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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第六章 副業・兼業OK

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第85話 『時計台』……

 心身を休ませること二日。

ビトメはこの国、この街の異常をさんざん見せつけられた。


「ななななな……」


 道の真ん中を堂々と通る大きな鋼の芋虫。

ちんちんかんかん、と鐘を鳴らすそれに、

たくさんの人が乗り込んでいく。

電車、と言うらしい。

 そして、街灯には『白の教会』にあった電灯。

日が暮れると、誰かが火をもって来なくても、

ひとりでに点灯して街を照らす。

 街を行く人々も、

馬すらそれらが当たり前のように生活をしていた。

トシ・オーといたヘルトや、

昔いたメルザーでもこんな街ではなかった。

魔道具がたくさん使われているオブリークですら、

こんなに過ごしやすい街ではなかった。

 地面は石だたみ。

後で聞いたが水をすって地面へ流す特殊なレンガらしい。

雨が降っても道端に水溜まりができないそうだ

人が通るための歩道と言うものがあり、

馬や電車の通るための土がむき出しの道と分けられ、

事故がかなり少ない。

 建物は木造、石積に紛れて、

『白の教会』の神殿と同じ練り石、コンクリと言うらしい、

でできたものもある。

コンクリでで来た建物の特徴は、

とにかく高いことだ。

石積でも滅多にない五階以上の建物が造れるらしい。

 そして、コンクリ造の建物のほとんどが公共機関と言われる、

国の関係する建物だった。

ここはオスマンサスの王都プニャード。

『王都』と言う呼び名は古いらしく、

街の人々は『首都』と呼ぶ。

 癒しの奇跡を使える『癒し手』だったビトメは、

布教に各国をめぐることはなかった。

しかし、今まで訪れたどの街より栄えているように見える。


「今は、電車をもっと遠くまで動かせないかと、

オスマンサスの政府と我ら『白の教会』が共同研究しています。

 町中なら、城壁があって魔物も簡単には襲ってきませんが。

町と町を繋ぐとなると、これがかなりの問題でして」


 『聖女の右』の人は、そう話しながら街を案内してくれる。

ビトメは生まれてはじめて乗った電車の中で、

動いていく風景や電車の内装をキョロキョロ見回していた。

見知らぬものに対する恐怖もあるが、

好奇心が若干勝つ。


「ば、馬車より揺れないのですね」

「はい。

オイルダンパと言う、

揺れを減らす機構がついています。

 これを馬車にも、と言う声もありますが。

ダンパは結構重いので、

馬が長距離牽引するのに向かなくてですね」


 『聖女の右』の人は、

どう見てもガタイがいい、戦闘員の姿なのだが。

その語り口は完全に技術者のものだった。

 しかも、仮面で白づくめの姿で街を堂々と歩いている。

道行く人も、彼を不審に思うことはなく。

皆、彼らを見たら会釈したり挨拶をするくらい馴染んでいる。


「ささ、この次の駅が王城前です」


 今日は、二人はオスマンサス王に呼ばれて城まで来た。

もちろん、護衛の『聖女の右』たちとゼンフもいる。


「遅ーく来てってば。

電車だと早いよ」


 そして、王城前駅には『雷光の聖女』が待っていた。


「この街を見てもらわないと!

皆がお母さんのメモを読んで作ったものが。

おー様の協力のお陰で、皆で使えて。

しかも、それで皆喜んでる!

これこそ、我らが主の望まれた人間の文明!

 って言うのを、お母さんに見せないと!」


 聖女の移動速度は『雷光』と呼ぶだけある。

光と同じ速度で移動できる彼女にとっては、

オスマンサスがいかに広大でも一瞬の距離だ。

 そんな彼女が、

もっとゆっくり、と言うのはなかなかない。

遅いよ!

と言うのが、彼女の口癖なのだが。


「私たち皆の自慢の街を、

お母さんにいっぱい見せないと!」


 だ、そうだ。

彼女なりに、折り合いがついたのは今朝の話だ。

新しいトシ・オーに、

昔のトシオの偉業を見せる。

それでトシ・オーが過去を思い出そうが、

出さまいが関係なく、

『トシ・オーに自慢するんだ』、と彼女は言う。


「ほら!

あれがお城の時計台だよ!」

「『時計台』……」


 トシ・オーは聖女の指差す建物を見つめる


 『時計』。


 ミルポアの『白の教会』の部屋にもあった時間を計る装置。

オスマンサス王城には、

それのとても大きなものが塔の側面に設置されている。

城の一番高いところに、

どこからでも見えるよう四面同じ時計が設置されている。

 この街の人々の中にも、

『時間』の概念が定着しつつあり、

公共の施設はその時間で運用されている。

九時に施設が解放されて、

十七時に閉館、と言う具合だ。

 大きな商店や馬車などの大きなものを扱う店は、

その公共の施設の真似をして営業時間を決めていたりする。


「ほら、もうすぐだから。

……5……、4……、3……、2……、……1」


 ごーん、ごーん……。


 時計の上についた鐘が揺れて、

大きな音を奏でた。

ビトメとトシ・オーは驚いた顔で耳を塞いでいる。


「すごいでしょ?!

毎日朝九時と、お昼十二時に鳴るんだ!

『時の鐘』だよ!」


 『雷光の聖女』は満面の笑みで自慢する。

ビトメは驚いた反面、

そばの城の中に住んでるはずの王族はうるさくないのかな、

と気になった。

 三年は短いようで、長かった。

すっかり様変わりしているプニャードだが、

トシ・オーには初めて訪れる街に違いなかった。

トシ・オーはどれもこれも興味深そうに、

夢中になって眺めていた。

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