友達宣言 1
犬井は、俺の少し後ろを離れて付いてきていた。
俺達は何も会話しないままに昇降口まで降り、校門を出る。
そして、さらにしばらく歩いた辺りで、そろそろ頃合いだろうと俺は思った。
「犬井」
不意に犬井に呼び掛ける。予想外のことに犬井は必要以上に反応を示した。
「な、何?」
「ああ、いや。別に、ただ呼んだだけだが」
「え……あ、ああ。そうなんだ……」
伏し目がちに犬井は俺を見て、苦笑いをする。
なんで笑っているのかわからなかったが、俺はいきなりその場で立ち止まった。
「え……ど、どうしたの?」
覗き込むようにして犬井を見つめる。恥ずかしそうに犬井は顔を反らした。
「お前、友達いないよな?」
「え……?」
「いや。確かに長澤にイジメられてたっていうのはあるんだけどさ。それでも転校してきてからお前がクラスメイトの誰かと喋っているの見たことないんだけど」
俺の言葉に犬井は居心地悪そうにしていた。
言われたくないことをそのまま言われたといわんばかりに難しそうな顔をしている。
「どうなんだ? いないよな?」
「あ……うん。いない」
悲しそうに犬井はそう言った。
俺は一人で勝手に頷いて見る。
「そうだよな。なんでだ?」
「え? な、なんで?」
俺の質問の意味がわからなかったのか、犬井は俺に訊ね返してきた。
「そうだよ。どうしていないんだ? ああ。いや、正確に言えば、どうして友達を作ろうとしない?」
「え……だ、だって……わ、私……ひ、人と話すの苦手だし……」
「だから、友達がいないってわけか?」
犬井は無言のままに頷いた。
「そうか。お前、友達は欲しくないのか?」
「そ、それは……ほ、欲しいよ」
「そうか。じゃあ、そういえばいいじゃないか。友達が欲しい、って。友達になってほしい相手に友達になってくれ、って」
「え……で、でも……」
犬井は戸惑っているようだった。いきなりそんなことを言われた所で、どういうことなのかわからないというのは無理もない。
しかし、俺はあくまで犬井を追い詰める。




