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妹のせいで妹にされた兄の話・前編【現代】

「あ~ぁ、あたしも妹が欲しいな~」


 そう常日頃から頬を膨らませながら、妹のまひるは兄である俺――真朝に向けて言っていた。

 そんな妹を呆れたように見つつ、頭をポンポンと叩いてから何時ものように。


「だったら、父さんと母さん。もしくは神さまにお願いするんだな」

「む~~~~! 欲しい欲しい欲しい、妹欲しい~~~~!!」

「はいはい」


 それが俺とまひるの日常だった。

 というか、中学生にもなって子供の創りかたを理解していないなんて言ったらお兄ちゃん泣くぞ?

 そう思っていた時期も俺にはありました……。

 え、何で過去形だって?


「わ~い、いもうと、妹だ! あたしの妹っ。少し前までお兄ちゃんだったけど関係ないよね!」

「かんけーあるだろっ!? なんだよこれっ!!」


 嬉しそうにはしゃぐまひる、そんな彼女に俺は怒鳴りつける。

 けれど出る声は、怒っているよりもキンキンとした声だった。

 だったら何時ものように頭をポンと叩いてバカなこと言ってるなと言おうと思った。


「う……うぅ~~~~……!」

「なになに? 可愛い~~♪ 背伸びしちゃって本当可愛いね~♥」

「な、なでるなぁ!」

「うぇへへへ、怒ってる顔も可愛いよ~~♪ 本当、あのお姉さんに感謝だよ~~!」


 顔を蕩けさせながら、まひるは俺の頭を撫で撫でして嬉しそうにする。

 く、屈辱……屈辱だぁ……!


「やぁ~~ん、怒った顔も超可愛い~~! 一緒に写真とろう写真! ほら、お姉ちゃんと一緒にピースピース!」


 そう言いながらまひるは俺の頬に顔を近づけて、というか押し当てながら自分のスマホをこちらに向けてパシャパシャと撮影ボタンを押す。

 そしてスマホの画面には撮られたばかりのまひると俺の姿が表示される。

 ……される、のだが……。

 そこに映っているのは、男子高校生の俺ではなかった。……ロリコンが見たら一発でハイエースしたくなるほどの可愛さを持った小学生低学年の少女だった。

 というかいったいどうしてこうなったんだ?

 神さま答えてくれ、俺は何か悪いことでもしたのか?


『してないよー。ただたんに運が悪かっただけだからさー♪』


 俺の状況を楽しんでいるとでも言うような声が何処かから聞こえたような気がした……。

 まあ、確実に言えること……それは俺がこの姿にされてからしばらくすると、真朝()の葬式が開かれていたことだけだ。

 まひる曰く、れきしのきょーせーりょくとか言うことらしい。

 そして俺とまひるは両親に喪服に着せ替えられて、駆けつけた親戚や俺の同級生が参列しているのを眺めていた。

 悲痛な面持ちで参列者に頭を下げる両親、一見悲しそうに見えているけれど……俺に抱きついているまひる。

 仲の良かったクラスメイト、同じ部活で汗水流して頑張っていた部員たち、担任や部活の顧問が来るのを見ていると……何となく実感が来たのか涙が溢れてきた。


「ぅ、うえ……ぐすっ、ぐす……」

「真夜、辛いんだな……お兄ちゃん子だったから……」


 自分自身の死が悲しいから泣いているのに、両親は今の俺を俺が亡くなって悲しがっていると感じたらしい。

 というか……この小学生の姿は真夜という名前なのか……。

 そう思っていると、まひるが手を繋いでこちらを見た。


「真夜ちゃん、お姉ちゃんと一緒に向こうの部屋に居ようね~」


 悪びれていない、そんな純粋な笑いを俺に向けながらまひるは歩き始める。

 正直、手を払い除けたい。何で俺をこうしたんだとか追求したい。

 なのに口から出るのは、「うん……」というか細い声だった。


「まひるちゃんは真夜ちゃんと仲良しね」

「うん、あたし真夜ちゃん大好きだから~♥」


 そう言って、まひるおねえちゃんはわたしに抱きついてきた。

 ……え? あれ? ちょっと待って……、おれ、今まひるをおねえちゃんって……?

 まひるは、俺の妹で……おねえちゃんで……あれ、おれ、わたし……。

 目の前が揺れる。まるで知らない何かに頭の中が染め上げられていくようだった。

 おれは、わたしは……まあ、ま……や。ちが、……あ、れ……? わたし、は……ま――


「うおおおおお~~~~、マサーーーー!! なんで、何で死んだんだぁ~~~~~っ!!」

「っっ!!?」


 突然聞こえた声に体がビクリと震えて、揺れていた視界が元に戻った。

 だけど染まった何かは拭えないのか、何か変な感じがした。

 そして声がしたほうを向くと……俺の知ってる暑苦しい馬鹿が、俺がいる……ということになっている棺の前で泣き崩れていた。

 悪友の暁だ。暑苦しくてウザイときもあるけれど、気の良い友人だと俺は思っている。

 そう思っていると、ギリッと俺の手を握るまひるおねえちゃんの手が強くなり……顔を見ると、忌々しそうに……なんていうか、敵を見るようにあきらおにいちゃんを見ていた。

 っ!? ま、ひるおねえ……ちゃん? 違う、こいつは妹……妹なんだ。それにあきらおにいちゃんってなんだよッ!?

 わからない、分からないのに……なんだか普通にスルッと出てしまいそうになる。

 なんで……? おれ、どうしたんだろう?

 キュッと苦しくなる胸を押さえながら、その場で立っていると……あきらおにいちゃんがわたしたちを見つけた。


「まひるちゃん、真夜ちゃんも……大変だったな」

「いえ、おきになさらず。おまいりがすんだのならかえってくれませんか?」

「え、と……う、うん……、ありがとう、あきら……おにいちゃん」


 涙と鼻水で顔を濡らしながら、あきらおにいちゃんは俺の心配をしてくれる。

 見慣れた友人のはず、今までのように気軽に接したい。そう思うのに……上手く言葉が出ない。

 ……もしかすると、怖いって感じてるのかも知れない。

 どうして? 男の人が怖いの?

 わからない、わからない……。


「真夜ちゃん? 顔色、悪いけど大丈夫か?」

「あ……ぅ……そ、の……」

「すみませんが、暁さん。真夜ちゃんの気分が悪いようなので離れてもらえませんか?」

「わ、わかった。……マサがいなくなって大変だと思うけど、気を落さないでくれよ」

「わかっています。それでは」


 あきらおにいちゃんにしおたいおうをして、まひるおねえちゃんは俺をつれて歩き出す。

 そして、まひるおねえちゃんの部屋に辿り着くと……まひるおねえちゃんは俺を抱き締めた。


「まひる、おねえ……ちゃん?」

「真夜ちゃん。あんなのと話しちゃダメだよ~。だって真夜ちゃんは男の人が嫌いで、おねえちゃんのことが大好きな可愛い女の子なんだから~」

「そう……なの……?」


 そうだ。そうだった。

 俺……わたしは、男の人が嫌いで……おねえちゃんのことが大好きな女の子で…………。

 ジワジワと、俺という下地を埋め尽くすように、わたしが満たされていく……だけど、違う――!

 俺は、男だった。まひるの兄の、真朝だった。

 それだけは忘れない、忘れて……溜まるもんか!


『んー、面白そうだからそこの所だけは残しておいたげる。でも、いらなくなったら願ってね。何時でも完璧な女の子にしたげるからさ』

「っ!?」


 誰かの、声がした。

 でもそれは誰のものかは知らない。

 というよりも……ねむくなってきちゃった。


「…………あふ」

「真夜ちゃん眠いの~?」

「はい……、まひるおねえちゃん……わたし、眠ってもいいですか?」

「いいよいいよ~。あたしが一緒に寝てあげるから眠ろうか~」


 嬉しそうにニコニコ笑顔でまひるおねえちゃんはわたしに微笑む。

 その笑顔を見ながら、わたしは夢の中へとおちていく……。


「おやすみなさい、真夜ちゃん。あたしのかわいいかわいい、妹……」

名前:真夜まや

年齢:7

体型:ろりぷに

髪形:黒髪ストレート

備考:

 妹であるまひるがとある女性にお願いした結果、彼女の兄である真朝が女体化した。

 本来であれば、真朝の意識も完全に消され……おねえちゃん大好きな可愛い妹になる所だったけれど、意識の最奥で自分が男だったという自覚は残っている。

 彼女のが恋を知ったとき、それはどうなるのか気になる所である。

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