同盟の破綻 5
俺もなんと答えてよいかわからなかった。
長澤がどういう人間なのかなんてことには、正直興味がなかったからである。
「さぁな。正直、お前とは協力者以上の関係ではないから、お前のことなど良く知らないし、知りたくもない。ただ、弱い者イジメを趣味とする性根の腐ったヤツだということだけは知っているが」
すると、長澤は俺を見て、心底悲しそうな顔をした。
それは、俺が一目ぼれした犬井の、あの嗜虐真を煽る表情と同じくらいに魅力的で、興奮を誘うものだった。
「あ……そ、そう……か……あ、あはは……そ、そう……だよね……」
「違うのか?」
すると、そのまま長澤は俯いて肩を震わせていた。
そして、しばらくすると部屋に小さく誰かがすすりなく声が聞こえてきた。
「長澤?」
「……ひぐっ……えぐっ……」
どうやら、長澤は泣いているようだった。
なぜ、泣く?
俺には理解できなかった。先程までの文脈で、どこに泣く要素があったのか。
まさか性根が腐った、という言葉が悪かったのだろうか。しかし、実際長澤はそういわれても仕方ないことをしたのだ。俺は間違ってはいない。
「長澤。何故泣いているんだ?」
俺は思わず訊ねてしまった。
長澤は目を擦って、顔を上げた。
「何故……ですって? ふっ……簡単よ。アンタがあまりにも正しいからよ」
「まぁ、そうだろうな」
俺がそう言うと、長澤はさらに目から涙をあふれさせる。俺は一体何がなんだかわからなくて、むしろ困ってしまった。
しばらく長澤は泣き続けた。俺はただ時計を見る。長澤のお母さんが帰ってくると問題だ。さっさと無理なら済ませてしまった方がいい。
「おい、長澤。いつまで泣いているんだ」
俺がそういうと長澤はビクンと肩を震わせて俺を見る。目に付けていたマスカラがとれていて、まるで長澤はタヌキのような顔になっていた。




