちと、

上裸に鎖を巻いたゼンフ。


「……入って、いいのですか?」


 ビトメは心配そうにそう呟いた。


「予約は取れてます。

この宿、

そもそも『白の教会』の信者が経営してたので、

我ら『聖女の右』がお二人を護衛しやすく。

付け足せば、廊下が広いので、

異端審問官ほどのりっぱなお体でも過ごしやすいと思いますの」


 ゼンフは申し訳なさそうに頭を下げた。


「ここの宿代はオスマンサス王家持ちだそうですが、

あくまでもトシ・オー様とビトメ様のためのものですよ。

我らと貴方は護衛なので、

期待しないでくださいね」

「もちろんですとも!

正直、道端も覚悟していましたので」


 『光の神』のいうとおり、

個々人の感情は別にして、

『白の教会』全体の立場としてはゼンフを許すことになっている。

ここにいる『聖女の右』たちも、

感情としては憎さが残っている。

しかし、むしろ自分達がよく知るゼンフの実力がトシ・オーの護衛についている、

と考えるとすさまじく頼りになる。


「トシオさん、

入りましょうか」

「ビトメさん、荷物は私が持ちます」


 トシ・オーはそう言いながら、

ビトメの手から荷物をスルリと取り上げて持ち上げる。

抵抗するつもりはなかったが、

ビトメはその手際に苦笑いする。

 一同は宿へ入った。

宿の従業員一同がお迎えとして、

一斉に頭を下げる。

壮観であると同時に、二人はたじろいだ。


「お帰りなさい。

ささ、奥の受付へ」


 初老の男がいつのまにか二人のそばにいて、

二人を奥へ誘う。


「こちらの宿泊票に、サインを」


 トシ・オーとビトメは受付でサインをして、

宿泊票を初老の男に渡した。

男はそれを見て、うなずき。


「確かに。

 ……改めまして、

私、『キャンドル亭』の支配人。

さらに改め……!

これが俺の本体のハンサム顔だ!」


 初老の男の頭が絵の具のように弾けて、

中から若い男が顔を出した。

その瞬間、トシ・オーの後ろに光の柱が立ち、

辺りが見えなくなる程の閃光、爆発と共に、

『ダンジョンの扉』が現れた。

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