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エルフの森の動揺

現れたペルシックは、耳はとんがっているが、エリナやエレーヌのように長くはない。


「ペルシックです。よろしくお願いします」


「一乗タケルです。こちらこそよろしくお願いします。美味しい料理をありがとうございました」


「いえ、エルゼ様のお手伝いをしただけですよ」


「私はアイデアと下ごしらえ中心、実際の調理は、ペルがほとんどやってくれたんです」


というエルゼの言葉を聞いて、互いを思いやる二人をタケルは微笑ましく思った。


ペルシックの顔立ちは端正で、人らしさも強く認められるのは、聞いていたようにハーフエルフだからだろう。


身体はやや小柄でスリム、薄桃色のセミロングヘアに三角巾のようなものを被っていた。

見た目の年齢はハーゼラよりも少し上と推察される。

エプロン越しからは胸は薄いように判断された。


前に座るエレーヌは別格としても、隣のエリナも大きいし、エルゼも二人に及ばないとは言え、現代日本の基準で考えると結構大きい方だろう。


獣人のエルゼは人並み、料理を作ってくれたペルシックというハーフエルフは小さめ。


タケルは種族によってサイズが違うのかなぁとも思うし、個人差もあるだろうと考える。


タケルがいた世界でも、人種や個人で、胸部に限らず、体の部位の大きさは相違があって当たり前だった。

小柄な熱帯のピグミー族と北欧スカンディナヴィア半島の住民とではかなり違う。


異世界でもそれは同じようなものだろう。

まして、種すら違う存在がいわゆる人格を持って生きているのだ。

この世界、いろんな種族に出会いうるだろう。

胸の膨らみにあまり意識を囚われないようにしたい。


タケルがそんなことを(おも)っていたとき、エリナが戻って来て、


「今から警備局に行く。大変な事態が起こっているみたい」


エレーヌが表情を曇らせて


「どうしたの?」


「たくさんの魔物たちが(ヴァロータ)近くの町に迫っているって。場合によっては、救援に行くことになりそう」


エリナはタケルに視線を移すと、


「タケル殿、一緒に来てもらえないだろうか。おそらく、魔獣討伐の人手が足りなくなる。

タケル殿は即戦力として期待できる」


「もちろん、いいですよ!」


一諾(いちだく)するタケルは、雄心(おごころ)が急に奮い立った。


期待された以上、やるしかない。


「姉さん、私も行きたい」


とエルゼが願い出る。


「エルゼはここで待ってくれた方がいいわ。

結界の外の町だから、まだ一般エルフの招集はないし」


「でも、私も役に立ちたい。薬や手当で役に立てる。絶対に邪魔にならないようにする」


「魔獣が来てるんだよ。危険よ」


「でも、姉さん、姉さんやタケルさんの役に立ちたいの。誰かに守ってもらうばかりではいやなの!」


エルゼの目はいつになく真剣だった。


魔獣と聞いたら、恐くて震えていた子なのに…。

母も姉も同じことを思った。


「エリナ、警備局へだけでもエルゼを連れて行ってあげたら?

前線はもちろんだめだけど、エルゼでも役に立つことはあるわ」


とエレーヌが助け船を出した。


「分かったわ、エルゼ。じゃあ、すぐに出発の準備をして。

それとハーゼラ、タケルさん用の武装服もお願い。

同じくらいの体格だから、私の予備のものでいいと思う」


少し思案していたエレーヌは、


「お父さんのものを着てもらいましょう。武装服の、正装じゃない方を」


「え?」


これには、エリナも驚いた。

大切にしまっていた亡き父の遺品を使うのか。


「魔獣と戦う可能性があるなら、それがいいでしょう。

サイズは少し大きいけど大丈夫よ。

ハーゼラ、持ってきて、場所は分かるわね?」


「はい、エレーヌ様。承知しております」


タケルはエレーヌが未亡人であることはうすうす気づいていたが、敢えて今まで訊かなかった。


亡き人の武装服を着ることになるのか。

それを思うと気持ちが引き締まる。


ハーゼラが持ってきた武人用の服は、丁寧に保管されていたようで、洗い立てのようにも映った。


上下白の肌触りのいい服とズボン。

戦闘用に動きやすそうだ。

緑の胸当てと肘当て、膝当ても付属している。


隣室に移って身体を通してみる。


確かに少し大きめだが着られなくはない。

ズボンの余っている裾は転移の時にブーツ風の靴を履いていたから、それの中に入れておけばいいだろう。


防具をつけた姿で先ほどの食事の間に再び姿を見せる。

先に防具をつけたエリナ、動きやすい服に着替えたエルゼもエレーヌと共にいた。


「タケル殿、すごく似合うよ!」


とエリナが言えば、


「私もそう思います!」


とエルゼも賛同した。


確かに誰が見てもこの武人の服に身を包むタケルは凛々しく見えた。

剣道着といい、タケルには闘う服装が板についているのだ。

それも理由の一つで、高校の剣道大会では、異性の声援があまた飛んでいたのである。


エレーヌは口を開かず、ただタケルを一心に見つめていた。


そして、落涙。


「あなた…」


けだし、亡き(ひと)のことを思い出しているのだろう。


「大切な服をお貸し下さってありがとうございます。この服に見合った働きをして参ります」


とタケルは告げた。

エレーヌは頷き、


「ご無事で」


とだけ泣き色の混じった声調で伝えた。


タケルは、エリナ、エルゼ姉妹と共に建物を後にした。

再び戦いの予感。

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