変わってしまった彼女 3
「おーい、直人」
そんな俺に、今度は軽い調子でかかってくる声。
思わず俺は声のするほうを睨みつけてしまった。
そこには身体をすくませる栄介がいた。
「……栄介か」
「な、何? どうしたの? すごい目つきだったけど……」
「なんでもない。少しイライラしていただけだ」
俺がそういうと、なぜか栄介は「はぁん」とわかったような声を出した。
「直人。女の子には女の子の世界っていうのがあるんだから。別に直人が放っておかれているわけじゃないよ」
「……はぁ? なんのことだ?」
「あはは……まぁまぁ。いやぁ、しかしねぇ、直人がねぇ。僕に冷たかったのもそういう事情があったってことか……いや、てっきりね。僕は直人はそういうのとは無縁だと思ってたんだ。それなのに僕よりも早くねぇ……羨ましいぞ! コノヤロウ!」
なぜか俺を肩肘で小突いてくる栄介。意味がわからないし、ただただひたすらに不快である。
「ま、何か困ったことがあったら僕に言ってよ。なんでも協力するから」
調子良さそうに栄介はそう言った。もちろん、栄介などに協力を頼むことはないと思うが。
教室に先生が入ってきたので栄介は席に戻っていった。
まぁ……考えようようによってはこれは経験しなければいけんばい苦労である。
苦労が多いほど成果があったときに喜びがあるものだ。
おそらく犬井にとって俺と言う存在は相当大きなものとなっている。
今まで目立たないことを信条に生きてきた人間が、一人の少女の中で大きな存在となっているのだ。これだけでも相当面白いことである。
だからこそ、俺はここで我慢しなければならない。
ここで我慢すれば、その分きっと……
そう思うと逆に笑みが浮んできた。
そうだ。焦るな。落ち着いて計画を遂行すればいい。
何も問題はない。むしろうまく行き過ぎているのだから。
自分に言い聞かせながら俺はそう思い込むことにした。
隣を向けば、席に戻っていた犬井はこちらにニッコリと微笑んだ。
俺もわざとらしく口の端を釣り上げてその笑顔に応えたのだった。




