友達宣言 2
「言わないのか。じゃあ、やっぱり欲しくないのか」
もじもじとしたままの犬井に、俺は冷たくそう言い放つ。
「そ、そうじゃないよ……」
犬井は慌てて取り繕った。
「じゃあ、とりあえず言ってみたらどうだ? 友達になってくれるかもしれない相手に」
我ながら意地悪だと思っていた。犬井もおそらくそう思っていただろう。
しかし、これは必要なことだった。犬井にとっても、俺自身にとっても。
犬井はそれからもしばらく躊躇っているようだったが、それから何かを決心したような顔つきになり、俺の方に顔を向けて来た。
「あ……え、えっと……あ、逢沢君……」
「ん。なんだ?」
「その……わ、私と……お、お友達になってくれません……か?」
犬井はそのまま勢い良く深くお辞儀した。
やはり、思わず拭き出そうになってしまった。
こうまで思った通りの行動をしてくれると、俺としても俄然満足感が出てくると言うものである。
犬井は必死な様子でプルプルと震えている。
この様子だけで、犬井がこんなことをしたのは始めてなのだということはわかった。
もしかすると、犬井にはこれまで本当にずっと友達と言える存在がいなかったのかもしれない。
といっても、俺だって友達とはっきり言える存在はいない。
栄介は友達……なんだろうか。こんなことを言うと栄介にまた怒られそうだが。
俺は犬井の方に顔を向ける。緊張した面持ちで俺のことを見ている。
やはりコイツの天性の素質というヤツなのだろうか。とにかく犬井は嗜虐心を煽る表情をする。
もっとこの顔を歪ませてやりたいと、俺は犬井の顔を見ているだけでそう思ってしまった。
「あ、逢沢君?」
「え? あ、ああ。すまん。えっと、ああ。そうか。別にいいぞ」
「え……い、いいの?」
「ああ、別に構わない……ただ」
「ただ……何?」
「すまん。よく聞こえなかったんだ。もう一度、大きな声で言ってくれないか?」
「え? な、何を?」
「だから、その友達……なんて言ったんだ? 俺の聞き間違いだと困るからな。もう一度はっきり元気な声で言ってくれ」
犬井は顔を赤くしながら、制服のスカートの裾をぎゅっと握っていた。
そして、うっすらと目の端に涙を貯めながら俺を見た。
「わ、私と……友達になってください!」
その宣言は、俺の心にしみわたり、俺は絶頂さえ迎えるほどの快感を覚えたのだった。




