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TS風邪にかかった少年の物語・前編【現代】

奇病がはしかな感じになっている社会です。

――性転換風邪、またの名をTS風邪。


 実際の正式名称はなんだか長ったらしい名前だけれど、現代病のひとつだ。

 その風邪の症状は普通の風邪と同じように発熱・喉の痛み・寒気といった物があるが……最大の特徴は『性転換(TS)』に他ならない。

 男は女に、女は男にとなってしまい、風邪の症状と共に感じる自分が自分で無いと言う微妙な違和感。

 それが何と言うか嫌な感覚を感じる病気の一つであり、風邪が治りきっていないと言うのにこっそりと外に遊びに出て、同年代の子供の初恋を奪って行って、感染を広げるというのも一種の伝統行事とも言えよう。

 けれどその病の発症年齢は遅くて小学3年生、それまでにそれに感染し性転換を経験し、抗体が創られる。


 ……では、小学3年生よりももっと後、例えば高校生のときにTS風邪に罹ったとしたらどうなるだろうか?

 答えは簡単だ。


 風邪が治ったとしても……………………性別は戻らない(・・・・・・・)。ただそれだけだ。



 ◆


 ――ジリリリリリリリリリリ!


 何時ものように目覚まし時計がけたたましい音を立て、眠りきっていた頭を無理矢理起こす……。

 ゆっくりと起きたけれど……まだ少し頭がボーっとするのは、風邪の影響が残ってるからだろうか?

 ……いや、それだけじゃ無いはずだ。

 そう思いながらベッドに座ったまま部屋を見渡すけれど……、頭ひとつほど高さが違うと違うように見える。


「…………はぁ」


 小さく溜息を吐く僕だったけれど、その声は今までと違って聞こえた。

 当たり前か……もともと女みたいな声だったけど、本当に女の子になっちゃったんだから……。


「子供の頃に罹ってたと思ってたんだけどな…………んっ」


 やわらかい、それに……触ったら先端が痺れるような、なんだか妙な感じがして変な声も洩れた。

 ……馬鹿なことしてないで、はやく準備しよ。

 胸から手を放し、ベッドから下りると洗面台へと向かう。

 洗面台の前に立つと入院中に看護師のお姉さんに「女の子は肌が大事なのよ! だから顔もしっかり綺麗に洗うの!」と言うアドバイス通りに泡立てた洗顔料で丁寧に顔を洗う。

 そしてタオルもゴシゴシではなく押し付けて水を吸うように……うん、できた。

 一瞬、今までと同じようにゴシゴシとしそうになったけれど、優しい微笑みだけど般若のような威圧感を感じる看護師のお姉さんを思い出してなんとか抑える。

 ……覚え込みって怖いね。

 次は髪っと……、元々首にかかる位はあったけど、性別が変わって影響で背中辺りまで伸びてサラサラとした黒髪だけれど、纏めたりもせずにそのままで寝ていた結果、少しクシャッとなっている所もある。

 ……これも看護師のお姉さんが見たら、微笑みながら近付く……うぅっ、ブルってきた。

 そんなことを考えながら、僕は買い換えられた新しいやわらかめのブラシを取ると髪を梳き始める。

 ゆっくり、丁寧に……引っ掛かりを覚える場所は手で解して……。


「おんなのこって、大変なんだな……」


 ぽつり、と呟きながら髪を梳き続け……今まで僕が起きていた時刻に近付いているのを時計を見て理解した。

 少しだけピンと跳ねている箇所があるけど、時間が無いし僕の技術じゃ上手く戻らないから仕方ない。

 そう思いながら洗面所から自室に戻ると今度は壁に掛けられた制服を取る。

 ……一瞬、これから着ることになる女子用の制服の隣に掛けられた男子用の制服を見たけれど、すぐに着替えることにした。


 パジャマを脱ぎ、それを散らかさずにハンガーへと掛け……下着一枚となった自分の向き出しとなったのおっぱいへと視線がを行く。

 大きくはない、むしろ小さめのサイズのそれ……見える先端は桜色。って、あまりジロジロ見ちゃ駄目だろっ。


「……まだ慣れないけど、時間が無いし着けよう」


 そう言いながらタンスを開けると、揃え始めたばかりだから数は少ないけれど……数種類の下着が畳まれている。

 その中の一枚、スポーツブラと呼ばれる物を取るとシャツを着るようにして頭からすっぽりと被る。

 穴の両側に腕を通していく度にゴムが伸びて行くのを感じつつ、腕を通し終えると今度は弛んだ裾を軽く下へと伸ばす。


「ぅん、しょ……」


 そうすることでスポーツブラは僕の胸をしっかりと収めた……と思う。説明を聞いて実践させられたときはちょっとテンパッていたから上手く覚えていない。

 相手もわかってたみたいだから、「何度もやったら慣れていくよ」と笑っていったのは覚えている。

 けれど胸の下の脇腹より少し上をやんわりと締め付ける感触がやっぱり慣れない。だけどそれを胸にフィットさせるように調整。

 それが終わると次にブラウスに袖を通し、ボタンを留めていくけれど……ブカブカだ。


 やっぱり、男だったときから縮んでる……。


 改めてそう感じながら、次にスカートを着用する。

 一応病院で女子用の制服を試着してみたら、看護師のお姉さんと……今度は服の調整を行うスタッフの女性が「ふざけないように」と真面目に試着をしている僕に言ってきたのを覚えている。

 何度も言うけれど僕は至極真面目に行っていた。

 やっていたけれど、スカートの中にブラウスを入れる感覚とか慣れないし、上手く出来たと思ってたら後ろのスカートの端を一緒に釣り上げてたために……後ろから見るとパンツ丸見えとなってたりもした。

 だから何度も行ったら慣れないながらも嫌でも穿きかたは理解出来た。


「うん、これで良いよね?」


 ブレザーへと袖を通し、少し不安になりながら呟く。

 部屋の中に等身大の鏡は無い。だからクラスの女子の制服姿を連想させるけれど……違和感が半端無い。

 まあ、母さんが感想を言ってくれると思う……。父さんは…………はあ。

 忘れていたことを思い出し、僕は溜息を知らず知らず吐いてた。

 2人が居ると思うリビングに、行くんだよな……。

 そう思いながら、若干気が重くなるのを感じつつ、カバンを手にして部屋から出ると重い足取りでリビングまで向かう。

 リビングからは併設されたキッチンでパタパタと動く音が聞こえるから、母さんが朝ご飯の準備をしているのだと思う。

 …………トクトクと緊張で胸の鼓動が早くなるのを感じつつ、すぅはぁ息を吐いて……ノブを回した。


「お、おはようっ」

「おはよう(のぞむ)、朝ご飯できてるから早く食べてちょうだいね。あと少ししたら役所の人が来るから」

「う、うん。分かった……。父さんも、お……はよう」

「…………」


 パタパタと忙しなく動く母さんに返事を返し、新聞を読み続ける父さんに声を掛ける。だけど父さんからは返事が無い。

 いや、それどころか女になってしまった息子を見たくないのか新聞から目をはなさない……。

 母さんも、忙しそうにしているけどここ数日一度も顔を合わせて話した覚えは無い……多分だけどまだ整理がついていないのかも知れない。

 そう思いながら、用意された朝食をもそもそと食べる。

 ……けれど、お腹の中も小さくなっているようで、パン2枚はいけたお腹は1枚で満腹になっていた。


「ご馳走様でした……」


 僕がそう言ったと同時にまるで待ち構えていたとでも言うように、インターホンが鳴った。

 まるでそれを待っていたとでも言うように、母さんは素早く玄関へと向かっていく。


 そして、予想通り役所の人がやって来て、僕はその人たちが運転する車で高校まで向かうと……職員室へと向かう。

 事前に事情は通達されていたのだろうけれど……チラチラと向けられる視線はなんだか嫌だった。

 視線のほとんどは教師だろうけど、その視線はいったい何を思っているのだろう……。

 興味本位? 内心で笑っている? 憐れまれてる? うぅ、分からない……。

 そんな様々な感情を抱きつつ、顔を下に向けてジッと待っていると、話が終わったのか役所の人たちの「では後はよろしくお願いします」という声にハッとした。

 見ると役所の人たちは僕を担任に預けて席を外して行った。多分こちらのことはこちらでするようにという意味かも知れない。


「さてと、それじゃあ……クラスに行くか?」

「は、はい……」

「そう緊張するなって、誰も取って喰おうとかしないからさ!」


 緊張気味に僕が口を開くと担任はそう言う。……そう言うけど、僕――苛められてたんだけど?

 そんなことも分かっていないのか? という視線を送るけれど、担任はそれには気づいた様子は無い。

 ……加担はしていないけど気づいてもいない、という苛めが起きている状況で最悪な状態だと僕は思いながら担任の後ろを歩く。


「どうしたどうした? やっぱり緊張しているのか? 大丈夫だ。普通に話せば何とでもなるからさ!」


 楽観的としか言いようが無い担任の言葉に若干お腹が痛くなるのを感じたけれど、とりあえず我慢。

 そうしていると教室の入口へと辿り着き、担任が入口で待つように告げ……ズカズカと中へと入っていく。


『『起立、礼、着席!』』

『おはよう皆! 今日は朝礼の前に大事な話がある。入ってきなさい!』


 いったい何を言われるのか、嫌な予感を抱きながら教室の中へと僕が入っていくと……席のほうから「お?」とか「え、うそっ」と言った声が聞こえた。

 多分、小さくなったとしても分かる人には分かるのかも知れない。


「はい静かに。何名かは気づいているだろうけど、暫く休んでた生徒だ。分かってると思うけど、TS風邪で性転換したんだ。だからといってそれをネタにからかうんじゃないぞ?」

「~~~~~~っ」


 からかうんじゃない。そう至極真面目に担任は言っているけれど、この人のほうがデリカシーという物が無さ過ぎると思う。

 そして、恥かしさと怒りに震える僕をクラスの数割の男子がニヤニヤと見ていたが、それどころではなかった……。

デリカシーがなくても、生徒の虐めに気づかなくても教師が出来る。酷いですよねー。

とりあえず、今回は前後編か前中後編にしようと思います。


あと、性転換した少年の名前は『のぞむ』です。

モチーフは『夢と希望』


・望の外見(男性 → 女性)といった感じに書きます。

・外見イメージ:根暗なモブ(磨けば男の娘)→オドオド妖精

・髪:首にかかるほどの手入れが無い黒髪→背中にかかるほどの黒い長髪

・身長:162cm→152cm

・肌:手入れが悪いザラザラ→潤いタップリぷにぷに

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