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転生魔帝の人界亡命  作者: conacana
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かの地まであと少し

《前回のあらすじ》

ドルザードでのデプスダインとの死闘は劣勢にあった。しかし、遅れて参戦したディードの編み出した新たな魔法で形勢を逆転し、一行は辛くも勝利を掴み取ったのだった。

 俺たちは腹を満たすべく、飲食店を訪れていた。

 ……といっても、俺は海鮮物は基本的に苦手だから、オムライスみたいなやつを頼んだけどな。


「すごかったっすね~……あのデプスダインを俺たちが打ち破ったなんて、今でも信じられないっす!」


「あのとき、俺とこの商人が大砲持ってこなかったら、坊主たちは勝てなかったんじゃあないか? 実質、俺たちの手柄でもあるな! ははっ!」


「確かにな、今回ばかりはマジでヤバかったぜ。今までであんな修羅場、見た記憶がないほどにな……。だが、デプスダインを殺すことはできなかった。撃退はしたが、また来たときに対処できるのか……?」


「そんなことは気にしない! 大砲一門と、4人……いや、私とこの人を含めて6人でデプスダインを撃退できただけでも、かなり珍しいことだ!」


「商人さんの言うとおりだよ! あんな強力な魔物を、私たちで追い払えただけでも、普通の魔物を倒すよりずっとすごいことなんだから!」


 アリス……けれど、俺の懸念はそれだけではないんだ。

 あのデプスダイン、確かに強力で、俺たちだけでは突破できない難敵だった。しかし、それ以上に魔王のことが気がかりなんだ。もし、交渉が失敗したら、一体どれほどの激闘を強いられるのか……それが気になってしまう。


「ところで、坊主。お前らは船に乗りたいって言ってたよな?」


「ああ、ザーク島に行きたいんだ」


「ええ、あの無人島に? あのあたりは貝とかの海産物以外はホントに何にもないから、坊主たちが行く意味が無いと思うんだが……」


 やはりほんとに無人島なのか。ということは、本当に最近扉ができたということ。とりあえずは船を貸してもらえる人を……


「ザーク島……で、良いんだね? じゃあ、私が船を貸そう!」


 紹介してもらうまでもなく、気前よく貸してくれたのは商人の人だ。


「ありがとう……けど、良いのか? 商人のあんたにとっても、船は重要な商売道具みたいなもんじゃあないのか?」


「いいのさ! だって、ここまで来るのにも世話になったし、此処では商業ルートの一つを救ってくれたんだ。恩返しをさせてくれ」


「わ、わかった……じゃあその船の止まっているところまで俺たちを案内してくれ」


 腹を満たして、早速出発する。

 船渠から少し離れた場所にある大きな船着場に、商人の船は繋ぎ留められていた。


「へえ……割と良い船を持ってんだなぁ、あんた」


 その船は帆船……けど、映画で見る海賊船ほど大きくはないが、おっちゃん曰く「小さすぎない良い船」なんだそうだ。


「坊主、ザーク島に行くにはさほど距離はない。だが、モンスターには気を付けておけよ。近くに助けてくれるおっさんたちはいないからな」


 言われるまでも……ってそうだった。船の上だからといって安心とは限らないよな。またデプスダインと戦うなんてもう御免だぜ……。


「それに関しては心配いらない。これは魔導機関っていう最新の特殊な動力でも動かせるんだけど、それには魔物が寄ってこないようにする効果もあるんだ」


「……その魔導機関といえど、大型の魔物が襲ってこないとは断言できない。過信は禁物だぞ」


 な、なるほど。商人とおっちゃんが言うには、小さな魔物なら寄ってこないってことだろう。少なくとも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってこったな。


「……船の舵は僕が取っていいかな?」


 おっと、結構大事なことだけど、すっかり忘れていたぜ。

 ……って、まてまて、なんで子供のお前が操縦できるんだ!?


「まったく、見くびってもらっては困るよ。こう見えても、昔動かしたことがあるのさ。こっちに来るときにね」


「へえ、小僧、中々言うじゃねえか。なら、エンジンを動かして見せろ」


「こ、小僧……気に食わない呼び方だが、見せてやろうじゃないか……!」


 おっちゃんに焚きつけられたレクスは、すぐに船内に入って行った……。

 ……アイツが昔乗った船っていうのが気になる。しかし、どうして急に舵を取ることを言い出したんだろう? まあ、動かせることに悪い点なんざ一つもないんだが。


 ブロロロロロロロロロロロ……


 五分もしないうちに、車やバイクなどから耳にするエンジン音に似た駆動音が船から発せられ始めた!


「す、すごい……!」


「船のエンジン音って、私初めて聞いたよ……!」


 そうか、ディードとアリスは初めて聞くんだったな。

 前世でよく聞いた音を耳にした俺にとっては、既知の音は謎の安心感があるぜ。


「おお、小僧、100点ってところだな……。ホントに動かせるなら、もう俺の出番も必要ねえな!」


 エンジンをかけた船から、ドヤ顔でレクスは戻ってきた。


「ほら、三人とも乗った乗った」


 ……その生意気な顔が若干腹が立つ。

 なんかこう、何か戸惑うかと思っていたが、何の問題もなくエンジンを起動できるとは思ってなかった。


「じゃ、私はここで一旦お別れだね」


「坊主ども、達者でな~」


「ああ、船も俺たちもきっと無事に帰ってくるぜ」


「何言ってるの、絶対無事に帰ってくるでしょ?」


 そ、そうだな。アリスの言うとおり、絶対に帰ってくる……そうしたい。

 商人とおっちゃんに別れを告げて、俺たちは出航する。


「さて、ディード。帆を出してくれないか? エミールは交渉のためのイメージトレーニングがあるだろうし、僕は操舵してるからさ」


「了解っす!」


「……どうして、そんな熟練者のように動かせるんだ? 動かしていたのは昔とは言っていたけど、ブランク一つもなしに動かしてるように見える……」


「何故か知りたいかい?」


「え? あ、ああ……」


「今から250年前、こっちに僕たち吸血鬼が来たときに、海を渡る必要があった。そのために、僕は練習したのさ……たった20年くらいだけどね」


 へへっ、そこまでやってりゃあ、身体が覚えているってことか。何があったのかはイマイチよく分からないが、今までのコイツのことを考えると、並の人物ではなさそうだな……。


「さ、君はイメージトレーニングをしておくんだな。魔界での交渉が、世界の行く末を決める重要なものになるからね」


「そ、そうだな……」


 とはいっても、まずどういう展開になるのかを想像することが重要だな。丁寧に迎えてくれるかどうかがまず怪しいし、要求を呑んでくれるかどうかも気になる。仮に会話になった時、極力相手を刺激しないようにいきたいとは思うが、おそらく地雷になるような言葉のパターンは大量にあるとみていいだろう……。


「ねえ、エミール。魔王ってどんな人なの?」


「俺も気になるっす」


「二人とも……まあ、あの人を一言で形容する言葉があるとするなら、「暴君」だったなぁ。俺に発言権は一切なかったし、読書なんて半分拷問だったぜ。ただ文字を読むだけなのに、あんなに苦痛だと感じたことは今までなかった。思い返すと、恐怖が呼び起されるぜ……手が震えてきやがった……!」


「大丈夫……だって、その時と違って、今回のエミールは独りじゃないんだよ」


 アリスは暖かくも強く、手を握って震えを止めてくれた。


「そうっすよ! 師匠には俺たちだっているんすから! きっと、俺たちならやれますって!」


「そうとも。どうするかの鍵は君にあるが、同時にそれは選択肢も君に握与えられていたんだ。その中でここまで来ることを選んだんだし、もっと胸を張るといい」


 ディード、レクス……そうだったな。

 アリスに会って、彼女と一緒に逃げて……ディードを助けて、それからコカトリスを追ってレクスに会った……襲撃の時に、魔族と交渉するという選択をしたのも、俺が自由から導き出した答えだったな。

 結果として、俺はこうして生きている……死ぬことのない選択肢を自由の中から選び続けてきたのだから……ならば、今回もいつものようにやるだけだ!


次はいよいよザーク島到着です!


次回もお楽しみに!

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