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転生魔帝の人界亡命  作者: conacana
23/30

ドルザード

《前回のあらすじ》

 ドルザードへと向かうエミールたち。夜道に警戒用の高出力ライトを持って周囲の索敵に当たるが、道中にシースパンサーと遭遇してしまい、戦闘になる。戦いの中で、アリスの機転によって一切の被害もなく危機を回避したのだった。


 馬に揺られて数時間。あれっきりシースパンサーと会うことはなく、その危険地帯は無事に突破することができた。

 俺たちは一旦休息につき、次に起きたときには外はすっかり晴れ晴れとした朝日が照らしていた。


「おお、海が見えてきたな!」


「すごい……! 私、海を実際に見るの初めて!」


「僕は250年ぶりだよ。相変わらず、空をそのまま写したようだね」


 野原の先には多くの船舶が停泊している大きな港湾都市と、地平線のはるか先まで伸びている大海原が待ち構えていた。海に来たことは、前世でも数回くらいしかなかったけど、改めて見ると広大で終わりを感じさせないところに、どことなく神秘的なものを感じるぜ!


「あれがドルザードっすね。王都よりは小さいすけど、有数の港湾都市として発展を続けてるみたいっすよ!」


 ドルザードに到着すると、そこは現代で言うところの貿易の玄関口というよりは漁業で発展した所謂「漁港都市」のようなところだった。……しかし、この地がエスタリカと呼ばれている以上、この海の向こうに別の国家が存在してもおかしくないのかもしれないな。


「いやぁ、今回は何度も助けてもらって本当にありがとう。此処に予定通り到着できたのも君たちのお蔭だよ」


「いえいえ、こちらこそ私たちを送ってくれてありがとうございます!」


「縁が有ったらまた会うこともあるだろう。それじゃ、ここでお別れだ」


 商人と別れた後、俺たちは船を探すために町の探索をすることにした。

 が、すぐに妙な慌ただしさをこの街から感じる。見えてきた町の広間には、慌てる人、不安そうに手をこまねいている人……とにかく、何かただならぬことが起きていることは容易に想像できた。

 ざわざわとする人々とその声の中から、アリスが一人の民間人を捕まえて、話を聞くことができた。


「何かあったんですか?」


「ああ、嬢ちゃん。実は、港の船渠(ドック)が、デプスダインっていうヤバい魔物に占領されてね……衛兵は王都の方に行ったまま帰ってこないし、このままじゃ漁に出れないしで町中大騒ぎなんだ!」


 漁に出れない……つまりそれって、船に乗ってこの先に進むこともできないってことだな?


「……船渠への道を教えてくれないか?」


「お、おい坊主、正気か!?」


「僕たちは至って真面目だけど、なにか文句あるかい?」


 確かに……このまま此処で足踏みしているわけにもいかない。モタ付いている間に、魔族が二度目の襲撃を仕掛けてくるかもしれないからだぜ……!


「い、いいか、デプスダインってのは水のバリアで身を護っていて、生半可な攻撃じゃ傷一つ負わせられないんだ! 大砲とか対巨獣弩とかが必要で……」


 聞く限り、小さいモンスターではないことは分かる。


「じゃあ、その大砲と弩が使えるようになるにはどれくらいかかるんだよ?」


「2…3日ぐらいじゃないかな……? とにかく、悪いことは言わねえから、今は近づかねえのが身のためだ!」


「2、3日だって? 気遣いはありがたいが、生憎、俺達は急がなくちゃあならない。そのためには、危険を冒す覚悟ぐらいはできている!」


「……そこの道をずっと進んで、突き当りを左に行けば見えてくる。……俺は忠告しといたからな!」


 親切な民間人は、そう告げて戻って行った。

 俺たちは早速、現地に向かう……船渠からは何かうめき声のようなものが聞こえてきていて、それは近づくにつれて大きくなっていく!


「師匠、やっぱりさっきの人の言うとおりに、今日は休んだほうが良かったんじゃないですか?」


「なんだディード、お前らしくないな」


「いえ……その……僕、トイレに行きたいんですよ」


 なんだよ、催しているなら先に行って来ればよかったじゃないか……まあいい、後から追いついてくればいいし、なにより後どのくらい時間が余っているか分からないから、一秒でも早く障害は取り除きたい……。


「とっとと行ってこい」


「じ、じゃあ、失礼するっす! 必ず追いつきますから!」


 ディードは足早に、お手洗いを探して駆けて行った。


「い、いいの? エミール……」


「仕方ねえよ。戦ってる時に漏らすなんて嫌だろ? アイツが来るまで、俺たちで持ちこたえるぜ」


「……大砲抜きで倒す手段は何か考えてあるのかい? エミール」


 レクスの言うとおり、そこが問題なんだよな。水のバリアっつうのが、どういうのかもよく分からんし……。


 ギュオオオオオオオン……!

 耳を劈くような咆哮と共に姿を見せたのは、巨大な竜の姿だった!

 腕は無い代わりに大きなヒレがあり、長い首がこちらに向けられ、威厳のあるアギトはこちらを睨んでいた。これが首長竜ってやつか……!


「大きい……! こんなの、倒せるの!?」


 アリスがビビるのも無理はない……俺も今、予想外の体躯と外見に驚いてるぜ。だが、生物である以上、痛みは嫌いなはずだ!


「三方向に分かれて、頭に同時攻撃だ!」


 アリスが船渠の左に、レクスが右側に着いて攻撃の準備をする。敵はまだ警戒したまま動いていないし、一斉に頭に一か所に攻撃を当てれば……!


 魔弾が飛び、茨が地を這い、水晶が襲い掛かる……! 攻撃は確実に竜の頭に吸い込まれていくように突っ込んでいく……この距離ならかわされることはまずない!


 ……? なんだ? 一体、何時の間に水が……水が竜の身体を覆っている!

 なにかを展開する素振りなんて全くなかったし、まるで()()()()()()()()()()かのように水が現れた! しかも、攻撃が全部弾かれやがっ……!


 ギュルルルッ……! バッシャアッ!!!

 突然唸りだしたかと思ったら、纏っている水を雨のように細かくして、四方に高速で飛ばしてきやがった!

 しかも、俺のシールドじゃガードしきることはできねえ! 被弾した左脚は、まるでショットガンで撃たれたかのように無数の穴が空いている……!


「エミール、レクス、大丈夫!?」


「なんとかね……僕は水晶で防げたよ」


 レクスは無事か……。反対側に居たアリスも茨を展開して防ぎきれたみたいだ。彼女は俺が防ぎきれなかったことを見て、一目散に走ってきた……!


「まってて、今助けるから……!」


 だが、竜は待ってはくれなかった……。一瞬だけ正面に目を見やると、既に二回目のあの攻撃の準備を始めていた……!


 ギュルルルッ……!

 こ、この声はヤバい! どの道、俺がシールドを張ったとして、防ぎきれない……! それに、アリスの茨も間に合わない……!


 バッシャアッ!!!

 この水圧の音……あれ? 身構えていた腕には何の感覚もなく、うっすらと目を開けると、アリスが目の前に立ちふさがっていた……!


「ア、アリス……!?」


「うぅ……はぁ……はぁ……よかった……あなたが無事で……」


 な、何やってんだ!? 振り返った彼女の身体には至る所に小さな穴が空き、俺よりもモロに喰らっているのが分かる……。俺の事よりも、自分を茨で守ってくれればまだ良かったってのに!


「お前までそんなダメージ負ってどうすんだよ……!」


「だって……エミールを見殺しになんて……私……できなかったから……」


 このバカ! お人よしの度が過ぎるぞ……膝つきやがって……!

 それに、まだ安心はできない……次に俺が目にしたのは、三度目のあの攻撃の動作だった……!


 ギュルルルッ……!

 こ、こいつ、一体何発同じ技を撃つ気なんだ!?

 ヤバい、今度こそ後が無い! せめてアリスだけでも……!


「まったく、無茶をするじゃないか」


 この声は! 目を開けると、厚い水晶の壁を形成したレクスが居た……!


「君たちが血を流したおかげで、素早くこの水晶壁を作ることができたよ。ほら、傷を見せて。今のうちにその蜂の巣を塞ぐよ」


 何時まで持つかは分からないが、あの厚い壁ならそう簡単には突破できないだろう……回復した後が勝負だな!


 ギュルルルロロロロオオオオォォォッ!!!

 今度は何だ!? 水晶に阻まれてよく見えないが、この音……何か嫌な予感がする……!


 ドッシャアアアアァァァッ!!!!

 こ、これは……ものすごい水圧の音だ……! これは一体……!?

 水晶越しにでも分かるほどの膨大な水圧が近くにある……しかも、微かにビキビキという聞きたくないヒビの入る音が……!


 バリイィンッ!!!!

 絶望的な音と共に、それは無情にも決壊した……。


「そ、そんな……!」


「まさかこんな早く、僕の水晶を破るなんてね……」


 あろうことか、あの分厚い水晶が崩壊し……その瞬間、膨大な水と絶望が俺たちに降りかかった……!

 もう打つ手はないのか……!?


エミールたちの運命は……!?


次回もお楽しみに!

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