勝ち得たモノ 2
そして、校舎裏にたどり着く。
やはり、都合よく校舎裏には誰もいなかった。
「よし。大丈夫そうだな」
俺が満足げにそう言うと、犬井は目にうっすらと涙を貯めながら俺を見ていた。
「どうした? さぁ、早く済まそう」
「え……あ、逢沢君……ほ、本気なの?」
本気、という言葉で俺は思わず犬井を見てしまった。
「なんだ? 俺が冗談であんなことを言ったと、お前は思っていたのか?」
「え……だ、だって……」
「でも、お前。前に俺が聞いた時、下着は持ってきたって言ってたじゃないか」
「あ、あれは……そ、その……」
「なんだ。嘘だったのか?」
俺がそういうと犬井は怯えた瞳で俺を見る。
そんなことはない、と言いたげな瞳である。
「そ、そういうわけじゃ……た、ただ……」
「なるほど。お前は、あの時とりあえず話を合わせた。そして、持ってきてもいない癖に下着を持ってきた、と言ったわけだ。つまり、お前はそもそも俺が長澤にイジメをやめさせるなんて無理だって思っていたってわけか?」
犬井はなにも言い返せないようだった。
別にそれに対して俺は怒りを感じることもない。
犬井からしてみればそんなのは当たり前で、二、三日前にあったクラスメイトがそんな突拍子もないことを成し遂げられることができるはずがないと思っていたのも不思議ではない。
しかし、犬井にとって不幸だったのは、俺がそれを成し遂げてしまったことだ。
無論、正攻法ではなく、そこにはからくりがあるのだからあまり自慢げにできたものではないが。
「おまけにお前は、あの時俺に罵声を浴びせたよな?」
「あ、あれは……ご、ごめん」
「いや、別に謝る必要はない。だから、俺が要求しているのは単純に純粋に、お前の下着なんだ。下着さえもらえれば俺はもう何も言わない」
犬井は困り果てていた。もしかすると、長澤や藤野にイジメられている時よりもある意味で今の方が困難な状況なのかもしれない。
そんな状況に追いやっているのが、彼女をイジメから救ったとも言える俺本人であるというのもなんとも面白い展開である。
「……あ、明日、持ってくるよ」
ひきつった笑顔で、犬井はそう言った。
しかし、俺は憮然とした表情で犬井を見返す。
「ダメだ。今ここで渡せ」
俺は無慈悲にそう言い放った。




