TS風邪にかかった少年の物語・中編【現代】
続きです。
ただし視点はクラスメイトの一人。
この教師、本当にデリカシーが無さ過ぎると思う。
そう思いながら私は朝礼を行う担任を冷めた目で見る。
同時にやっぱり男っていうのはそういうものだ。と思いながら、改めて男を汚らしく思う。
「ねーねー、夢。アレどう思うよ?」
そう思っていると隣の席に座る子が私に声をかけてくる。
少し化粧が濃いコギャルという類の子だ。
「アレって?」
「アレよアレ、あいつらのお財布オモチャくん」
「……ああ」
小さく指を指すほうに目を向けると、その場に居ることが恥かしいのか虐められっ子のあいつ……望が小さく震えながら壇上に立っているのを見る。
小学校から良く同じ学校になっているあいつだったけれど、TS風邪に罹っていなかったとは……。
そう思いながら、あのナヨナヨしすぎていたために不良たちの標的にされていた光景を思い出す。
口が汚く、髪を金とかに染めて、弱い奴に暴力を振るう。そんな醜い男の具現化としか言いようが無い不良たちに囲まれて、怯えながらお金を差し出したり……パンツ一丁にされてクラスの中心に置かれてめそめそしていたあいつ。
担任は気づいていないだろうけれど、不良たちの苛めはクラス内とか校舎の隅とか目に付き難い場所で行っていたから生徒は結構知っている。
一部教師も気づいているだろうけれど、分別の出来る年齢なのだから自分たちでなんとかしろと我関せずと言った様子だった。
「あいつ、また苛められるのかな……」
「ん? なにか言った?」
「別に……」
そう言ってチラリ、と私の席から見える不良の一人を見ると……キモい笑いをニタニタ浮かべていた。
……あいつら、男でも女でも関係ないんだろうな…………。
◆
周囲からチラチラとした視線が向けられて恥かしいのか、何時も以上にあいつは俯いたまま勉強を行っていた。
そして三限の授業が終わり、次の四限の体育の授業までの休み時間という名の着替える時間にそれは起きた。
「さー、早く着替えよー」
「あ~あ、憂鬱ぅ~。体育面倒臭ぃ~」
「そう言わずに青春の汗を流そうよ!」
「はあ、あんたは良いわよね、走るの好きでー……」
そんな様々な声が教室内に響き、私たち女子が教室から更衣室に向けて移動を開始する中――。
「おい、何処行こうって言うんだよ!」
「え、あ……その……けんが、く…………」
クラスの不良がこそこそと移動をしようとしていたあいつの前に立ち塞がっていた。
あいつは不良と話すのが怖いのかカタカタしながら、声を上げる。
「あぁ!? 聞こえねぇな! ほら、ちゃんと声を出して言えよっ!」
「ひぅっ?! だ、だから……見学するために、体育館に……」
「へー? それじゃあ、着替えないとなぁ? 男だったんだから今ここで着替えれるよな? ついでに俺が脱がしてやるよ!」
「え……? やっ、は……離して……ッ!」
ニタニタと笑いながら、不良は怯えるあいつの手首を掴むと動けないように持ち上げた。
180センチ近くの大柄な体格に片手を上げられたあいつは、怯えながらもその場から逃げ出そうと暴れ始める。
けれど、誰も遠巻きに見ているだけで助けようとはしない。
「さーて、それじゃあボタン外してやるとするかねー」
「や、やだ……やだぁ!」
「ふふふんふー……おっ、こいつブラ付けてやがる。それに小さいけど胸がある……マジで女になってるぜ!」
罪悪感なんて微塵にも感じていない不良はあいつのブラウスのボタンを外していき、少し幼いと感じるスポーツブラが周囲に晒された。
そんな光景に男子たちは驚きの声を小さいながらも上げ、女子たちからは信じられないと言う声が聞こえた。
……そこで止めたらまだ良かっただろう。けれど不良は止めるつもりは無いようだった。
次にスカートに触れると器用にもホックを外していく。
するとスカートは途中で引っ掛かる事無く床へと落ちていき、下着が周囲に晒されることとなった。
「ぷっ、女になったからってすぐに女物付けてるのかよ! キメー!!」
「~~~~~~~~~~っっ!!」
「おいお前らも見ろよ! わっらえるなぁ!!」
ゲラゲラと下品に笑いながら不良は、抵抗が出来ないで今にも泣きそうにしているあいつの姿をクラスメイトに見せるようにする。
それをほぼ半数がマジマジと鼻息荒く見つめているのが見えるけれど、最低だと思う。
コギャルとかネタ好きな女子も笑いながらスマホで撮影を行うのが見えた。
「やっ、やぁ……!」
「おい、何隠してやがんだよ! ちゃんと見てもらえよっ!!」
「ぃ、やぁ…………けてぇ……」
必死に空いた手で体を隠そうとするあいつだったけれど、不良の手によって両手を持ち上げられ……吊るされている。
助けて欲しいとか細く言っているのだろう、顔を真っ赤にしながらポロポロと涙を流し始めている。
……それを見ながら、私は…………。
――――イライラした。
あいつは元男だけど、今は女。しかも見た目は物凄く守ってあげたいと思える系の少女。
でもって、私は女のほうが好きで、男は嫌い。特に不良とか最低。
「うわっ、肌きれい……って、夢?」
「っひ……っく……ぅぅ……! …………ぇ?」
「あん? なんだよ、何か用なのk――――ってぇ!?」
バシン、と周囲に音が響き、私の手の平がジンジンと痛む。
当たり前だ。不良の頬を叩いたのだから。
「こっち来て」
「ぇ、ぁ……ぅ、ん……」
ぽかんとした表情の不良の拘束が緩んだためにあいつをこちらに引き寄せる。
すると、自分が叩かれたということを理解してきたのか不良が苛立った表情をこちらに向けてきた。
「テメェ、いったいなにしやがるッ!!」
「何をするって言うのはこっちのほうよ! こいつが女になったっていうのに、アンタなんで男のときのように苛めようとするかなぁ!?」
「はぁ!? 口出しするんじゃねぇよ。今まで見てたくせによぉ!!」
「ええ見てたわよ。苛め馬鹿みたいだって冷めて見てたわよ。けど、アンタが今してるこれは強姦なの! それ分かってやってるの!?」
男が男を苛める。それはイジメに他ならない。だけど今……望は女子となってる。それを無理矢理襲う、つまりは性的暴行――所謂強姦だ。
それなのに何で誰も止めようとしていなかったのかと私は言いたい。
と言うか、私もその一人だったけど……。ようやく私の中で望のやつがナヨナヨした男から女の子と納得したから動いた。
「はあ? 馬鹿だろテメェ! 何が強姦だよ、男が女の格好してるほうが変だろ!!」
「女よっ! 望自身まだ戸惑ってるんだと思うけど、こいつはもう男じゃなくて女なの! それを私たちがサポートして上げないといけないって何でわかんないのっ!?」
「行こ!」そう言って私は不良に向けて怒鳴るだけ怒鳴って、望の手を掴むと歩き出した。
突然歩き出した私に望は戸惑いながらも、空いた片方の手で胸元を隠しながら私と一緒に廊下を歩いていく。
休み時間だからか、私たちが歩くのを周辺のクラスから視線が刺さる。
それは望が女子になったことに対しての視線か、それとも……あ、そういえば……こいつ、半分脱がされてる状態だったわ。
「あ、あの……っ、ありが――「ちょっとこっち来て」――え?」
このまま女子更衣室まで連れて行くなんて無理だろう。
そう考えて私は一度すぐ目の前にあった女子トイレに中に入ると一番奥の個室に望と共に入った。
「え、っと……あ、の……?」
戸惑った表情を浮かべながら、望は私を見る。
無意識にモジモジとしているのだろうけれど、ブカブカとした服装と相まって正直可愛いと思う。
あーもう、なんなのこれ。普通のけばけばしい女子よりも女子っぽいんだけど?!
そんなことを思いながら、私は溜息を吐く。
「はぁ~~~~…………、あんたもさぁ嫌だったら嫌だって拒否しなさいよね」
「あ、その…………うん、ごめん……」
「それと、そんな格好のまま廊下歩かせてごめん」
「え? そんなかっこ――――ひゃっ!?」
気づいていなかったのか……。私が言ったことでようやくこいつは自分のスカートが落ちてしまって無いことを思い出したようだった。
そして恥かしさを持っているのかその場でしゃがんで、プルプルと震えていた。
……そんな望を見ながら、私は一方的だけど言うことにする。
「兎に角、あんたは苛められてた男子じゃないの。これからはもう女子なんだから、自分に自身を持ちなさいよね!」
「い、意味が分からないよ……」
「いいの! 意味がわからなくったって! あんたは苛められないようになることと、女だってちゃんと自覚して行くこと! わかったっ!?」
正直私自身、何言ってるのか分からない状況だと思う。
けどそう言うと望は戸惑いつつも頷く。
それを見て私は満足そうにするのだった。
……それから暫くして、この高校での苛めが問題視されて、数名の生徒が停学となり……職員の入れ替えも行うこととなるのだけれど、今の私は知ることは無かった。
男のときに苛めだったけれど、女になっても同じ行為したらそれって性的暴行行くの多いと思います。
今回の視点は『夢』というクラスメイトの女子。
男のときは苛立ちながらも傍観者決め込んでたけど、女子になったら遂に手が出た。
ご意見ご感想お待ちしております。……来るかなぁ?




