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警備局へ

タケルは森の中の道を馬で駆けていた。

エリナ、エルゼが乗る馬の後を追いながら。


話は数刻遡る。


建物を出た後、裏手の馬小屋に向かいながら、タケルはエリナに乗馬の経験を聞かれた。


「あります」とタケルは即答した。


タケルの馬術は結構な腕と言えた。

彼が修めた真刀(しんとう)一乗(いちじょう)流はもともと騎乗で発達した刀剣術を淵源としている。

騎乗ゆえ長い刀である、太刀(たち)が使われたのである。


時代が下がり、馬から降りた戦いが主になると、一乗流も地上の剣術を発達させたが、それでも地上戦で主流である、長さ三尺を超えない打刀(うちがたな)を使わず、長剣の太刀を使い続け、騎乗での修練も大事にしていたのである。


そんな事情で、タケルは幼い頃から、モンゴル出身の祖父の門弟に馬術の手ほどきを受けていたのであった。


馬小屋に繋がれていた白馬は、バイカルと呼ばれ、エレーヌの夫を乗せたこともあるという。


(よわい)をだいぶ重ねているそうだが、まだ人を乗せることが十分できた。


バイカルはタケルの姿を見ると喜び、跨っても嫌がらなかった。

亡き主人の服のおかげだろうか。


飼育係の男性ハーフエルフに見送られ、3人は警備局の建物に向かったのである。


エリナたちが乗る栗毛の馬は、警備局から支給されている戦闘に向いた馬だった。


もしタケルが馬に乗れない場合は、エルゼがその馬の手綱を握ってタケルを後ろに乗せて行き、エリナは森の樹上を移動魔法で飛び石状に渡って向かうつもりだったのである。


エルフの森の中なら、エルフたちは、樹上の移動の方が楽らしい。

もっとも荷物が少なくない場合や森の結界の外へ行く際は、馬がよく使われるのだという。


タケルは、エルゼが乗馬が上手いと聞いて意外に思ったが、交通機関として不可欠ならそれもそうだろう。


日本でも交通を自家用車に依存している地方では、住民の大半が頻繁に自動車を運転して上手くなって行くのに似ているのかもしれない。


両側を挟む鬱蒼とした樹林の密度が薄くなると、まず物見櫓が目に入り、いくつかの建物が並んでいた。

いずれも木造建築である。


掲げられる看板の文字は見たことがない横書きのもので、タケルには全く読めなかった。


「ここよ、着いたわ」


エリナはそう言って、二階建ての大きな建物の裏手に回り、馬をつけて、タケルもそれに倣う。


通用口から執務室に入ると、軍服と思われる服を着た、背が高く肩幅も広い男性のエルフが待っていた。

男性は立ち上がって、


「初めまして。

私が当地の警備局長、名はミハイル・ドゥーブ・インナ・ヴェーチェルだ。よろしく願う」


「一乗タケルです。この地に来て間もない者ですが、よろしくお願いいたします」


とタケルは剣道の試合でのように恭しく頭を下げた。


「早速だが、タケル殿、本題に入りたい。

エリナ大尉から聞いたと思うが、目下この地では憂慮すべきことが起きている。

数多い魔獣が(ヴァロータ)のそばの町に押し寄せている。

人手が足りない。

大尉と共にその討伐隊に加わってほしい。

君の実力と武器は、エリナ大尉とガルフ警備員から聞いている」


「はい、喜んで協力いたします。お二人にはわたくしも助けられました」


タケルは背筋を伸ばして答えた。


コンコン


ドアがノックされ、


「アンナです」


という声がした。


ミハイルが低い声で


「入り給え」


というのを合図に姿を見せたのは、メガネが似合う女性のエルフだった。緑色のロングヘアーを後ろで束ねて、胸部は…豊かだった。


両手には長い刀剣が抱えられている。

他ならぬタケルの太刀である。

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