同盟の破綻 4
「何よ……それ……」
「詳しいことは知らなくていいんだ。お前は、要は、俺と男女の関係であることを装ってくれればいい」
長澤は何も言わずにただ俺のことを見ていた。俺も特に反応を示すこともなく長澤を見返している。
「……はぁ。なるほどね。大体アンタのやりたいことはわかったわ」
すると長澤は大きく溜息をついた。
「でも、アンタ。なんでそんなことしたいの?」
「なんで、とは?」
「そんなことして何が楽しいのか、って聞いてんのよ」
何が楽しい、か。
そんなことは分かりきっている。俺が楽しいのだ。
「そりゃあ、俺が、犬井の絶望しきった顔を見たいからさ」
俺の応えに、長澤は完全に呆れたようで、侮蔑の視線を投げつけてきた。
「アンタ……確かに変態だわ」
「だから、言っただろ。最初にそうだと」
すると、なぜか長澤は一人で口元を押さえて肩を揺らしている。どうやら笑っているようだった。
「なんだ。何が可笑しい」
「ああ。いや……ううん。別に。ただ、なんというか……アンタ、面白いなぁ、って思ってね」
「へぇ。そうか」
「うん。わかった。乗りかかった船だし。いいよ。アンタに協力するよ」
長澤のこの返事で、どうにか上手くいきそうになってきたと、俺は思った。
後は細かい所を調整していくだけだ。それで最終的に俺自身が、犬井の絶望した表情を見ることが出来ればいい。
長い道のりだった。ここまで俺自身何かに真剣に打ち込んだということはなかったと思う。
それはそうだ。俺は今まで目立たないことを信条に生きてきた人間なのだ。
しかし、そうなると俺は根本的な部分で、こういった出来事を望んでいた事になる。つまり、これまでの俺の人生はある意味では伏せるための長い期間であったということになるのだろうか。
そのことに関してはどちらでも構わない。とにかく後は犬井に対してこの計画が上手く作用するかどうかなのだ。
特に、長澤が協力するとなると、もはやこれは俺だけの問題ではなくなる。長澤の立ち廻り方も重要になってくるのだ。
と、長澤はなぜか少しためらいがちに俺のことをチラチラと見てくる。
「なんだ?」
「あ……ひ、一つ聞きたいんだけどさ。その……あ、アンタって私のこと……どう思ってんの?」
「どう思っている、って、そりゃあ、俺の予想以上に計画に協力してくれた良き共犯者だと思っているが」
「共犯者って……そ、そいうのじゃなくて……なんていうか……わ、私って、どんな人間かなぁ?」
ひきつったような表情で、長澤は俺に訊ねてきた。




