四章第2話 小さな世界と巨人の影響力
小さな饅頭のような物が土の中に埋まっていた。
「これが潜水艇?」
「うん。 そう。 一人用の潜水艇だよ。 これを海まで運んでくれる?」
「海? あぁ、泉の事ね」
リックは紙よりも薄い金属で作られた潜水艇をひしゃげないようにつまみ上げて、手のひらに乗せた。 これが潜水艇か。 小さ過ぎて中が見えない。
リックは泉に潜水艇をそっと置いた。 水面に潜水艇が浮かぶ。 波でゆらゆらと揺れる。
「僕がこれに乗って案内するからついて来て!」
ニールはリックの股の間をトテトテと走り抜き、潜水艇へと乗り込んだ。 潜水艇から機械音。 小さな水飛沫が上がる。 こんな物が進むのか。 そんな思いとは裏腹に、潜水艇は無事に出発した。
「それじゃあ、ついて来てね!」
この潜水艇は外と会話が出来る設計なのか。 感心するリックを背に、スーッと岸から離れた。
「じゃあ、水の中に入るぞ」
リックはそう言いながら、波を起こさない様に気を付けてゆっくりと水に浸かる。リックの胸くらいの深さまで来た。
顔を水に入れる。 透き通る泉の水。 潜水艇がまるで空に浮かんでいるようだ。 リックは潜水艇を追いかけるように水を掻いた。
その時!
前を進んでいた潜水艇が突然、リックに吸い寄せられるかのごとく、帰ってきたと思いきや、そのまま渦を巻くようにリックの後方へと飛ばされていった。
潜水艇はリックが手で引き起こした激流に耐えられなかったのである。
リックが水面に顔を出すと波にグラグラと揺れる潜水艇。 その入り口にはニールの顔がへたっていた。
「……気持ち悪い……くるくるくるくるコーヒーカップより気持ち悪い……」
「ごめんな…… 俺のポケットに入れるか?」
小さなポケット。 この饅頭が入るのか微妙ではあるが、ニールの命を優先するとこの方法が1番良い。
「分かった」
ニールは潜水艇の中に入って入り口を閉じた。
リックは再び潜水艇を摘まんでポケットに押し込んだ。 少しひしゃげてしまったか? でも、とりあえず大丈夫そうだ。
「じゃあ、泳ぐぞ」
「うん。 このまま真っ直ぐに行って。 壁に着いたら潜って」
「分かった」
もう小人への影響を気にする必要はない。 リックはその巨大な足をバタつかせ、手で水を掻き、静かな泉を騒がした。
「このしたの方に大きな穴があるでしょ? そこに入って」
大きな穴? いや、小さな穴がある。 普通の大きさの人間なら大丈夫だろうが、俺の体は通るのか? 若干腰が当たったものの、無事に穴をすり抜けた。
穴を抜けると上から光が差し込んでいる。 ここが小人の世界か。 ワクワクとしながら水面へと浮上していくリックであった。




