おちこぼれ魔法使い(♂)、最凶の魔法使いとなる(♀)【ファンタジー】
この表現はアウトか分かりません。
むかしむかし、ある高名な賢者が一冊の魔道書を遺した。
その魔道書は持ち主へと異常すぎるまでの力を渡し、名も無き魔法使いを宮廷付きの大魔法使いにまで押し上げたと言う。
また一方では助けを求める者の声を聞きいれ、その魔道書を手に持ち英雄となった物もいると言う。
そしてその使用者が天寿を全うすると魔道書は次の持ち主を捜すために姿を消すと言われている。
「……で、それがこれだって言うのか?」
「ええそうよ、これがその魔道書なの」
そう言って彼女はボクの前に古めかしい本を置いた。
正直言って胡散臭い、そう思いながらボクは本をマジマジと見つめる。
胡散臭いと思う……けれど、本自体には魔力が込められているようで何処か得体の知れなさを感じた。
「胡散臭いって思ってると同時に……本物だって理解してるみたいね?」
「っ!?」
クスッと笑う魔道書を持つ悪魔がボクに問いかける。
その声にボクはビクリと震える。……どうやら考えていることは見透かされているらしい。
そう思いながらボクはマジマジと本を見て、恐る恐る手に触れようとする。
――ビリッと指先が痺れた。
「っ!??! い、今ビリッってしたぞっ!?」
「そうね、この子は男が大嫌いだもの」
「はあっ!? だったら、ボクが持っても意味が無いだろっ!? どうしろって言うんだよっ!?」
「怒っているわね。けど、それを求めたのはキミよ。強くなりたい、学院のバカにする奴らを見返したい。そう思いながらワタシを召喚したじゃないの」
そう言って悪魔は自身の足元に敷かれた陣を見る。
陣は複雑に絡み合い、目の前の悪魔を逃がさないようにするために結界を張っていた。
これは長年かけて用意したボクの悪魔召喚の魔方陣だった。
常人には出来ることが無いであろうその魔方陣。けれど、学院では評価されないものだった。
「ぐ、ぅ…………」
悪魔の言葉にボクは苦虫を噛み潰した様に唸り声を上げる。
魔方陣を使って、地脈に繋がることによって色々な現象を作用する。ボクはそんな魔法が得意だった。
けれど学院は自らの魔力を使い、自然現象を起こすことを推奨する場所であった。
いきなり違うことをやらせようとする学院にボクは戸惑いつつも、周りと同じことをしようと努力した。
けれど、ボク自身が使える魔力は少なかったようで、まともな魔法を使うことが出来なかった。
その結果、学院はボクをおちこぼれとみなした。
講師はまともに説明をしないようになり、生徒はおちこぼれであるボクを嘲笑う毎日。
もう嫌だった。
嘲笑われるのも、おちこぼれ扱いされるのも、だから縋った。
奴らを見返すことが出来る力を――。
「どうするの? 目の前に貴方の求める力があるのよ?」
悪魔の声が、ボクを誘惑する声が耳に響く。
その声が耳に届くたびに、ボクの頭の中がぼんやりとしていく……。
「ボクの、求める……力……」
「ええそうよ。貴方はその力を手にして、おちこぼれから英雄へと生まれ変わるの。……身も心も」
「みも、こころも…………」
悪魔は微笑む、愚かなボクを……おちこぼれのボクを見て。
いやだ。いやだ……。ボクは、おちこぼれなんかじゃ……ない、ボクはみとめられたい……。
だれからも、わらわれたくない……。
だから、ボクは……ちからを、手に取った。
「う、うあ――――うああああああああああああああっっ!!?」
手に取った魔道書から痺れが走る。
その痺れは手の先から腕へと伝い、体を走り、全身を駆け巡っていく。
痺れが頭を溶かし、体を変質させる。
――いや、違う……。変わっているんじゃ無い……。
「そうよ。貴方は変わるんじゃないの、戻るだけなのよ」
くすくすと笑いながら、何時の間にか陣から抜け出た悪魔はボクに告げる。
――そうだ。戻る……戻るだけなんだ…………。
今までの体は偽者。そう思うようになる中で、ボクは懇願するように悪魔を見る。
彼女はそれを理解してるのだろう、妖艶に微笑みながら頷き……ボクへと手を伸ばす。
ひんやりとした指先がボクの頬へと触れ、優しく撫でる。
それが終わると指が離れ……、分厚いローブ越しの下腹部へと触れ、這うようにしてゆっくりと上へと進んでいく。
その度に痺れた体は快感を感じ、全身が震え……偽者であるボクから男がビクビクと零れていく。
下着のべっとりとした感触、そんな事もお構い無しにボクの男は零れ落ち、その度に魔道書から本当のボクが注ぎ込まれていく。
それが数度続くとボクの体は本当の姿を取り戻し始めていくのが分かった。
「貴方を包むのにそんな物は必要ないわ」
そう言って、悪魔は野暮ったいローブを脱がせ……床へと落としていく。
分厚いローブは床に溜まった白く汚れた男の残骸を吸っていくのが見えた。
学院の生徒である証、おちこぼれである象徴。
それが失われた体は軽くなるのを感じた瞬間、ボクの体は本当の姿を取り戻していった。
筋肉の無い、ひょろひょろとした胸元が膨らみ……。
切り揃えていた髪が段々と伸びていき……。
栗の花の匂いが漂う下着の中からは男が消えていく……。
その度に、ボクは本当のボクへと変わっていった。
そしてボクは…………。
◆
それから数週間後、学院で日々の努力を披露するための大会が開催された。
参加するのは学院の生徒全員であり、皆それぞれ戦績を残すことが出来るかと言う不安を口々に言い合っていた。
けれどそれでも自分たちは大丈夫だ。あのおちこぼれよりもずっと自分たちは魔法を理解しているし扱うことが出来る。
そう思いながら、彼らはそれぞれの試合を行う。
……そして時間は過ぎ、おちこぼれの試合となった。
試合場にはおちこぼれの対戦相手が立っているが勝ちは揺るぎ無い、それを理解しているのだろう。ニヤニヤと笑い続ける。
けれどおちこぼれは来ない、やはり逃げ出したのか? そんな忍び笑いが会場を包み込む中、審判役の講師はおちこぼれの名前を何度か呼ぶ。
その声には苛立ちが混ざり、対戦相手も苛立ち始めているのが分かった。
「おい! いい加減に出ろ、おちこぼれ!! とっとと出て無様に負けろっ!!」
「落ち着きなさい。そのようなことを言ってはいけません」
講師が苛立ち吠える相手を宥める。けれどその表情には同じ思いを抱いているのが見えた。
そんな彼らを、会場を包むように、声が響いた。
『ふふっ、心配しなくてもボクは逃げも隠れもしないよぉ♪』
「「っっ!!?」」
ぞくり、と背筋が震えるのが感じられた。
声がした方向へと視線が向けられる。
入場ゲートから、声がした。いったいこの声の主は誰なのだ。
そんな正体不明の焦燥に囚われながら視線を向けていると、ゲートから声の主はゆっくりと出てきた。
ヒラヒラと薄布のような、胸元も太ももも大きく曝け出されたドレスのような衣装。
そんな衣装に包まれた見る者を魅了し、釘付けとする蠱惑的な肢体。
日の光を浴びて輝く艶やかで長い髪。
そして、顔は美しいのだが……何処となくある人物を連想させる顔立ちをしていた。
「だ、だれだよ、あの美女は……」
ポツリと零すように誰かが口にする。
すると、それを皮切りに周囲も声を発し始める。
けれどあの美女に誰も見覚えが無い、いや……こんな美女が居たならば自分たちが気づかない訳が無い。
だがここに、この場所に居るということは学院の生徒であるのだ。
けれどいったい誰だ。あの美女は誰なのだ。
その正体を知るべく彼らは皆美女に視線を送る。
見られている。それを理解してるのか、美女はゆっくりと優雅に歩いていく。……試合場へと。
「き、君! 勝手に入ってもらっては困る!! 早く場から出て行きなさい!!」
「え~? せんせぃ、ボクのこと分からないのぉ? ボクだよ、ボ、ク。キミたちがおちこぼれと言ってバカにしていた子だよ」
「は? き、君……馬鹿を言っては困る! 第一彼は男だ! 君はその、じょ、女性だろうっ!?」
激昂する講師と正反対に、美女はくすくすと笑い周囲を魅了する。
けれど、その笑みを浮かべる顔には何処かあのおちこぼれの面影が見えた。
それに幾人かの生徒が気づいたが、声を出せない。
「はんっ、大方自分が無理だから何かして代理でも用意したんだろ! こっちは別に構わねぇから試合を始めろ!!」
そんな中で、対戦相手はそう解釈したようだ。
対戦相手がそう言っている。それ以上はとやかく言えない。そう考えたのか審判役の講師は呻くような声をあげるが、上層部から何かが届いたようで何も言わなくなった。
けれどその顔には文句があると言うことを物語っている。
「…………それでは、試合を始める。互いに距離を取って――始め!」
◆
「どうせおちこぼれが用意したんだ。大した奴じゃないだろっ! そら、沈めっ!!」
「始まったばかりですぐに達するつもりはないわぁ。それよりも、貴方のほうがイかないでちょうだいね?」
審判役の講師が試合場から離れ、開始を告げるとすぐに対戦相手はボクに向けて火球を撃ってきた。
苛立ちが分かる荒々しい魔法。それを手で払うと、反撃として指先から雷を放つ。
あんな偽者のボクだったら、きっと火達磨になっていただろうけど……。本当のボクとなった今はもう怖くない。
「なっ!? を、をぐおっ!? あががががががががががが」
そして、雷は対戦相手に命中し、その場で倒れると人形のようにガクガクと震え始めた。
あはは、おもしろ~い♪
「し、試合終了!! き、君! 早くその魔法を止めなさい!!」
「はぁ~い」
慌てて中に入ってくる講師の指示に従って魔法を解除する。
……これで周りは、ボクの力を理解しただろう。
そう思いながら、ボクはこの学院に入って以来感じる優越感を抱きながら試合場を後にし、次の試合までの時間を待つのだった……。
そして、瞬く間に時間は過ぎていき、ボクは大会に優勝をした。
けれど未だにボクをおちこぼれだったと気づかない者たちが「代理が優勝など認めるものか!」と抗議を行っている。
だったら……力で捻じ伏せてあげる。
抗議を行う者たちを見ながら、ボクは強者の笑みを浮かべながら口を開いた。
「ねえ、認めないなら力で認めさせてよ。出来るでしょ? だってボクは――」
・ボクの女体外見:
服装:エロドレス
体型:エロゲキャラ
髪形:ストレート
性格:ゆがみまくってる
・その後:
学院の大会を皮切りに、魔法使いの名声を獲得していく。
ある時、国目掛けて魔物の群れが襲いかかり人々は恐れ戦いたが、最凶の魔法使いとなった彼女が放った魔法が全てを消し飛ばしていった。
その光景に人々は助けれくれた事への称賛とそれが自分たちに向けられる事への恐怖を抱いた。
そんな彼らの心境を知りつつ、彼女は笑みを浮かべ一人の悪魔を側に置きながら絶対王者と君臨し続けるのだった。




