TS風邪にかかった少年の物語・後編【現代】
後編と書いて、その後と呼びます。
ちょっとガールズラブ入ります。
ピピピ、ピピピ、と優しいアラーム音が耳に届き、ゆっくりと体を起こす。
「ふぁ、ああぁ…………あふ」
軽く背を伸ばすと少しだけ固まっていた筋肉が伸びているからか、パキッと小さな音が聞こえる。
そしてそのまま前に倒していき、体を起こし……膝を曲げてのストレッチを行う。
よしっ、完了。
最近毎朝行っているそれを終えると、僕はベッドから出ると洗面所に向かう。
「あ、おはよう父さん」
「…………おはよう」
廊下で父さんと出会い、声をかけて返事を貰うと少しだけ嬉しい気持ちが湧き上がるのを感じつつ、洗面台で顔を見る。
……うん、いい笑顔♪
ニコニコと笑いながら、僕は最近購入した自分の肌に合うタイプの洗顔料を使って顔を洗う。
それを終えると今度は部屋に戻ってから纏めていた髪を解いて、やわらかめのブラシで寝癖を整えていく。
寝癖が無くなった髪を見てから、最後にリボンを付けて……うん、いい感じ♪
「えへっ♪」
鏡の前で笑うと、鏡の中の僕も嬉しそうに笑う。
その姿に僕は違和感を感じない。だって、この姿はもう僕なんだから。
そう思いながら、パジャマを脱ぐとブラを付ける。
改めて思うけど、体が柔らかくないと背中まで腕が届かないと思うから……女の子ってすごいな。
なんてちょっと馬鹿なことを考えながら何度も着ていたから速度が速くなった女子制服を着る。
最後に昨日の夜に詰め込んだ教科書が入ったカバンを取ると部屋から出て、リビングへと入った。
「おはよう母さん」
「おはよう望。朝御飯出来てるわよ。飲み物はどうする?」
「ありがとー。じゃあ、牛乳でお願いしようかなっ」
元気に挨拶をすると、母さんがちゃんと僕を見て笑う。
それを嬉しく感じながら、焼きたてのトーストと目玉焼きにサラダを食べて、最後にちょっとだけ温められた牛乳を飲む。
サクサクとした食感、トロッとした卵と塩の味わい、シャキッとしたレタスとドレッシングの酸味に笑顔となりながら、温かい牛乳で体が温まって行く。
「はぁー、美味しい♪」
「それは良かったわぁ。でもそろそろ出ないと遅刻するわよ? それに今日も待っているんでしょ?」
「え? あ、そうだった! それじゃあ2人とも、行ってきまーす!」
「いってらっしゃい」
「……気をつけて、な」
父さん母さんの声を聞きながら、カバンを掴んで急いで急いで家から出ると小走りで通学路を移動する。
はっはっ、と口から息が洩れつつも、何時もの待ち合わせ場所へとがんばって走っていく。
がんばって走っているけど、小柄な僕は小動物みたいな感じになっているのか時折可愛いと声をかけてくる女子たちがいる。
そんな女子たちに手を振って挨拶をしていくと、待ち合わせ場所が見えてきた。
そこにはもう彼女が居たから、待たせちゃったかなと思いつつ……声を掛ける。
「夢ちゃーん。おはよーっ」
「望、遅いわよ。おはよう」
「う……、ご、ごめん。明日は気をつけるね?」
「分かったわ。明日は気をつけなさいよ」
「うんっ!」
僕が頷くと「またそう可愛く言っちゃって、もぅ……」と夢ちゃんは少し困った顔をしながら言うと歩き出した。
明日は気をつけないとなぁ。そう思いながら、僕は夢ちゃんの隣を歩いていった。
◆
「夢、おはよー。のぞみんもはよー♪」
「おはよう」
「おはよー!」
教室に入るとコギャルちゃんが声をかけ、僕らも挨拶を返すと他のクラスメイトの女子と数名の男子も声をかけてくれる。
なんと言うか……男だったときには考えられない光景だよね。
そんなことをチラッと思いつつ、女子たちと似合いそうなファッションの話をしたり、何処のカフェがオシャレでインスタ映えしそうだとか話をしているとチャイムが鳴った。
席に座りしばらくすると、担任が入ってきた。
「起立、礼、着席!」
「おはようございます。今日も一日頑張って勉強をしましょうねー」
クラス委員の声を聞いて挨拶を行い、あの空気を読まない担任から入れ替わって半年の新しい担任の挨拶を聞いてから、入れ替わるように一限の教師が教室に入って来て授業は始まった。
カツカツとチョークが黒板を走る音を聞きながら、僕はボーッとこれまでのことを振り返る。
……半年、僕が女の子になって半年かー……。
不良から夢ちゃんが助けてくれてからは、色々とあったなぁ。
初めのころはまだ男だって意識が抜け切れていなかったから、苦労したし……男子からも女子からもまだ変な目で見られていた。
そんな中でも夢ちゃんは普通に接してくれて、女の子らしさはこうだって教えてもくれた。
それから一ヶ月ほど経つとだけどクラスの女子たちは段々と慣れてきたのか、少しずつ話しかけてくれるようになった。
僕の私服はこう言うのが似合うんじゃないのか、髪形はこんなのがあるよとかアドバイスをくれたりもした。
他にも、僕に似合う下着ってこんなのじゃない? って布地が薄い下着のカタログを見せてきたときは顔を真っ赤にしてしまったこともあった。
もしかしてからかわれている? と思ったけれど、夢ちゃんが言うには彼女にとってはこういうことは平常運転だったらしい。
彼女のノリに始めは戸惑いを覚えたけれど、段々と慣れていくと他の子とは違った服のアドバイスも聞けて凄いって思えた。
そしてそんな日々を送っていくと、両親との関係も段々と元通りとは違うけど普通に接することが出来るようになった。
…………で、どうしてそんなことを思い返しているかと言うと、昨日あることがあったから。
「……はぁ、どうしよう」
「何がどうしたの?」
「えっ!? な、何でもないよ。何でも……」
お昼休み、ポツリと呟いた言葉を聞いたのか夢ちゃんが尋ねてきた。
だけど内容が内容だから、誤魔化すことしか出来なかった。
そんな僕の反応があからさま過ぎたからかジーッと夢ちゃんは僕を見ていたけど、諦めてくれたのか。
「そう、分かったわ」
と言って、聞かなかったことにして――――
「放課後、望の家か私の家、どちらかに行きましょ? そこでなら話せるでしょ?」
「あ、うん……」
聞かなかったことにしてくれなかった。
ちょっとガクっとしながらも、逃げられないことを理解し……夢ちゃんの家に行くこととなった。
◆
『お前が男だったっていうのは分かってる。けど、なんだかお前が段々と可愛くなっていくのを見ていると……こう、胸がドキドキして……。だから、もし良かったら……付き合ってくれないか!?
返事はまた今度で良いから!』
昨日、掃除で一緒だった男子と一緒にゴミ捨てに行った帰りに僕は告白をされた。
彼は僕が男だったときに苛められていたのを傍観していたクラスメイトの一人だった。
苛めには加担していないけど、中立を保っていた。ただそれだけの人物。
そんなイメージだったのに、いきなりそう言われて正直僕は戸惑っていた。
「そう……、そんなことがあったの……」
それを包み隠さず夢ちゃんに言うと、しばらく黙っていた彼女はそう言った。
僕は黙って頷き、夢ちゃんの言葉を待つ。
度々来たことがある部屋だけど、なんと言うか気まずい気分。
そう思っていると、僕が座るベッドの端に向き合うように自分の椅子に座っていた夢ちゃんが立っていた。
表情は何処かムスッとした……なんだか機嫌が悪そうな感じだった。
「ゆ、ゆめ……ちゃん? ひゃっ!?」
どんっ、と突然夢ちゃんが僕を押し――対処出来ずにベッドに倒れてしまった。
え? え? い、いったいなに……?!
戸惑う僕を他所に、僕を押した夢ちゃんは僕が動けないように両手首を掴んでベッドに押し付け……膝を股の間に押し当ててきた。
「ゆ……夢ちゃん? い、痛いよ……放し――――んむっ!?」
間近に近付いた夢ちゃんの顔に驚きつつ、放してくれるようにお願いしようとした瞬間――口を塞がれた。
え……? キ、キス? キス、されてる……?!
「ん、ちゅ……んむ――ちゅ……」
「や、ゆ――んっ、ちゃ――んむっ……!」
戸惑う僕を他所に夢ちゃんは啄ばむように息継ぎをしながら、何度も激しくキスをしてくる。
その度に涎が口の中に、周りに垂れていき……押し付けられた膝がスカートと下着越しに股間を刺激していく。
膝を押し付ける度に体を襲う妙な刺激と激しいキス、その度重なる激しいキスによって酸素が足りなくなってきたからか頭の中がボーッとし始め、僕の抵抗は徐々に弱くなっていった。
そして、ある程度キスをし終えると……夢ちゃんの唇が僕の唇から涎を糸のように引きながら離れると、舌で軽く唇を舐め……微笑みながら僕を見た。
夢ちゃんの瞳に映る僕は……、とろんと惚けた表情を浮かべているように見えた……。
「んっ、望の味って……こんな味なのね。美味しい……♪」
「は…………ぁ、ゆ……め、ちゃ…………」
「望、私ね……女の子が好きなの。知ってた?」
「……ぅえ…………?」
ぼんやりとした頭に夢ちゃんが言った言葉が溶け込むけれど……、上手く形に出来ない。
――ゆめちゃん、おんなのこがすきなの……? じゃあ、ぼくは……?
そんな言葉が頭の中に浮かんだのか、それとも口に出たのかは分からない。
そもそも、僕にとっての夢ちゃんは……どういう存在? 助けてくれる人? 友達……?
そんな思いが頭の中を満たしていく、けれどそんな僕の思いとは裏腹に夢ちゃんは何処か意地悪な笑みを浮かべた。
「私は望のこと、好きだよ? だからあんな助けもしなかったし声も数回しかかけたことがない男に取られるぐらいなら先にって思ったの。
望は……私に貰われるの、嫌?」
そう言いながら、夢ちゃんの片方の手は僕の手首から離れ……ゆっくりと指を体に這わせながら、胸へと進んでいく。
服越しにつ……っ、と滑る指に体がピクッと震える。
この感覚は、いったいなんなのだろう? 良く分からない……けど、嫌じゃ……ない。
優しく夢ちゃんの手の平が僕の胸を包み、ドクンドクンという鼓動を伝える。
鼓動が夢ちゃんに伝わるのを感じながら……僕は震える声で、言った。
「いやじゃ……ない、よ……」
「……望、このまま……行っちゃっても良い? 返事がなかったら……するから」
「あ…………。うん……」
一瞬悩んだ。けれど、小さく僕は呟くように頷いた。
その言葉に満足そうに夢ちゃんは笑うと……僕に女を教えた。
こうして僕は、夢ちゃんとひとつになった……。
まあ、こんな感じに終わりました。




