第1話 人生最期の朝
目覚まし時計に起こされる。
今日は土曜日、休日だ。これから日曜、祝日と連休が続く。
世界有数の電気街・秋葉原に行く。
ちなみに、アキバへ行くのはこれが初。
理由は金と時間がなかったから。
寝起きの頭を回転させて、階下に向かう。
一般家庭だと誰かがいるけど、うちには誰もいない。
父さんは現在、海外出張中。
母さんは昔、突如失踪して行方不明。
今も見つかっていない。
妹もいるけど、今日は友人の家に泊まってる。
必然的に、ここは俺が支配する大帝国。
朝食を食べ終わり、旅行に行く準備を始める。
湯沸かし器をつけて、風呂の湯が溜まるまで待機。
湯が溜まったので、蓋を開ける。
モクモクと湯気がたちのぼる。
手を入れて見る。結構熱い。
一気に入る。
背中の一部が痒くなる。
やはり、朝一の風呂は心地いい。
湯船に体を深く沈める。
風呂から上がって、タオルで水分を拭う。
脱衣所に出ると寒いので、残りが無いように。
その後は歯磨きなり、行程をスムーズに進める。
部屋に戻り1週間前に準備しておいた
リュックの中身を見る。最終確認だ。
iPadとノートPCはOK。財布もOK。
服類と小物類も問題なし。
家中の鍵という鍵を閉めたので、防犯も大丈夫。
階段を降りて、玄関へ向かう。
リビングはもぬけの殻だ。
温もりもない、冷たい空間。
「……行ってきます」
静かな空間に向かって声をかける。
当たり前だけど、返事は来ない。
少し虚しくなる。
扉を開けて空を見る。雲1つ無い快晴だ。
「よし、行くぞ…!」
自らを鼓舞して、一歩を踏み出す。
まず向かうところは駅。区間快速に乗って向かう予定。
スマホをかざして改札を通り、ホームへ向かう。
今は朝の8時40分。
電車が来るまであと10分ちょいか。
ホームに降り立つと、丁度寒風が傍を吹き抜けた。
ベンチに座り、スマホを取り出す。
SNSアプリを開き、やり損ねた返信を行う。
やることがなくなった為、リアタイ欄で暇潰し。
すると、1つの万バズツイが目に入る。
内容は、ただ『準備はできた』と言う物。
リプ欄は冷笑系と、ゾンビとその他で溢れている。
中には18禁漫画の宣伝をしてる奴もいる。
「何してんだこいつら…」
少々呆れつつも、気になった俺は呟きの発信垢を見る。
フォロワー数は105人。
まあまあいるな。
関心をよそに、画面をスクロール。
最初のツイートから順番に見てみる。
内容は社会への不信感から始まる。
そこから身の上話や苦悩、文句などが連なっている。
(随分と苦労してんだなぁ……)
思わず同情をする程にまで、酷い有様だった。
そこから1ヶ月ほど更新はストップ。
更に見ようとした時、電車が到着した。
スマホを見るのをやめて、車内に乗り込む。
都会であり、休日なのでいつも以上に混んでいた。
「おっとすいません…」
寿司詰め状態になりながらも、なんとか席に座る。
一息ついて、スマホを取り出して続きを見る。
ここから内容が具体的になってくる。
俺は犯罪者予備軍とか、夢はメディアの掌握とか。
直接的な表現も決して少なくはない。
全てのツイートから、他人への恨み憎しみが強く伝わる。
自虐のように読み取れるモノにもだ。
「気分悪いな……」
こっちまで巻き込まれそうな気がしてならない。
そんなのは御免だね。
悪化してきた空気を払うために、リアタイ欄に戻る。
ネットの入りが山の中並みに悪い。
人の量が多すぎやろ。某同人誌即売会も似た感じ。
何度か読み込むと、ようやく呟きが出てきた。
内容は秋葉原で大規模イベが行われる、と言う物。
目的は地域の活性化、訪日観光客のインバウンド効果狙い、
オタク文化・サブカルチャー文化の発信らしい。
更にゲスト陣が豪華絢爛。
世界的なハリウッドスターや、超有名企業Vtuber、
ボカロ界の四天王、果ては内閣総理大臣まで参戦するとか。
「なるほどねぇ……」
フェスタか。ドンちゃん騒ぎではないだろう。
ちょうどいい、俺は今から秋葉原に行くんだ。
こういう所に行っておけば、将来の楽しみが増える。
……しかし、再び胸騒ぎが始まる。
誰かに『絶対に行くな』と忠告された気がした。
周りを見渡しても、皆スマホや本・新聞に視線を向けている。
気のせいだろう。
変に行動して怪しまれたくない。
昂る気持ちを抑えて、俺は掌の画面に目を遣った。
今のは何だったんだろう。
車内アナウンスと、電車の走る音だけが耳に入っていた。
こんにちは、荒鷲です。
プロローグから続けて読んでくださり、ありがとうございます。




