変わってしまった彼女 2
それは、俺が長澤と一芝居演じ、犬井を長澤と藤野のイジメから助けた翌日からのことであった。
犬井はまるでそれまでのオドオドした小動物のようなイメージから一転して、快活で明るい感じの少女になっていたのだ。
これほどまでのイメージチェンジは何か自己暗示めいたものでもしないとできないと俺は思うのだが、犬井はそれを可能にしてきた。
既に俺の隣に座って俺に明るい笑顔を向けている犬井理香子は、心底嗜虐心を煽るようなあのひきつった笑顔を浮かべていた犬井理香子ではない。
俺がそんなことを考えているうちにも、犬井は最近できた友達の一人に声をかけられ立ち上がってそちらに向かっていった。
そして、なにやら楽しそうに喋っている。
……違う。
俺が見たかった犬井理香子の笑顔はこんなものではない……!
むしろ俺にとって今の犬井はイラ付きの原因でしかなかった。
周りに同調し、うまくやっている……
今までの人生でとにかく目立たないことを信条としてきた俺、逢沢直人という人間がもっとも嫌う人種だ。
いや、むしろ、俺のような人間ともっとも遠くにいる存在の人間。今の犬井理香子はそんな存在である。
犬井理香子は今そんな人間になろうとしている。
あんなにもダイヤの原石のようだった彼女は変わってしまったのだ。
何を間違った? 俺の計画は完璧だった。
「……いやいや。落ち着け。落ち着くんだ、俺」
自己暗示のようにそう一人で呟いた。
……いや。正確にいえば、俺の計画はまだ続いているのだ。
失敗というわけではない。ただ想定の範囲外だったのだ。犬井のこのような行動は。
だからこそ俺は焦りイラ付いているのだ。
これでは計画を前倒しする必要があるかもしれない、と。




