友達宣言 3
「……ああ。もちろん、俺だって友達になってくれるなら大歓迎だ。そもそも、俺、友達いないしな」
俺がそういうと、犬井は目を丸くして俺を見る。
「え? で、でも、いつも伊丹君と仲良さそうにしているよね?」
遠慮がちにそう聞いてきた犬井の問いに俺は応えなかった。
応える必要がないし、俺の本心を犬井に聞かせる必要もないと思ったのだ。
「そうだな。でも、俺と栄介はそんなに仲がいいわけじゃないんだ」
「え……そ、そうなの?」
意外そうな顔で俺を見る犬井。
「そうだ。だから、俺としては犬井が俺にそう言ってくれて内心かなり嬉しい」
俺がそういうと犬井は頬を紅く染めて瞬時に目を反らした。
実際、嬉しかった。それは無論、犬井が友達になってくれたことではない。
犬井が友達になってくれと俺に頼んできたことが嬉しかった。
それは何より、俺の計画が順調に進んでいることの証拠なのだから。
「そ、そっか……あ、あはは……そ、そうなんだ」
照れくさそうに一人でそう言っている犬井を見ていると、また笑いがこみ上げてくる。
コイツはどこまでも愚かで、人を疑うということをしらないようである。
「じゃあ……逢沢君って、あんまり表情に出ない方なんだね」
「え? ああ、そうだな」
犬井はそういって俺にもう一度微笑む。
違う。確かにその笑顔は可愛らしいものだった。
パッと見確かにトイレの駄犬さんとか座敷童子を彷彿とさせるオカッパ頭だが、犬井は全体的に見て可愛らしい女の子だ。
だから、たぶんこんな風に微笑みかけてくれるということは、男子にとっては相当嬉しいはずなのである。
だが、俺にとっては何かが違った。
俺が見たいのはこんな穏やかな犬井の笑顔ではない。もっと悲しみに歪み、絶望しきってひきつった表情の犬井が見たいのだ。
笑顔よりも悲しんでいる顔や苦しそうな顔の方がいいというのは……やはり自分でもいうのもなんだか、相当な変態のようである。
しかし、俺はそんな自分自身をこの上なく嫌っていると同時に、この上なく好きになってきているであった。




