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友達の日々 1

「おーい、直人」


 その日も、いつものように俺が自分の席でぼぉっとしているところに、栄介が話しかけてきた。


「なんだ。栄介」


「ああ、いや……特に用事はないんだけどさ」


 いつものように特に用事もなく栄介は話しかけてきたらしい。


 というわけで俺も、いつものように特にやる気もなく適当に応対する。


 そして、栄介はいつものように勝手に一人で喋っている。


 俺が聞いているのもいないのも大して問題ではないらしい。


 ちょっと前ならば、別にこういったことが苦痛でもなかった。


 いや、むしろ、俺自身が栄介のどうでもいい話を聞いているという感覚すらなかった。


 しかし、今は違う。栄介の話は明確に俺にとって「どうでもいい話」に他ならない。


 だから、最近の俺は栄介の話を聞いていると、少し嫌な気分になっているのである。


「直人? 聞いている?」


「いや。聞いてない」


 俺がそう返事すると、眉間に皺を寄せて俺を見た。


 勝手に喋っておいて俺はそれをちゃんと聞いておかなければいけないというのも、なんとも理不尽な話である。


「あのねぇ……ねぇ、最近直人、やっぱり冷たいよ。何かあった?」


「何もない。それに、お前に対する態度も変わらないと思うが?」


 それでも栄介には納得できていないらしい。


 俺自身はそんなことはないと思うのだが、やはりどこかでそういう気持ちは態度に出てしまうのだろうか。


 どこか気まずい雰囲気になったが、俺は気にしない。栄介の機嫌を損ねようが損ねまいが、それは俺にとってどうもいいことだからだ。


 今の俺にとって肝心なこと。それは――


「あ」


 俺はつい声を出してしまった。


 そしてそのまま栄介を置き去りにして、教室の扉のほうに近付いて行く。


「犬井」


 そして、そこにいた小さな女の子に話しかけた。


 犬井は未だになれていないのか、身体をすくませて恐る恐る俺のことを見上げた。


「あ……お、おはよう。逢沢君」


 ぎこちない笑顔で俺にそう言って来た。


「今日は、調子、どうだ?」


「え? あ……う、うん。い、良い……かな?」


「古典の宿題やってきたか? お前、古典苦手だから、俺が見せてやってもいいぞ?」


「あ……ううん。ちゃんとやってきたよ。大丈夫。わざわざありがとう」


 そういってはにかみながら、犬井は自分の席に戻っていった。

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